1組目の旅立ち
今日1話目です。
今日は後でもう1話入る予定です。
「おい、お前ら」
ギルド長が帰ってきた。
「王都への派遣、決定だ」
うわー!
「すまねえが、よろしく頼む」
そうときまったら、計画はいろいろ立てないと!
「さすがに4の月はここで過ごしたいだろ、5の月からどうだ?」
「7の月の『涌き』までにはここに帰ってきたいんですが」
「それは助かるが、8の月には王都での授業があるだろう」
「でも、5の月から8の月まで行きっぱなしはつらいので」
「マリア、ソフィー、マルはそれでいいのか」
「子羊館が気になるから、帰ってきたいです」
「勉強にも負担がかかるな、すまねえ」
ダンと一緒に、ザッシュとクリフも一緒に行くことになった。学院が始まるまで、ダンの家で過ごしつつ、ダンジョンに潜って稼ぐそうだ。西ギルドに顔を売っておくためでもある。
また、その2の月の終わりに、獣脂とオートミールの工場の立ち上げで、解体所の工場長さんも一緒に行くことになった。
「この年で、工場の立ち上げなんてなあ。まあ、解体所はどこも似たようなもんだ。しっかり作り上げてくるわ」
ダンは、
「西ギルドでお茶の立ち上げを終えたら、アーシュたちが来るまでに、東でもすぐできるように準備しておくよ」
と頼もしい。
「グレアムさんと話し合って、ギルド内に簡易キッチンと、食事スペースを確保しておく。魔石の冷蔵庫もだな」
そうそう、アメリアさんに呼ばれてた!
アメリアさんアメリアさん。
「あらあ、アーシュちゃん、ダン君、ようやくできたわよう」
魔力冷水筒だ!
「原理は冷蔵庫と同じなんだけど、一定の温度まで冷やすのが難しかったのよ」
しゃっきりしている。
「少しずつ増産しておいてもらえますか」
「1個できるまでが大変で、それ以降は大丈夫よ」
「あの、アメリアさん」
「なあに、アーシュちゃん」
「アメリアさん、肉団子スープ好きですよね」
「大好きよう、口に入れると広がるジューシーな感じとか、もうたまらないわあ」
「それでですね、お肉をこう、細かくする機械が、その、魔石で動く……」
「わかるわ!肉団子がたくさんってわけね!」
「あと、泡立て機をですね、こう高速で動かせるような……」
「そのふたつは、機械さえあれば魔石は動力として必要なだけだから、鍛冶屋さんと相談して作ってみるわ。アーシュちゃんたちが王都に行くまでには出来ると思うの」
「よろしくお願いします!」
これで朝食の準備がだいぶ楽になる!
あとは引継ぎだ。
子羊館は、ギルド長と相談して、引退した冒険者さんご夫婦に、通年で見てもらえることになった。私たちがいる時は多目に人を泊め、そうでない時はできるだけの範囲でやるとの事。領主様が、教会の敷地内に、従業員宿舎も作るとも言ってくれた。
賭けで勝ち取った子羊館だが、1年で少し手が離れてしまった。
「アーシュ、きみたちの宿屋なんだよ。7の月もだし、9の月からはずっといられるだろう。私たちは、いない間、守っているだけ。いるあいだは、用心棒とでも思ってくれればいいさ」
と、管理人さんは言う。
「引退したが、腕っぷしはあるし、若い人たちの中で働けるのはうれしいからね」
「ありがとうございます」
あっという間に2の月も終わる。ダンたちの旅立ちの日が来た。
「では、先に行ってる」
「しっかり勉強してきます」
「休みには、帰ってくるから」
行ってらっしゃい!
2か月後には会えるよ!




