表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編
99/307

アーシュ10歳3の月ナッシュ荷物持ちとして

今日2話目です。

「スライムダンジョンは初めてだからな、スライムが多い時もあるし、とにかく自分の身は自分で守れよ。あと4日したら一緒に行けるのにな」

「セロ、気を付けるよ」

「マルもムリしない」

「オレは久しぶりに魔法全開で行くか!」

「ウィル、がんばって!」

「がんばれー」


セロとウィルが、早くから出ていった。私たちは、魔法師待ちだ。来た!


「君、ガガの子、荷物持ちなの?」

え?昨日の人だ。

「はい、今日は初めてスライムダンジョンに入るので、知り合いの魔法師さんと行くことに」

「僕たちと行くよ」

え?

「ちょっと待て、その子はオレ達が」

「この子たちの勉強のためでしょ。僕らのほうが強い。役に立つ」

「そ、それは……」

「行くよ」

魔法師さん!どうしよう……え?ムリ?一緒にいけ?相手は6人パーティだ。荷物持ちは必要ないはずだ。けど……


「マル?」

「うん!」


「「行きます!」」


「よし。雑魚は見ない。最短でかけ降りる。魔石は拾えるものだけ拾え。ついて来い!」


そこからは付いていくのに必死だった。メリルのスライムとは違う、大きな、様々な色のスライムが、現れた途端に魔法で倒され、消えて行く。しかし私たちもだてに訓練をしていない。後ろについていきながら、効率よく魔石を拾うやり方を工夫した。また、次第に戦いを見る余裕も出てきた。6人のうち、魔法師は3人。剣士3人は不意打ちのための護衛か。魔法は多彩だった。究極を言えば、スライムなど強い炎があれば大抵は倒せる。しかし魔法の相性があり、その無駄のない判断と魔法の効率的な使用、そして魔法師のローテーションは、長時間の戦いを覚悟するもののやり方だ。これがダンジョンの深層を潜るものか。


午前中駆け抜けて、あっという間に10階まで来ていた。


「さて、休憩しようか」


ここからがお茶入れ荷物持ちの仕事だが……


「あの、お昼ですが」

「よくついてきたよね、お昼食べなよ」

「はい、あの、魔法師さんとの契約では、お昼に有料ですが、お茶を出すことになっていたんです。ジュストさんとは取り決めないまま来たので……」

「お茶は入れてくれたら嬉しいけど、疲れてないの?」

「疲れてますけど、戦ってないし、普通ですよ」

「じゃあさ、何入れられる?」

「うーん、庶民のお茶、甘いお茶、ガガ、スープですね」

「待って、ガガ?スープ?お休み1時間くらいだよ?」

「できますよ」

「じゃあ、スープとガガを全員分」

「はい。マル?」

お湯を持ってきているので、すぐに入れられる。だいたいスープは特製のアレだ。まずスープを出し、その後にガガを入れる。合間にお昼もかじる。


「うまい。なんだこれ」

「なんだ、普段飲んでるスープよりうまい」

「西ギルドの朝飯に似てるな」


「ガガにはお砂糖とコミルはいりますかー」

「いる!」

「いらない」

「砂糖だけ」

「はいはい」


「もう少し休みますか」

「そうだね、あのさ、君たち」

「じゃあ、あれ、隅っこのスライムやってきていいですか」

「え?」

「だめでしょうか」

「いいけど、あれスライムじゃなくて」

「マル」

「うん!こっちの大きいの1匹やる」

「じゃあ、私はこっち。大きいな、よし、炎、2、行け!」

シュン!

「炎1でもよかったかな、次、炎、強め、1、行け!」

ジュ!

「炎2のほうが魔力の消耗が少ないな、次、水、圧縮、2、行け!」

パンパン

「よし、隅っこ終わり。マルは?」

「大きいから手こずったけど、行けた」

「2人で5個だね。魔石大きいな」

「ホントだ!」


「「……ラージスライムなんだけど……」」


「あ、休憩終わりですか」

「あ、ああ、今日は15階まで行ったら、最速で戻る。頑張れよ」

「「はい!」」


本当に最速だった。途中からは色が違うだけでなく、酸を吐くものや毒のあるものなども出てきて、さすがに解説付きで教えてくれた。そんなもの、水魔法があれば平気で拾えますとも。


「そうなの……」


おいてくなんて、もったいない。15階には大きいスライムがいるのだという。危ないから近寄れなかったが、その魔石だけで今日の稼ぎは十分なのだそうだ。すごいね!


そこから帰りは一直線だった。疲れたけれど、変な人ジュストさんは、ちゃんとした冒険者だったし、強い冒険者の戦い方を見ることができて、有意義だったなあ。


「アーシュ君!無事か!ジュスト、お前何してくれてんの!大事なメリルからの預かりものに!」

「いや、普通に荷物持ちとして連れてっただけだけど、いや、普通じゃなかったけどね」

「ギルド長、どうしたんですか?ジュストさん、魔石出してきていいですか、多いから受付で出したいんです」

「ずいぶん拾ってくれたんだね、一緒に行こうか」


「えーと」

ザラザラッと。まだ出る。ザラッと。これアレだ、毒のやつと酸の奴もだ。

「この5つは、私たちのでお願いします」

「……ラージスライム5個……25000ギルです」

「え?いつも1個100くらいですよ?」

「あー、この子たち、うっかりラージスライム倒しちゃったンだよね、間違えただけだから、認めてやってくれない?」

「ええ、ジュストさんがそういうのであれば」


「毒、酸?ラージスライムたくさんに、メイジスライム……100万ギルです」

「はあ?全部拾ってきたの?」

「荷物持ちですから」

「ふっ、ははは!君、ホントに面白いね。やっぱり僕と王都においでよ。クランに入ろうぜ」

「え、いやです」

「なんでさ、クラン『 王都の翼』強いよー。冒険者の憧れだぜ?」

「もうパーティは組んでますから」

「解散しなよ」

「ジュスト!」


「ちぇ、じゃあ、明日からのアタックについて来て」

「荷物持ちは泊りがけはだめ」

「じゃあ、せめてスープ分けてくれない?」

「お湯はわかせますか?」

「コンロ持っていくよ」

「じゃあ、これ、えと、はい」

「こんなに?味が6種類?はあ、何この子たち」


「メリルの子羊たち」


ジュストさんがハッとした。

「東西ギルドの」

「お前さんたちが中央で大きな顔してる間に、冒険者たちの胃と心をつかんだ勇者たちだよ。子羊亭の創設者でもある」

「なんでメイドと荷物持ちやってんの」

「メイドはしてませんよ、ギルド長はお友だちです」

「甘味のな」

「いいな、オレも友だちになって?」

「あー、うーん、スープ、追加注文があったらメリルにどうぞ!」

「振られた!」


ジュストさんは、


「クランは君たちともギルドとも対立してるわけじゃないよ。ただ大きいから中で完結してて、外とはなかなか交流がないだけ。中央でご飯やるなら、協力するし、王都に来たら顔出しなよ。スープも気になるし」


といって次の日ダンジョンに潜っていった。嵐のような人だったな。ナッシュのお試しも、もうすぐ終わる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ