西ギルドでお茶販売
今日4話目です。
次の日。朝からレーションを焼いた私は、ダンと今日の段取りを話し合っていた。
「数はどのくらい用意する?」
「レーションは念のため10余分に焼いたよ?」
「余分か、昨日のようすでは、必ずしも好意的ではなかったしね。売れないことも考えられるし、どうしようか」
「んー、今回は市場調査だしね、正直、利益は考えなくてもよいのでは?」
「ギルドの規模も、冒険者の数も2倍以上だからね、普段よりは多くしようか」
「冷たいものはどうする?」
「メリルではもう出してないんだ」
「お試しで各10ほどどうだろう。なくなったら声はかけないことにして」
「じゃ、あったかいのは」
「各50」
「ギルドの職員に出す分は?」
「じゃあ、甘いのプラス10」
「レーションも試食用は別に用意したよ」
「では、3時頃到着で行こうか」
「行こう!」
「マルも準備オッケー」
今日は、マリアとソフィーはダンのお母さんとお買い物だ。ザッシュたちは、4人で組んで東口のダンジョンへ。セロとウィルは、荷物持ちとしてあかつきに連れられていった。マルは私たちのお手伝いだ。
お昼を食べて、さあ、西ギルドへ!
「こんにちは!あ、アリスさん!今日はよろしくお願いしまーす」
「あら、がんばって」
あいさつは大事だ。
長机を借りて、レーションを積み上げ、隣にお茶の用意をし、小銭を揃え、さあ、これは欠かせない、昨日みんなで書いた、『子羊館出張所』ののぼり。
ギルドは、四時前頃からダンジョン帰りの冒険者で忙しくなる。その前に
「おつかれさまでーす、コレ味見で」
と、甘いお茶とレーションの試食を配る。受付は女性が多いので、行けるはず。
「おいしいわー」
「ギルド長にも誰かお願い出来ないでしょうか」
「直接持っていってもいいわよ」
あれ、おとといあんなにしぶったのに……
まあいいか、トントン。
「入れ」
「お茶の差し入れです」
「そうか、どれ」
熱いですよ?
「ふーん、うまいな、レーションもいける」
ありがとうございます。夏は冷たいのもおいしいですよ?
「飲んでみたいものだ」
残り冷やしましょうか?
「これをか?」
はい、カップを貸してください。ほら
「冷たい、夏はよさそうだ。その魔法はなんだ?」
「生活魔法ですよ」
「そんな生活魔法はないが」
「そうなんですか」
では、売ってきます。
「おう」
パタン。
「なんだあの魔法は……」
さあ、チラチラ見てる人が出てきましたよ
「「さあ、行きますか」」
「疲れた体に、あったかーいお茶はいかがですか、甘いお茶もありますよ」
「おう、ダン、アーシュ」
「あれ?おにいさん、王都に来てたんですか」
「おうよ、たまにはな」
「甘いお茶いかがですか」
「1杯もらうかな」
「300ギルでーす」
「ふー、うまいな、ほっとする」
「レーションの味見はどうですか」
「もらうかな」
「オレにもくれ」
「ありがとうございます」
「レーションもありますよ、1ヶ月持ちますよ」
「2つもらうかな」
「ありがとうございます」
結構売れました。やはりレーションは売り切れました。
さあ、あと少しで6時だ!
「おい、あれ」
「なんで西に来てんだ」
「なにかあったのか」
ギルドがざわついた。
「ん?」
「チッ。来やがった」
「ダン?」
「やあ、アーシュ」
「オレもいますけどね」
「あーグリッター商会の」
「ダンです」
「お茶はまだ残っているかい」
「はい!リカルドさん、残っててよかったです」
「やはりうまいな、噂のレーションは?」
「すみません、売り切れてしまって」
「残念!もう終わりならどうだろう、この後食事でも」
「これからみんなと約束があるんです」
「王都にいるあいだ、いつかどうかな」
「あーちょっとまだ……」
「おーい、ダン、アーシュ」
「あ、ザッシュ!セロ!」
「まだお茶余ってる?」
「甘くないのが」
「それでいいや」
「じゃ、みんなと帰ります、わざわざありがとうございました」
「またね」
「帰ったぜ」
「茶ァ飲みに来たのか」
ということで、王都でもお茶は売れそうです!
明日は試験の発表だ!




