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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

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アーシュ10歳8の月

今日2話目です。

夏の講習は、午前3時間、午後2時間の1日5時間、週5日間だ。残りの2日は自習となる。テスト勉強のためだという。1時間目が国語と文学、2時間目が数学、3時間目が歴史、地理、4時間目が帝国語、経済、五時間目が体育と魔法学になる。3週やって、4週目の最後にテストがある。


「初めまして、になるかな、シルバーです」

「ああ、西領の」

「ニルムから」

「港町だね」

「帝国への航路があるから」


こちらも自己紹介した。マリア、ソフィー、セロ、ウィル、アーシュ、マルだ。


「みんな友達なんだろ、うらやましいな」

「寮には入っていないのか?」

「西領の領主様のお屋敷にお世話になってる」

「今からでも入れないか?」

「いいなあ、聞いてみるか」


「さて、授業を始めるぞー」

「「はーい」」


もちろん、シルバー君は優秀だったが、メリル組はすごかった。教科書は当然理解していて、さらに聞きたいことをたくさん用意していた。メリルでは、大人は子どもと話すことをためらわない。普段はお互いが先生だ。先生だから遠慮するなどという発想はなかったのだ。一ヶ月しかない期間を、有効に使わないでどうする?国語だけでなく、ほかの教科も、最初の1週間で1年の範囲が終わってしまった。


「どうするかのう」

「先生方がかまわなければ、このまま2年生の範囲もやりたいです」


ということで、2年生の範囲が始まった。学院では、2年から選択授業が増え、例えば騎士を目指すなら体育を、文官を目指すなら経済をなど、好きな授業を増やすことができる。しかし、学外生なので、とりあえず標準の授業を受けることになった。


また、マルたちが来たのを知った先輩たちが、放課後のクラブに集まってくれたので、思いがけずセロたちも、クラブ活動に参加することになった。12歳といえど、現役の冒険者を相手にできる。夏休みを楽しんでいた王都の生徒たちは、こぞってクラブ活動に参加した。ザッシュたちは、お遊びではやりたくないと、クラブには参加していなかった。シルバー君は、商人を目指すというが、剣を持つのは楽しいらしく、喜んで参加していた。当然、家庭クラブも、帝国語クラブも黙ってはいない。ダンにも頼んで、お茶を提供をしたり、応援したり、これはこれで夏休みを謳歌していた。なぜか顧問としておじいちゃん先生もいる。


土日ともなれば、自習などするわけもなく、セロとウィルはダンジョンに、アーシュたちはダンの手伝いに行く。シルバー君は、ダンの店のことを聞いて、ぜひ見に行きたいとのことで、アーシュたちと一緒だ。


店では、メニューの最終チェックや、店員の教育が始まっている。メニューは、お茶とパウンドケーキ、あるいはガガとパウンドケーキの組み合わせでなんと1000ギル。ただし、テーブルと椅子にしっかり座って休める。パウンドケーキは、持ち帰り販売もする。


「ガガの焙煎が、少し浅いような気がする。もう少し苦くていいんじゃないかな」

「気が付かないうちに、浅くなっていたようです、やり直します!」

「それから店員の態度なんだけど、私たちが小さいからか、扱いが大人より適当になってると思う。お客はみな同じなので、学生にも、冒険者にも、子どもにも、同じ態度になるようにしないと」


そう言うと、あからさまにばかにしたような態度の店員が何人かいた。


「納得してない人がいるようですね」

というと、

「親に金を出してもらっている坊ちゃん嬢ちゃんに偉そうなことをいわれても」

と言い返して来た。


「ダン、この店のことどう説明しているの?」

「オーナーについては何も。実質は若夫婦に任せるつもりだから」

「じゃあ、ダンの店だって知らないの?」

「知ってると思ってたけどな」


「あなたはどう聞いて来たのですか?」

「オリーブオイルのグリッター商会が、息子に新しい店を出させると。だから、息子が店を仕切っていると言う事ですよね」


「ダン」

「アーシュ、そうだね。君、誤解しているようだから言うけど、この店はグリッター商会がやっているのではなく、私が仲間と共にやっている店だ。ちなみに隣りのこの子も出資している店のオーナーの1人です。実質、店長夫婦に任せるつもりではいるけど、店のアイデアやコンセプトは私たちが考えたものです」

「そんな」

「若いから不安だと言うのなら辞めて構わないよ。ただし、ギルドでのお茶の販売を成功させているのも私たちです。そして、残って仕事をしたいというのなら、人によって態度を変えるのは直してもらいたい。お客さんには、次も来たいと思わせてこそだから」

「……」

「店長、後は任せるよ」

「わかりました、オーナー」

「あ、言っておくけど、出資したお金は、全部自分たちで稼いだお金だから」

「!」


次の週には、やめている人も残っている人もいた。そして明らかに態度はよくなっていた。9の月のオープンに向けて、8の月最後の週、貴族、大手商人向け、一般向け、学生向けに、それぞれプレオープンすることになった。まず5の日に貴族、商人向けに昼から3時間、次の6の日に学生向けに夕方から3時間、7の日に1日中営業する。


その前の、1の日から4の日までがテストということになる。


夏も、終わりに近づいている。

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