合格の日に
今日2話目です。
今日もお茶はやはり売れた。レーションはやはり足りなくなったが、これ以上増量することは出来ない。
途中でギルド長が、
「学院どうなった」
と来てくれた。
「特待生合格です」
と言ったら喜んでくれて、お茶を1杯買っていった。
ダンと2人でニコニコしていたせいか、お茶を飲み終わっても、まわりに残っている人が多かった。
そろそろ6時になる頃
「アーシュマリア、買いに来たよ」
とこの人が。
「リカルドさんだ」
「オレもな!」
「ディーエだ」
「呼び捨てか!」
「チッ、今日も来やがった」
「ダン?」
「合格したんだってね、おめでとう」
「おめでとさん」
「ありがとうございます」
「ちなみにオレ、首席ですけどね」
「そうか、おめでとう」
「そうかって……興味なさすぎだろ」
「今日はお祝いかな」
「いえ、この後訓練なんです。おいわいは明日で」
「訓練て、アーシュマリア」
「冒険者を目指してるので」
「!危険な仕事だ。体も心配だし」
「まあ、ははは……」
「アーシュ、ダン!」
「セロ!」
「そろそろいいか?」
「うん、片付ける」
「アーシュマリア、私も行こう、あぶなくないように」
心配性?
「訓練だってよ、かわいいな」
「オレたちも見にいこうぜ」
「教えてあげてもいいな」
なぜかぞろぞろ移動が始まった。
訓練は、今日はノアとイーサンがつけてくれる。残りは、それぞれと組み合ってやる。私はたいていマルと組む。マルは体力が余っていたようで、激しく、押され気味だ。
「女の子組、けっこうやるな、特に金髪のほう」
「太刀筋がいい」
「黒髪の方も、けっこう返してるぞ」
「オレたち教わる側かあ?」
「アーシュマリア、危ないことを」
「リカルド、どうした、冒険者では普通の訓練だろ」
「しかしアーシュマリアはまだ9歳で」
「早くからやっちゃいけないのか」
「そうではないが……傷でもついたら」
「リカルドさん!」
セロが呼ぶ。
「よければ、稽古を付けてくれませんか」
「!私でよければ」
「おい、見ろよ、東門隊長が出るぜ」
「ああ、見ものだな」
カーン、カン、カ、カンと、軽く打ち合わせる。
と、セロが飛んで離れ、カーン、と打ち込む。リカルドは軽く捌いていく。剣を合わせ、
「オレ程度では、本気になれないですか」
「いや、その年にしてはなかなか」
「チッ」
カーン、カン、カンカン、ガツッ
「リカルド、訓練なんだ、本気を出してやれ!」
「しかしな」
カツッ!
「!」
「ほら、1本」
「はは、セロ君にはやられたな」
「チッ」
「アーシュ」
「はい!」
「お前が相手してやれ」
「リカルドさんと?」
「そうだ」
「いや、待ってくれ、アーシュマリアは」
「リカルドさん、冒険者に男も女もないですよ」
「ノア、しかし」
「では、リカルドさん、お願いします」
「あ、いや、」
カーンと、引き気味のリカルドさんの剣に私の剣が当たる。
「ッ」
カーン、カン、カ、カン、カン
「アーシュマリア、待て」
カン、カ、カッ!リカルドさんの剣が飛んだ。
「参ったな、アーシュマリア、強いね」
この人は!何も分かってない!東門隊長のくせに!
私は素手のリカルドさんに打ち込む。
カッ、
「待て、アーシュマリア、お前がケガをするから」
「剣を拾え、リカルド!」
「……アーシュマリア?」
「剣を拾え!冒険者が、剣から手を離すな!」
「アーシュ……」
「剣がなければ、魔物にやられる。覚悟のないやつが、訓練場に立つな!」
「あ……」
「とうちゃんは、ダンジョンで死んだ。弱いから練習するんだ!冒険者をお遊びと思うな!」
「トニア、ターニャ……」
「ターニャはいない!ここにいるのは、アーシュ!剣を拾え!」
剣をのろのろ拾う。カッ!カンカン、カン、カーン、カン、
目が合った。
「……ターニャ」
カッ、
「ターニャは、いない」
カッ、カン、カン、カン。目の焦点が合う。
「アーシュ」
「はい!」
「アーシュ」
「はい!」
カンカン、カン、カーン、ドサッ。
「!アーシュ!」
「大丈夫です」
「最初から本気になってください」
「!」
「セロ!交代!」
「今度は、ちゃんとお願いします」
「わかった!」
本気になった隊長には、みんなボロボロにやられた……
今日、合格発表だったのに……
「お前な、リカルド」
「なんだ」
「あの子はターニャに瓜二つだけど、ターニャじゃないんだ」
「……おれ、気持ち悪いやつになってたか」
「おう、ドン引きだぜ」
「本当に、強い目をしてた。もう、守らなくていいんだな……」
「オレたちも、過去とは決別だ」
「剣を拾え、か」
「まずは嫁だな」
「嫁か」
「「遠いな……」」




