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異世界最強の駆除を依頼された件。  作者: タカナリ
第1章
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第2話「転移・異能・惨状」

「まぁ、そう説明してもわからんじゃろ、兎に角儂の異世界へ来てはくれんか。拒否権はある。御主が嫌ならば断ればよろし。他を当たるからの。」

「ふぅん…。それって、主人公をボコせるんだよな?」

「あぁ。むしろそれを依頼しておるからのぅ。」

「誰彼構わず、異世界最強をうたってるやつならボコしていいのか?」

「否、そういうわけでもない。実際いいことをしてくれている最強もいるものだ。だがその数は少ない。力に溺れ、舞い上がり、国の衰退化に力を働かす阿呆が多いのでな。それも殆どが、前世が人間であったり、人間の転移じゃ。困ったものじゃ。」


たしかに、異世界に転移するのは人間が多い。きっと知恵が高く技術的な部分も適応力に関しても他の動物とはかけ離れているからだろう。集団を操る点においては、アリですら人間には敵わない。


「人間の後始末は、人間がやらねぇとな…。カカッ!乗ったぜ神さまよ、別に日本にいる理由もないしな。さ、行こうか。準備はもうできてるぜ。」

朝食を食べればもう問題はない。準備万端だ。

「じゃ、早速行こうかの。ほれ。」

そう言っておっさんが俺に手をかざすと、目の前が真っ白になった。貧血のときみたいだ。


目を覚ますと、大量の書籍と水晶がある部屋にいた。辺りは真っ暗で、部屋と外界の境界がわからないが、地面に描かれている円状のものが発光しているため、視界は良好であった。


「ここがおっさんの部屋か?」

「そうじゃな、儂の世界の儂の管理部屋じゃ。異世界の連なりひとつにつき管理部屋があるのじゃよ。気にすることはない、知っておいて何の得にもならんからの。」

「そうか、じゃぁきかねぇ。」

「御主にはこれから異世界最強を倒してもらうわけじゃが、仮にも相手は異世界最強じゃ。生半可な力じゃ勝てはせん。じゃから、儂にできるなら君にあらゆる才能を付与したいのじゃが、そんなこと一端の管理人である儂にできるわけもない。ひとつだけじゃ。何を望む?」


剣、魔法、体術、望めばどんな分野でも最強になれる、か。

よく深い人間はここで多くの時間を費やすのだろうが、俺にとっては愚問としか言いようがない。

「ここの世界最強の人間が得意とする才能をくれよ。」

「ほぅ。面白いことをいうのぉ。」


俺を誰だと思っているんだよ?ラノベに出会ってずっと最強を憎んで来たんだぞ?その最強が最強と自負する最強を同じ土俵で完膚なきまでに叩きのめす。これが最も正しく、酷く、悲惨な倒し方だろう。

「じゃが、御主は今日からその才能をえるんじゃ。そいつはずっと使用して来た技術なんじゃぞ?勝てる見込みがあるのか?」

「あるに決まってんだろおっさん。要は使い方なんだよ。使い方。」

「ククッ、まぁいいわい。御主に依頼するのは儂が管理する複数の世界にいる阿呆を倒すこと、最初に行ってもらう世界の人間が得意とする才能は魔法。じゃから魔法の能力を付与するが、後悔はないの?」


「愚問だぜ。」


刹那、体内に異常な何かが芽生えるのを感じた。勢いは止まらず、体内で大木が急速に育っているようだった。

「カカッ!何だこれ、おもしれぇ!」

「今の一瞬で魔力と魔法適性が跳ね上がったからの。なんとなく脳に浮かぶじゃろ、魔法のイメージ。」

たしかに、脳内にあらゆるイメージが強く浮かぶ。火、水、土、風、闇、光、それだけじゃなく、重力、雷、振動、治癒など、王道系の魔法からマイナーなものまで全ての魔法のイメージが浮かんだ。


「こんな力得ちまったら、力に溺れるのも無理はねぇ感じもするけどな。」

こんな能力があれば、本当に最強になれるだろう。何をし、何をしようと自分に打ち勝つ存在がいないのは、どんな気分なんだろうか。何を思うのだろうか。


「じゃ、早速じゃが御主をまた転移させる。能力を得たからって、いきなり戦わせるわけにもいかまい。時間はたっぷりやるから、頼んだぞ。」

「おう、じゃ、異世界最強とやらを倒してくるわ。」

そうして目の前はもう一度、真っ白に染まるのであった。


目を開けると、そこには広大な街があった。

だが、同時に、そこに音はなかった。

いっそ廃墟と表現した方がイメージは近いのかもしれないが、家が倒壊していると行った様子は見られないし、なんならついさっきまで生活していたかのように思える。

「気味が悪い。まさかとは思うが、この原因も俺の標的がもたらしたもんなのか?」


しばらく歩くと、初めて音が聞こえた。炎が猛る音だった。ゴウッ。そんな感じの音。

そして俺は、その前に広がる惨状に息を飲んだ。

おそらくはこの街に住む全種族全員が、猛る炎を取り囲むように地べたに座り、肩を震わせながら手を合わせていたのだ。まるで、これからくる何かに怯えるように。


しばらくすると、その炎からうっすらと人影が出て来た。俺は怪しまれないよう、一応周りを見習って土下座をし合掌をした。


「やぁやぁ皆の衆。おっと顔を上げるなよ、そのみっともないつらを見せられる側になってみなよ、酷く悪寒がするんだから。もういっそのことそのまま地面にめり込ませちゃえば?ハハハハハッ!!」

それに合わせるように複数の女性の笑い声がした。しばらくするとその人影に女性が加わる。おそらくは側近だろう。全員が美人で羨ましく思えた。なるほどこいつか、むしろこいつしかいないだろう。

口調からするにこちら側が見えているのだろうか?


「あぁん?なんか見慣れないやつがいねぇか…?まぁいい。とにかくとっとと献上しろ、お前らにできることはこの俺に高品質の作物を作り、献上する事のみだからな。昨日よか多くできたんだろなぁ?」

ほほう、バカがよくやる異常なまでの供物を献上させるパターンか。そしてこいつ、毎日やらせてるのか?絶対アホだ。


そこからしばらく一方的に罵声を浴びせさせられ、炎とともに去って行った。去る一瞬のうちに頭を上げ、相手の顔を見ることができた。金髪で体格は特に優れた点はない。杖のようなものを持っており、八重歯が特徴的だった。翠色の瞳を持つその様は、俺から見てもイケメンだった。もう死ねばいい。


不細工なら同情の余地もあっただろうに、イケメンとくれば、こっちも然るべき方法をとる。絶対に負けられない、ボコしてやる。もう原型がなくなるくらいボコボコにしてやる。私情の入り混じった野望をイケメンゲスクズ野郎に向けるのであった。


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