表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

86/307

ウィルという人

学院の途中ですが、ウィルの話が入ります。

オレはウィル。メリルの子羊の1人。いつもセロと組んで、今は冒険者をしている。妹のマルと、あとから来たアーシュも一緒に暮らしてる。毎日が楽しいんだ。


オレと妹は、裕福な家庭で生まれたと思う。オレもマルと同じで、小さい頃から何でも覚えていた。そして何にも興味がなかった。言われたことは、やる。しゃべれと言われればしゃべるし、着替えろと言われれば着替える。おとうさまと同じ髪と目の色、そして何でもすぐに覚える賢さは、小さい頃はたいそうもてはやされた。同時に、めったに表情を変えない気味悪さから「氷の人形」と呼ばれていたのも知っている。オレは年上だった分、それでもマルは面倒を見なくてはと思っていた。


だから、笑うことを覚えた。人に優しくすれば、大事にされる。大事にされれば、妹も大事にしてもらえる。やがておかあさまが死んだ。笑うことは覚えても、泣くことは覚えていなかったオレたちを、おとうさま以外は気味が悪いとうわさした。だけど、悲しいってなんだ?毎日は過ぎていくだけで、誰かがいなくなったところで何が違う。


おとうさまは、おかあさまがいないと寂しかろうと言って、新しいおかあさまを作ってくれた。優しいおかあさまだった。マルをかわいがってくれるから、オレも優しくした。


でも、おとうさまは仕事で本国に戻ってから、帰ってこなくなった。毎年連絡は来る。来年は戻るから、待っていてくれと。2年までは、おかあさまは耐えられた。でも、3年めに壊れたんだ。


おとうさまを愛していたから、血のつながらないオレたちも大事にしてくれた。おとうさまを愛していたから、オレたちの姿に耐えられなかった。そのうち屋敷の別棟に閉じ込められ、次第に食べ物も滞りがちになったある夜、誘拐された。身代金を要求することになっていたから、誘拐されたと言っていいのだろう。馬車で2週間。少なくとも、屋敷にいた時よりはきちんとご飯をもらえた。


「いくら憎いからってな、さらわせるなんてな」

「少なくとも、殺せとは言われなかっただけ、ましなんじゃねえか」

「今頃は悲劇のご婦人ってとこか」

「海を越えた先の人となんて、付き合うもんじゃねえよ」


そういうことか。茶番、というのだったか。


「悪く思うなよ、なるべく遠くに置いてくるように言われてるんでな」

「メリルは孤児に優しい街だ、何とか生きのびな」


そうしてメリルにやってきたんだ。高級な服を着ているオレたちが訳ありでないはずがない。けど、事情を聞かれても話さなかった。戻ったとして、何の意味がある。孤児の仲間に入れられたが、マルは相変わらずだった。オレだけががんばっても、子どもの中ではうまくいかなかった。いじめられた訳ではない。何の反応も返さない子どもをかわいがる理由もないというだけだ。


マルは1番小さいセロにだけは少し反応を見せた。セロはおおらかで、反応があろうがなかろうがあまり気にしない。いつも何かを胸に抱えてて、遠くを見ているようなやつだった。何かが足りず、なにかに焦がれるようなその姿に、オレは初めて、人というものに興味を持った。過ぎていく毎日は、もしかして何か意味があるのか?そのうちセロとマルと、3人で暮らすようになった。日々はやはり何もなく過ぎていく。


そんな時に、アーシュが来たんだ。


セロの目が変わった。アーシュの黒髪と琥珀の目は、遠くの匂いがした。なあセロ、そいつが待っていたものなのか?


マルも変わった。いつの間にか、ご飯がおいしくなり、明日が来るのが楽しみになった。次は何がある?


そうして見つけたんだ。

剣を。魔法を。力を。思いきり体を動かす先に、何がある。強く、強く、強く。


強くなった先に、何があるかわからない。それはオレたち4人の道を分かつかもしれない。それでもオレはもう、とまらない。でも、今は共に。肩を並べて、前へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ