表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/307

王都での1日

ギリギリ間にあいました。今日は1話です。

7の日。それぞれに別れて、出かけていった。帰りは6時ダンの屋敷集合。夕ご飯を食べながら、話を聞きたいそうだ。


「さ、アーシュ、いくよ」

「うん」


伸ばされた手を握り、二人で歩く。よく考えたら、いつも4人で、2人だけのことはほとんどなかった。歩きながら、ふとセロを見上げる。セロが下を見おろす。


「「ふふっ」」


今日はどこに行こうか。


泊まらせてもらっている領主の屋敷は、王都の中央王城よりにある。そこから北は、貴族や商人の裕福な街。南に下がると、中央広場があって、庶民街、中央ギルドのそばに貧民街と続く。東と西には、庶民街が広がっている。


「まずは中央広場に行って、それから屋台やお店を見ようか」

「そうしよう!」


中央広場には噴水があって、広場はどこでも休めるようになっている。周りには露店や屋台がポツポツとある。まずは、屋台を端からチェックだ!


「串焼き、パン、串焼き、肉巻き、肉の小麦巻き、干し果物、串焼き」

「肉ばかり」

「味付けが違うみたいだぜ、オレ、肉巻きが食べたいな」

「うん、私は小麦巻き、半分こしよう」

「オレが買ってくるから、待ってて」

おお!


「肉巻きおいしい!」

「薄切り肉がくるくるしてるな」

「小麦巻きは、これはジャムをはさんで巻けば……もっと薄く焼いて」

「仕事熱心だな?」

「こっ、これは違うの。単にこう、仕事柄というか」

「仕事だな?」

「もう!」

「ははは」

「ちょっとおじさんに話を聞いてくる!」


「おじさん、これ甘いもの巻かないの?」

「甘いもの?巻いたこたあねえなあ。こう、がっつりいくもんだからな」

「おいしそうなのに」

「でも、あまり女の人は屋台では買わんからなあ」

「あ、ほんとだ。少ないね。どこに行ってるんだろ」

「外ではつままねえな。食事処に行くんじゃねえか」


「食事処って、じゃあ、ご飯食べるほどじゃない時はどうしてるのかな」

「さあなあ」

「ありがと!おじさん」

「おう、また来いよ」


次はそのまま、お店を見ながら南に移動する。

「わあ、キレイな服屋さん」

キレイなドレスが飾られている。

「いつか似合うようになるかな」

「今でも似合うと思うよ。何か買ってあげようか」

ドレスは無理だけど、端っこのリボンなら……

「ん、いいの、それより先に行ってみよう?」

節約思考が……食べものなら買えるのに……


貧民街は大きくなかったけど、確かにそこにあって、気力のない人があちこちに立ったり座ったりしていた。セロと下を向いて足早に通り過ぎ、中央ギルドに出た。


「ここが中央ギルドか、大きいね」

「西の2倍?メリルの3倍以上はあるね……」


7の日でも、結構人がいる。それに合わせて、周りには屋台の他に、食事処もある。屋台は串焼き、串焼き、パン、肉巻き、串焼き……あ!


「セロ、あれ!」

「あ、珍しい、揚げ物だ」

「「行ってみよう!」」

「おばさーん、それなあに?」

「小麦を練って、油で揚げたのさ、最近西に油の工場ができたんだよ」

「2つください!」

「あいよ」


紙に包んでくれる。まんまるで硬い、いや、

「中が空っぽだ!」

「サクサクしてておいしい!」

「子どもの食べ物のようだろ、でも案外冒険者も買うのさね」

「おばさん、これ、お砂糖かけないの?」

「かけたらおいしいだろうね、でも高くてとても屋台じゃ売れないよ」

「お店なら?」

「お店で座れるんなら多少高くてもいいかね」

「おばさん、飲み物売ってない?」

「嬢ちゃん、水出せないのかい?」

「出せるけど」

「だからあんまり買う人はいないんだよ、でもあっちでココのジュースは売ってるよ」

「「ありがとう!ごちそうさま!」」


ココはココナッツだ。おいしいけど、ぬるい。


「お昼は?」

「食べすぎで入んない」

「じゃ、おばさんの言ってた、東ギルドのそばのお菓子屋さんに行ってみようか」

「うん!」


そこから王都の壁沿いに、東ギルドまで回ると、おやつの時間だ。


「あ、あれじゃない?」

「ここは騒ぐとリカルドが来るぞ!」

「はは!わあ、クッキーだ!あれプディング?」

「ひとつずつ買ってみれば?」

「そうしようか」


その後串焼きを買って、城壁に登らせてもらった。リカルドはお休みだそうだ。王都を二人で眺めながら、おやつを食べる。おいしいけど、硬い。プディングみたいなのは、プリンじゃなくて、小麦の甘いちまきのようなものだ。


「何人住んでるんだろうね」

「たくさんだろうね」

遠くに西門が見える。

「あの西門の先に、ニルムがあって、その先に帝国があるんだな」

「行きたい?」

「行きたい。海から首都まで、広い草原が広がってるんだ。ダンジョンは山のそばにしかないんだって。少ないっていっても、メリルと同じくらい数はあるんだよ。冒険者として、行ってみたいんだ」

「私はね、行くなら観光だな」

「観光?」

「今日みたいにね、食べたり、お店見たり、食べたり」

「食べてばかりだ」

「ただ遊びに行くだけ」

「働かずに?」

「働かずに」

「働かないで、遊びに行くだけ……いいな」

「いいでしょ」

「行こうか」

「行こうよ」

「必ずな」

「一緒にね」


そろそろ夕焼けだ。

「アーシュ」

「ん?」

「後ろを向いて」

「ん」

「はい」

「髪?リボン!赤い!少ししか見えないよ!」

「これ、さっき見てただろ。アーシュの琥珀の瞳と黒髪には、ピンクや水色じゃなくて、赤が似合う。ほら、止まって、くるくるしなくても見えるだろ?」

「ありがとう!かわいい」


アーシュの方が、かわいいよ、って聞こえた気がした。


「帰ろうか」

「帰ろうか」


ダンの家に集合だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ