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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

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85/307

アーシュ10歳7の月学院へ

今日2話目です。

そうして、荷物持ちに戻り、7の月の3週目までがんばった。朝の訓練、荷物持ち、夕ご飯の手伝いの後は、学院の勉強。何しろ、8の月には授業だけでなくテストもあるのだ。マリアとソフィーは荷物持ちこそなかったが、その分子羊館と宿屋でがんばっていた。


そして3の週の終わり、あっという間に王都へ行く日がきた。


「学院で4週間。その後ダンの店を見てくるから、もう少しのびるかもしれません。今回は領主様の屋敷じゃなくて、学院の寮に泊まります」

「ダンがなあ、あいつ何目指してんだ」

「ダンの店だけど、資金を出したのは私たちだから、みんなの店でもあるんです」

「そうか、今度のギルド長会議で寄ってみるかな。今度は仕事じゃないからな、アーシュ、みんなも、楽しんでこいよ!」

「ギルド長、勉強に行くんです!」


真夏の草原は緑が濃い。あおあおと茂る草むらに、夏の風が過ぎていく。何の憂いもない道中は、時折の夕立のほか、さえぎるものもない。


4週目の終わり、無事に王都に着いた。


東門に並ぶ。


「まさかあいつ」


「アーシュ!少しは元気が出たか!」


「リカルド来やがった」

「もう諦めろよセロ、親戚のおっさんだと思え」


「リカルドさん!ディーエは?」

「ふっ、そうそういつも一緒ではないよ」

「ええっ?」

「元気そうだな。お迎えが来ているぞ」


「セロ!ウィル、アーシュ、マル」

「マリア、ソフィー、ニコ、ブラン」


迎えに来てくれてた!


「学院か、休みの日にでも西ギルドに顔を出してやってくれ。順調なようだぞ」

「東はどうですか」

「順調だ。暑いから時々冷たいお茶を飲みに行くよ」


「隊長、そろそろ寮に連れてっていいですか」

「すまないな、ザッシュ君。またな、アーシュ」

「はい!」


「夜は面倒見られるけど、オレたち夏休みはダンジョン潜ってるから、授業は自分たちでがんばれよ。ニコ、ブラン、よろしくな!まあ、学院はマリアたちがいるから平気だとは思うが」

「ニコとブランはオレの屋敷だ。オレも店の準備があるからな。もうほとんど仕上がったんだぜ」

「後で見に行くね、ダン。ザッシュ、ありがと」


寮は男女別だが食堂は一緒だ。二人部屋なので、マリアとソフィー、私とマルになる。セロたちに食事のとり方を教え、みんなでご飯を食べた。


「何だあのキラキラした集団」

「あ、リボンちゃんがいる!あ、夏休み、学外生か!」

「うお、マリアさんだ」

「ソフィーちゃん、またお茶会したい」

「マル君、また勝負だ!」


遠くでなんかうわさされてるような。


「見て、あの銀髪に氷のような瞳。ステキ」

「それより、あの見事な金の髪に緑の瞳よ。マルちゃんにそっくりじゃないの」


なんかイラッとした。


あれ、セロもイラッとしてる?


ウィルとマルは?にやにやしてる。二人そろって?あっちを向いて?ニコッて?


「キャー」

誰か倒れた。


「「兄妹パワー」」


何やってんだか。


「オレたちも」

ん?同じ方を向いて?何で肩組むの?はい、にっこり!


「そんな……」

「くっ」

「俺は負けない!」


シーンとした。


「さ、行こうぜ、アーシュ、マル、マリア、ソフィー」


「あいつ威嚇してたぜ」

「大人気ねえな」

「子どもだからな」


そんな感じで、学院は始まった。

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