アーシュ10歳5の月4週目
今日3話目です。
4週目が始まった。
東ギルドについては、20代のユリアさん、ステラさんに指導をメインでお願いする。まず最初の3日間は、西ギルドに研修に来てもらい、4日目から、東で稼働開始だ。西はマヤさんに見てもらう。東ギルドでは、西ギルドばかり飯が充実していて不公平だと突き上げられ、早めの開始となった経緯がある。なるべく早くと言われている。
午前中は忙しく過ごして、いよいよ午後から学院だ。一学年200人ほどいるので、6クラスほどに分かれる。1年目はランダムに分けられる。アーシュは帝国語と文学、マリアとソフィーは経済と数学が午後に多いクラスに、それぞれ分かれた。週2日あるクラブは、アーシュは帝国語、マルは剣、マリアとソフィーは家庭にすることにした。マルがアーシュと分かれるのは珍しいが、やはり剣が好きなのであった。
寮の1室に集合して、制服に着替える。
「アーシュのサイズあるかしら……」
「あるって!マリアこそ、胸部がきついんじゃないの」
「まあ!そんなに太ってないわ」
「マル、女子用を選んで」
「スカート長い。勉強はズボンでいい」
「だめよ、決まりなの。ソフィー、スカート短くしない!」
「この方がオシャレじゃない?」
「勉強しに来たのよ」
各クラスの先生が迎えにくる。こちらを見て、一瞬止まった。
「あ、君たちが学外生の」
「はい、マリアです」
「ソフィーです」
「あー、ではこちらの小さい人たちが」
「マルです」
「……アーシュです」
小さいけれども!
「午後の授業から入る。クラブのある日は、クラブ生が教室まで迎えに来るから。体育のある日は、控えの部屋から体育着を持ってくるように」
「「「「はい」」」」
「じゃあ、アーシュ、マル、また放課後にね」
「またね!」
ガラッ。教室が静まり返る。さすがに学外生はめずらしいようだ。好奇心いっぱいの目と、
「小さい……」
「赤いリボン……」
「みどりの目」
などというささやきが。あ、クリス君だ!知り合いがいた!なんかフッて笑ってる。
「これから1ヶ月間、午後だけ授業に参加する、学外生のアーシュ君とマル君だ。勉強は自宅でやっているので大丈夫だと思うが、わからないことも多いと思うので助けてやってくれ」
「せんせー、なんで午前中は来ないの?」
「午前中はギルドで仕事だそうだ」
「仕事?」
「ギルド?」
「詳しくは本人から聞けー。自己紹介な」
「アーシュです。10歳です。好きなことはお菓子作り。よろしくお願いします」
ぱちぱち。あー緊張した。
「マル。10歳。好きなことは剣の稽古。よろしくお願いします」
おー。剣だって。すげー。ぱちぱち。マルは緊張しないタイプだ。
「席は真ん中な。では最初は帝国語からだ」
「もういいかの」
「副校長、お願いします」
「うむ、では教科書2章から……」
わあ、ずいぶん最初のほうだ。でも先生の発音、ちゃんと聞こう。
「ではこれから少しの間、対話で練習じゃ」
隣の男の子と向き合う。
「お、おう、よろしくな。じゃあここから」
『これは机ですか』
『はい、これは机です』
「これの繰り返しな」
「うん」
語学の基礎は、徹底した基礎の繰り返しだ。机、いす、ペン、カバン、発音に気をつけながら、どんどん言いかえていく。言うごとに、口がなめらかになっていく。相手も同じだ。なんだか楽しくなりながら、繰り返していると、教室が静かになっていた。
「アーシュ君、楽しいかね」
「はい!」
「ケビン君?」
「楽しいです!それになんか、話しやすくなってきた!」
「ケビン君もきれいな発音になっておるよ。いやいややっているのと、楽しくやっているのでは、上達が段違いなんじゃ。さ、みんなも楽しんでもう少し」
「「「はい!」」」
あっという間に授業は終わった。
「アーシュ、ここの発音なんだけど」
「マル、ケビン君に教えてもらおう」
「あ、ここはな……」
休み時間はすぐ過ぎた。次は経済!学校ってこんなに楽しかった?




