ギルド長として
それから、ランチの見学をすると、2人で訓練所にこもって魔法の練習をしているようだった。
次の日はレーションを作っているところの見学、そこから獣脂工場の見学、オートミールの工場の見学など矢継ぎ早にまわり、また魔法の練習。お茶の販売の見学。冒険者に話を聞く。
次の日はもういっそのこと、すがすがしいくらいに魔法の練習しかしていなかった。子羊館でも、ただただ楽しそうだった。
さらに次の日。
「じゃ、オレたちダンジョン行ってくるわ」
と言って、
「はあ?ちょっ、何してくれてんですか勝手に!」
「2、3日帰らねえから」
「来週からギルド長会議でいないんですよ!」
「すまん、グレッグ借りるわ」
「いやアンタもギルド長でしょうが!」
ダンジョンに降りていった。
「チッ、赤禍が!」
「せきか?」
「あー、セロ、聞いちゃったか。赤禍ってのは、ウチのギルド長と西ギルド長の二つ名。火魔法を中心に、魔物を赤く焼き尽くす『赤の殲滅』と、あらゆる魔法を使いまくって時には味方にすら被害をもたらす『黒の禍』。合わせて『赤禍』。あこがれでもあり、ああはなるなという教訓でもあったんだよ」
「みんなに教えなきゃ!」
「いや、やめて、オレ怒られちゃう、あ、行っちゃったよ……」
3日後、
「アンタたちのせいで魔物少なくなってんで、苦情でてるんですよ、どうするんですか!」
「もう行かねえから、いいだろ、少しぐらいよ」
と怒られていた。
「おい、お前ら」
え、久しぶりに?
「会議に行く前に、話がある。子羊館に行くぞ」
初めてのパターン?
子羊たち11人と、グレッグとグレアムが集まった。
「お前ら、『涌き』はわかるな?」
はい、稼ぎ時です!
「それも間違いじゃねえ、じゃあ、王都の涌きについては聞いたか」
はい、あふれて旅人を襲うこともあると。
「メリルが人を集めてるせいで、王都に人がこねえと言われてる」
数字は?
「数字?」
メリルに人気が出る前とあとの、王都の冒険者の数の違いです。
「それは『見た感じ』だろ」
「そうだな、わざわざ人数を調べてはいない」
確かにメリルの涌きの季節は忙しいけど、終わったらすぐにいなくなってますよ?それが王都に戻らないのは、メリルのせいじゃないと思う。
「厳しいな」
「グレアム、それが事実だろう。王都はな、良くも悪くも頭がかたい。特にギルドは、冒険者は、ダンジョンさえありゃあ命をかける、それが当たり前だと思ってるんだ」
「言葉もない」
「けどな、アーシュ、お前たちのやってることを見て、ちゃんと支えてやれば、冒険者だってしっかり安全に働けるってわかったんだ」
そんなつもりではありませんでしたが。
「だからな、この会議、オレは責任を問われる前に、攻めに出る」
「私もだ。すでに西ギルドは茶の販売の実績もある」
「メリルの方式を、ギルドに広めたい」
朝食と、ランチを?
「レーションもだ。そのためには獣脂もオートミールも現地で生産したい」
ふむふむ。良いのではないですか。
「そのためにお前たちが必要だ」
なんと!
「正確には、アーシュ、マル、マリア、ソフィー、お前たち4人だ」
なにゆえ?
「派遣するから、メリルでやったように、4人で、朝食とランチの仕組みを作り上げて来てほしい」
マリア、ソフィー、マル、どう?うん、できなくはないよね。
「できるとは思いますが、つまりメリル以外に行くってことですか?」
「そうだ。まずは王都だ。王都ができれば、ほかの地区にもひろがりやすい」
「西ギルドが、まずはそれを引き受けるつもりだ。西が成功すれば、負けず嫌いの東が動く。王都のギルド二つが動けば、中央ギルドが動かなくても、他地区のギルドも動くはずだ」
来年は荷物持ちもしなきゃ。
「派遣された先でやってくれ」
「それでは、オレたちは、アーシュたちの派遣された地区について行って冒険者をやります」
「セロ、ウィル、そうしてくれるか」
「待って、せっかく来年から冒険者なのに」
「いいんだ、どこでやっても冒険者は冒険者だ。むしろ
アーシュとマルのおかげで思いもしないところに行ける」
「マリア、ソフィー、オレたちもついて行くか?」
「ニコ、ブラン、お願いできたらうれしい」
「じゃ、オレたちも行きます」
「通学組は手伝いたいだろうけど、勉強をがんばれ!」
「っ!はい!」
「では、ギルド長会議に行ってくる」
行ってらっしゃい!




