ギルド長会議
今日2話目です。最初の5分ほど、東西がまた混乱していました。読んでしまった方すみません。直してあります。
ギルド長会議が始まった。参加者は東から、メリル、メルシェ、シース、王都の南の、ナッシュ、オルド、西のセーム、ニルム、王都の東ギルド、西ギルド、中央ギルドの10人、そして総括する総長兼宰相、王都の守りとして、東門隊長、西門隊長、中央門隊長、計14人だ。
定例の報告が終わったあと、王都中央ギルド長からの提議がでた。
「今年度の王都の『涌き』だが、抑えきれず、魔物が街道にあふれることが多かった」
王都南のナッシュから茶々が入る。
「王都で溢れんのは、いつものことじゃねえのか。何のための騎士団だよ」
隊長たちは身じろぐが、答えない。中央ギルド長が、続ける。
「逆に、メリルでは、今年は涌きは楽だったそうじゃないか」
「けっこうな人数が来てくれましたよ」
「はっきり言わせてもらおう、メリルのせいで王都に冒険者が足りなかったのではないか」
「それはどうですかね」
「認めないつもりか!」
「認めるも認めないも、メリルは涌きのための努力をしただけで、王都から冒険者を奪おうとしたわけじゃない。涌きの季節はどこのギルドも冒険者を必死で確保するのは当たり前だ」
皆が頷く。
「現に、『涌き』が終われば、メリルはすぐ通常に戻ってる」
「しかし、王都で冒険者不足なのは事実だ」
「『涌き』のための努力不足じゃねえんですか」
「努力など、冒険者は『涌き』で稼ぐのが仕事だろう。王都の『涌き』は稼ぎ時のはずだ」
「そうやって何もしねえで溢れさせ、騎士団を消耗させ、冒険者に怪我をさせてんのが現状ってわけですか」
「そもそもメリルが邪魔をしてるという話だろう」
東ギルド長が口を挟む。
「涌きがあふれて困るのは、街道を使う貴殿たちもだ」
「だから、王都がなんとかしろって話ですよね」
「「「!」」」
「グレッグ、口の聞き方に気をつけろ」
「さっき、メリルのせいじゃねえ、王都の努力が足りねえからだって言ったじゃねえすか、何聞いてんだよ」
「辺境風情が!」
「その辺境風情に責任を押し付けようとしたのは誰ですかね」
「っ!」
「その辺にしておけ」
「西の」
「メリルにとやかく言ったとて、王都に冒険者が増えるわけではなかろう、ここは潔く、『努力』とやらを聞くべきではないか」
「確かに、メリルのうわさはよく聞くようになった。王都ではないが、工夫があれば聞かせてもらいたい」
「「うちもだ」」
「メルシェ、シース、ナッシュ」
「そんなにか、西領の方ではきこえてこないが」
「まあ、ニルムもセームもちと遠いからな」
「そもそも冒険者は!」
「中央の、東の、糾弾はもうよい。まずはその『努力』とやらを見せてもらってからだ」
「総長」
「メリルの、頼む」
「はい、ではこの資料を見てください。一年半前の、7の月からです」
説明が始まり、終わった。
「つまり、ギルドが、食事を提供することでケガが減り、成果が上がるというわけか」
「提供するのはギルドではなくてもいいんです。要はそういう仕組みづくりをするということです」
「この、レーションというのは作り方を公開してもいいのかね」
「許可はとっております。格安の特許権でつかわせてもらう予定です」
「そのための土台として、獣脂、オートミールとやらの生産が必要と」
「他のギルドで使うなら、メリルだけではまかないきれないし、各ギルドの解体所の有効利用にもなる」
「しかしこれだけのことをやるのは……」
「メリルではやりました」
「……」
「うちがやりましょう」
「西の」
「幸い、11の月に、子羊レーションの出張販売とお茶の提供を経験している。うちの職員にも、冒険者にも抵抗がない」
「そんな話、聞いてないぞ!」
「たかだか一週間の出張に、いちいち中央の許可は必要ない、ましてや東の許可など」
「メリルは近い、メルシェでも歓迎するが」
「シースもだ」
「ありがてえが、派遣できるのが4人なんですよ、まずはどこか1ヶ所でお願いします」
「では、先に声を上げた西ギルドでよいか」
「お手並み拝見ってことで」
「良い成果を出せるようにしよう」
「工夫工夫って言っても、結局、冒険者は力だろう、ま、魔法師上がりにはわからねえだろうな。オルドには関係ねえ、もう引き上げてもいいか」
「うむ、西ギルドにはその件、許可する。他になければ今年は以上だ」
「首尾よくいったな」
「ああ、これからは大変なのは子羊たちだ。ホントは手放したくねえんだが。すまないが守ってやってくれ」
「わかっている。まかせておけ」
「じゃあ、またな」
「ああ、またな」
ギルド長会議が、終わった。




