王都での1日
ギリギリ間にあいました。今日は1話です。
7の日。それぞれに別れて、出かけていった。帰りは6時ダンの屋敷集合。夕ご飯を食べながら、話を聞きたいそうだ。
「さ、アーシュ、いくよ」
「うん」
伸ばされた手を握り、二人で歩く。よく考えたら、いつも4人で、2人だけのことはほとんどなかった。歩きながら、ふとセロを見上げる。セロが下を見おろす。
「「ふふっ」」
今日はどこに行こうか。
泊まらせてもらっている領主の屋敷は、王都の中央王城よりにある。そこから北は、貴族や商人の裕福な街。南に下がると、中央広場があって、庶民街、中央ギルドのそばに貧民街と続く。東と西には、庶民街が広がっている。
「まずは中央広場に行って、それから屋台やお店を見ようか」
「そうしよう!」
中央広場には噴水があって、広場はどこでも休めるようになっている。周りには露店や屋台がポツポツとある。まずは、屋台を端からチェックだ!
「串焼き、パン、串焼き、肉巻き、肉の小麦巻き、干し果物、串焼き」
「肉ばかり」
「味付けが違うみたいだぜ、オレ、肉巻きが食べたいな」
「うん、私は小麦巻き、半分こしよう」
「オレが買ってくるから、待ってて」
おお!
「肉巻きおいしい!」
「薄切り肉がくるくるしてるな」
「小麦巻きは、これはジャムをはさんで巻けば……もっと薄く焼いて」
「仕事熱心だな?」
「こっ、これは違うの。単にこう、仕事柄というか」
「仕事だな?」
「もう!」
「ははは」
「ちょっとおじさんに話を聞いてくる!」
「おじさん、これ甘いもの巻かないの?」
「甘いもの?巻いたこたあねえなあ。こう、がっつりいくもんだからな」
「おいしそうなのに」
「でも、あまり女の人は屋台では買わんからなあ」
「あ、ほんとだ。少ないね。どこに行ってるんだろ」
「外ではつままねえな。食事処に行くんじゃねえか」
「食事処って、じゃあ、ご飯食べるほどじゃない時はどうしてるのかな」
「さあなあ」
「ありがと!おじさん」
「おう、また来いよ」
次はそのまま、お店を見ながら南に移動する。
「わあ、キレイな服屋さん」
キレイなドレスが飾られている。
「いつか似合うようになるかな」
「今でも似合うと思うよ。何か買ってあげようか」
ドレスは無理だけど、端っこのリボンなら……
「ん、いいの、それより先に行ってみよう?」
節約思考が……食べものなら買えるのに……
貧民街は大きくなかったけど、確かにそこにあって、気力のない人があちこちに立ったり座ったりしていた。セロと下を向いて足早に通り過ぎ、中央ギルドに出た。
「ここが中央ギルドか、大きいね」
「西の2倍?メリルの3倍以上はあるね……」
7の日でも、結構人がいる。それに合わせて、周りには屋台の他に、食事処もある。屋台は串焼き、串焼き、パン、肉巻き、串焼き……あ!
「セロ、あれ!」
「あ、珍しい、揚げ物だ」
「「行ってみよう!」」
「おばさーん、それなあに?」
「小麦を練って、油で揚げたのさ、最近西に油の工場ができたんだよ」
「2つください!」
「あいよ」
紙に包んでくれる。まんまるで硬い、いや、
「中が空っぽだ!」
「サクサクしてておいしい!」
「子どもの食べ物のようだろ、でも案外冒険者も買うのさね」
「おばさん、これ、お砂糖かけないの?」
「かけたらおいしいだろうね、でも高くてとても屋台じゃ売れないよ」
「お店なら?」
「お店で座れるんなら多少高くてもいいかね」
「おばさん、飲み物売ってない?」
「嬢ちゃん、水出せないのかい?」
「出せるけど」
「だからあんまり買う人はいないんだよ、でもあっちでココのジュースは売ってるよ」
「「ありがとう!ごちそうさま!」」
ココはココナッツだ。おいしいけど、ぬるい。
「お昼は?」
「食べすぎで入んない」
「じゃ、おばさんの言ってた、東ギルドのそばのお菓子屋さんに行ってみようか」
「うん!」
そこから王都の壁沿いに、東ギルドまで回ると、おやつの時間だ。
「あ、あれじゃない?」
「ここは騒ぐとリカルドが来るぞ!」
「はは!わあ、クッキーだ!あれプディング?」
「ひとつずつ買ってみれば?」
「そうしようか」
その後串焼きを買って、城壁に登らせてもらった。リカルドはお休みだそうだ。王都を二人で眺めながら、おやつを食べる。おいしいけど、硬い。プディングみたいなのは、プリンじゃなくて、小麦の甘いちまきのようなものだ。
「何人住んでるんだろうね」
「たくさんだろうね」
遠くに西門が見える。
「あの西門の先に、ニルムがあって、その先に帝国があるんだな」
「行きたい?」
「行きたい。海から首都まで、広い草原が広がってるんだ。ダンジョンは山のそばにしかないんだって。少ないっていっても、メリルと同じくらい数はあるんだよ。冒険者として、行ってみたいんだ」
「私はね、行くなら観光だな」
「観光?」
「今日みたいにね、食べたり、お店見たり、食べたり」
「食べてばかりだ」
「ただ遊びに行くだけ」
「働かずに?」
「働かずに」
「働かないで、遊びに行くだけ……いいな」
「いいでしょ」
「行こうか」
「行こうよ」
「必ずな」
「一緒にね」
そろそろ夕焼けだ。
「アーシュ」
「ん?」
「後ろを向いて」
「ん」
「はい」
「髪?リボン!赤い!少ししか見えないよ!」
「これ、さっき見てただろ。アーシュの琥珀の瞳と黒髪には、ピンクや水色じゃなくて、赤が似合う。ほら、止まって、くるくるしなくても見えるだろ?」
「ありがとう!かわいい」
アーシュの方が、かわいいよ、って聞こえた気がした。
「帰ろうか」
「帰ろうか」
ダンの家に集合だ!




