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That Party People  作者: 八樹聡
2/3

to the Party

終わるはずだった、その場所。

その場所は、もう1年だけ続いていた。

その場所が、終わる。

その当日までの、私小説。

その場所は、去年で終わり。

そのはずだった。

けれども、終わりにはならなかった。

そこで終わらせてしまったら、その場所にいた皆がどこへ行ったらいいか迷ってしまうから。

終わりの覚悟はしていたが、続ける覚悟は持っていなかった。

終わりならそれまで、常にその覚悟で挑んでいたから、あまり気にはしていなかった。

却ってその心持ちだったからこそ、気にはならなかった。

もっと正確に言えば、大層酔っていたから覚えていなかった。

大切な瞬間を聞き逃してしまった。

ただ、続くという言葉だけは、あれほど酔っていた身体に、思い切り入ってきた。

だからだろうか、悲しさは無かった。

それと同時に、嬉しさもまた、無かった。


その場所が続く。

それならば最後の最後まで、見届けよう。

必然的な考えへと至ってからは、心が決まった。

名前の付いたその場所にだけは、どんな状況であっても出る。

そこに躊躇は無かった。


1月。

年の初めのご挨拶を交わす。

その様はとても今年で終わるとは思えない、変わらないもの。

それがその場所であり、その場所らしさとも言える。

各々に思うところはあるのだろう。

けれどもそれを決して表には出さない。

出したところで何にもならないことを、直感しているからなのだろう。

それよりもこの場を楽しむことに、全力になること。

それが、この場所で得た自分なりの楽しみ方のひとつ。

そして、今年いっぱいで終わることを改めて告げられた。

けれども、悲しさや悔しさはなかった。


加速していた状況にとって、頻度の低下はありがたいものだった。

その代わりに、別の場所へと足を向けるだけの余裕が生まれた。

それまではその場所しか知らない、他の箱は怖くて行けない。

軟弱だったかもしれないが、しかし、事実ではあった。

それが大きな場所や、知らない場所でも足を運ぶことが出来るようになった。


それはちょうど、補助輪が外れたような感覚だろうか。

あるいは、背中で支えてくれる存在が、すっと消えてくれたからなのだろうか。


間に出向く場所へ、ひとりで向かう。

入る直前には、臆病なあの時の自分が時折顔を出す。

けれども、それまでの足取りやその中での振る舞いは変わった後のまま。

楽しむことを楽しむ。

それが続いている。


期間が空くようになって、1回がより花火のようになっていった。

場所を豪華なものにする。

普段体験できないようなことを盛り込む。

それらに飛び込むのに、もはや勇気は必要がなかった。

楽しい、楽しそう。

基準はたったそれだけ、行動そのものは勝手に身体が動いてくれる。


観客の参加企画であれだけ憧れていたステージに上がることになった。

そこには乗ることが無いと思っていたのに、機会や形式はどうでもよかった。

その高さを乗り越えた時、なにかが弾けた感触があった。

夏には、その場所は泡まみれになった。

よもや最初に飛び込んだあの場所が、泡で埋め尽くされていた。

全てが目の前で起こっている現実。

その直中に、自分が居るという不可思議な感覚。

終わった後には、自然と仲間と集まって小さなアフターパーティをするようにもなっていった。


そして再びのハロウィン。

今までに無い場所、今までにない規模。

それは大きく、凄い場所へと拡大を続ける。

桁違いと言われるのかもしれない。

けれども、自分には当たり前のようにも感じていた。

そこに行けば、知らない顔が多かった。

それもそうだろう。

あの場所から、もう随分と時間が経っている。

それに、場所、規模もそれだけ多くの人が集まっているのだから。

それでも、いや、それ以上に知った顔が多い。

知らない顔だったとしても、結局は誰かの知り合いだったり、知り合いになる予定の人だったり。

そうして過ごしていく時間、そして過ぎていく時間。


その場所で、あの日の自分に似た姿を見掛けると、ついお節介で声を掛けてしまうようになった。

あの日の自分に欲しかった人、それを勝手に感じ取ってしまうからなのかもしれない。

それが無駄になることもあれば、無駄にならないこともある。

大切にしているのは、ひとつだけ。

その場所を、全力で楽しむこと。


気がつけば、随分と多くの点と線が紡がれて来たのかもしれない。

そうして出来上がったのは、一見すれば色違いの撚り糸。

それは不格好で、美しくは見えないかもしれない。

けれども、その糸は何よりも強く、そして、他の何かを手繰り寄せてくれる。

あの時の自分が紡ぎ始めた細い線は、ここまで伸び、そして拡がっていった。

あの時の自分に、帰らなかった自分に、想像が出来ただろうか。

帰らない選択肢と、拗らせた負けん気が、よもやここまでになろうとは、本人も予期していなかった。


それだけの変化をくれた場所。

捻くれて、拗らせた自分を引っ張り続けてくれた場所。

人生を変えるだけの、大きな場所。


その場所が、今日、最後の日を迎える。

悲しさは不思議と感じない。

それよりも、どんなことが起こるのか。

楽しみの方が強いかもしれない。

だから、最後の最後の、その瞬間までを、楽しむことにする。


その場所が終わった後。

その後に何が待っているのか。

その先にあるのは扉なのか、あるいは別の何かだろうか。

恐怖だらけだったあの日の扉の向こう側には無い、わくわくとした世界が、そこにはあると、信じたい。

全てを終えた後。

その後には、何があるのか。

それは、今日の夜に、わかるのだろう。

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