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異世界最強の駆除を依頼された件。  作者: タカナリ
第1章
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第3話「少女・偽善・試み」

顔を上げ、様々な種族が入り混じった者たちは各々家に向かう。皆全員痩せこけ、身体中土まみれで汚れていた。 その集団の移動をしばらく見ていると、ひとりの少女が話しかけて来た。頭にツノの生えた茶髪の女の子だった。


「お兄さん、どうしたの?迷子?」

「あ?…あぁ、いや、大丈夫だよ。ありがとね。」

「ううん、お母さん言ってた、助け合っていかなきゃ、みんな死んじゃう。って。」

「そうだな。…ところで、お兄さんこの世界に来て間もないんだ。」

「え?転移して来たの?」


俺は驚いた。おそらく、何言ってるの?とあしらわれることを想定した上で、ダメ元ですらない発言だったのに対し、彼女は転移して来たのかと答えたからだ。こんな少女が知っているってことは、広く知られた話なのだろうか?


「お嬢ちゃんは転移について知ってるの?」

「有名だよ、主人(あるじ)様も転移して来たんだし。…あっ!!」

途端、少女は大きく震えだした。そして、周囲にいた、移動中の者たちも、少女の転移という言葉に反応し、俺を見るなり震え始めた。


「ご、ごめんなさい!!ごめんなさいごめんなさい!!」

少女はそういい、先ほどみんながしていたように、いや、それ以上に強く、床に頭を打ち付け土下座をした。それに習うよう周りの人たちも土下座をし始める。

なるほど。転移者=イケメンゲス野郎という認識が強いからこそ、俺を同種の人間と思ったのだろう。なんであいつのイメージのせいで俺が嫌われなきゃならんのだ。殺す。


「安心してよ、俺は別にあいつみたいに君たちに害を与える存在じゃないんだ。」

そう言うと、戸惑いつつも顔を上げる者たち。まぁ、そんなん信じろって方が無理な話だろうが…。とにかく、目の前に怯えながら土下座する女の子を起こし、おでこの治療をした。かすり傷程度であったが、水の魔法で傷口についた血と汚れを流し、治癒魔法で治す。なんだ、マジで簡単にできた。イメージだけでできた。


「む、無詠唱…!?」

ざわつきが広がる。どうやら魔法を無詠唱で放てることがすごいらしい。まぁ、すごいんだろう。だって普通詠唱あるでしょ。俺自身驚いているんだから、きっとすごいんだろう。はい、この話終わろうか。

「君たちの世界について教えてほしい、現状と、過去について。」


その少女についていき、少女の母親と父親にあった。そしてその二人から主人様と呼ばれるあいつからされたこと、されていることを全て教えてもらった。


昔は多種族が種族ごとに集まり、生活をしていた、比較的平和な世界だった。

だが、弱肉強食の世界、種族間の戦争もあったらしく、それを止めるべくあいつが呼ばれたらしい。まぁ、見事に止めたらしいが、その後自分の力に溺れ、酔いしたり、頼りきり、廃れていったらしい。簡単に予想がつく。


今は自らを平和の神と称し、崇め奉らせている。くだらないアホの考えることだ。偽の平和をもたらし、偽善を見せびらかせ、偽の忠義をもらうアホ。同情の余地もないのは明白だろう。


「なるほどな、そりゃ大変だ。それほどまでに、あいつは強大な存在なのか?」

「はい、おそらく私どもがいくら束になっても一瞬で殺されるでしょう。」

「魔法が得意なんだよな?」

「そ、そうです。よくご存知ですね…。主人様は魔法の才能に優れており、呼ばれた原因である戦争も、両種族の戦闘員たちを魔法で殲滅してしまったのです。」

「それは、解決とは呼べないなぁ…。」


そんな会話を終え、俺は少女の父親の持つ畑についていった。ここの集落に集められているものたちは、作物の栽培が得意らしい。だから、毎日朝に供物を献上させられている。


畑は実に見事の一言だった。あまり詳しくないからわからないものの、広大な土地一面に広がる畑はとても一人で世話できる様な物ではない。魔法を用いた栽培だからこそできるのだろう。


土の栄養も魔法によって操作できるらしく、奥深い香りがする。反面は土のまま、もう反面は作物が育ってあった。成長速度もなにもかも、魔法でどうにかできるらしい。なんて便利なんだ。


「こうやって、反面ずつ育てているんです。わたしにはそれが精一杯でして。」

「いや、作物を1日で食べれる状態にすることがそもそも俺のいた世界では異常なんだ。そう自虐的になる必要はないさ。」

「はは、ありがとうございます。あなた様は、あのお方とは違うのですね。」

「当たり前さ。次あんなやつと同じような扱いしたら家ごと燃やしちまうぞ?カカッ」

「冗談に聞こえないのがなんとも言えませんよ。」

ははは、と親父さんは笑う。俺の持てる魔力で多少手伝った後、また部屋に戻ることになった。


「手伝っていただいて、本当に助かりました。こんなにも作業が早く終わるなんて、初めてですよ。」

親父さんが家に帰った時、母親と少女が驚いていたからそうなのだろう。

居間で少し茶を飲みつつ、俺はその家を出ようと考えた。あまり長居してもここの人たちに悪いし、何より俺にとっても収穫がない。情報を得るため、この街とは別のところを目指そうと考えていた。


「ところで親父さん、俺は次の街を目指したいんだが、近くに街はあるか?」

「街ですか…?申し訳ありません、私どもにそのような情報が与えられておりませんので、わからないです。なにせ突然この街に連れられてきたので、ここがどこなのかすらわからないのです。」

「そうか…。むやみに外に出るのも嫌だしなぁ…。今日は野宿でもしようか。」

「そんな!ぜひ私の家をお使いください、毎日泊めるのは食料的に難しいですが、恩を返さなければ我らディア族の名が廃れます!」


そんなこんなあって泊めてもらうことにした。まぁ、半ば意図的にこの家に泊まらせてもらったわけだが。すまない。まだ日はあるので外に出て、自分はなにができ、なにができないのかを試すことにした。


カチルの案内で、魔法を使える場所へと赴くことになった。


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