王都女子会
次回こそ、試験です。
今日は女子会。
結局
「とうちゃんとかあちゃんは、幸せだったもん」
と泣きじゃくってしまった私はしかたないと思う。
その日は、ダンの王都の屋敷に男子組が、領主の屋敷に女子組が泊まることになった。領主の屋敷なのに、領主さままでが男子組に行ってしまった。解せぬ。代わりに、先に王都に来ていたダンのお母さんが加わった。
メイドさんにピッカピカに磨きたてられた私たちは、一部屋に集まっておしゃべりをした。
「聞いたわ、今日は災難だったわね……」
ダンのお母さん。
「うちのおかあちゃん、何でかどこに行ってもトラブルに巻き込まれて、結局街を離れることが多かったんです。なんにもしてないのに」
「まあ、アーシュちゃんを見てればわかるわ」
「私はトラブルはないですよ?」
「まだ小さいからよ、ねえ、見て?マリアとソフィーの美しいこと」
「ホントにきれい!」
「アーシュはちょっとおバカさんよね」
「えぇ、マリア、ソフィー、なんで?」
「マルもそう思う」
「マルまでー」
「アーシュちゃんは、自分を鏡で見たことはあるかしら?」
「髪と目の色は知ってます」
「見たことないのね……ちょっといらっしゃい」
「ほら、これがあなたよ?」
「かあちゃんだ……」
「波打つ黒髪、琥珀の瞳、あなたのお母さんはね、琥珀の姫と呼ばれていたそうよ」
「琥珀の姫、スラム出身なのに?」
「そう、そしてお父さんはね、最弱のナイトと呼ばれていたの」
「……最弱って……」
「ひどいと思う?」
「ホントに弱かったから」
「琥珀の姫と、最弱のナイト。何もかも捨てて、お互いだけを愛した恋物語として、結構有名なのよ」
何をやってるの、とうちゃん、かあちゃん……
「そして何もかも諦めた孤高のナイト、それが東門騎士隊長よ」「はい?」
「愛したターニャを守りたくても、孤児たち全員の幸せを選ばざるを得なかったリカルド、その側に控えるディーエ。親友だったトニアとリカルドを引き裂いたターニャを、ディーエは、許せなかった」
なんじゃそれ。隊長さん、リカルドっていうんだ。
「まあ、おしゃべりとロマンスが好きな王都の女子のたわごとかしらね」
けっ。好きなら押し通せ!大事なら守り抜け!何もできなかったヘタレ男子が、いたいけな9歳女子をいじめるんじゃないわ!
「ロマンスのかけらもないわね……」
「だからおバカさんなのよ……」
そんなあ。
「ねえアーシュ、私もソフィーも、わかりやすく美しいでしょ?
」
「うん!」
「だからね、男性からは声をかけられるし、女子からは嫉妬されていじめられるし、ザッシュ狙いの子たちにはからまれるし」
「私もよ、ニコとブランも結構人気があって、見えないところでいじめられるんだから」
「ほえー」
「そこを賢く乗り切るのが女子なのよ!」
「はあー」
「ターニャって、たぶん自分に無自覚で、それでいろいろ引き寄せてたんじゃないかしら」
「そうだったのかー」
「だからね、アーシュ。あなたも気をつけなさい」
「う」
「あなたは美しいわ」
「え」
「自覚をしないとターニャの二の舞よ」
「むずかしい……」
「取りあえず、おしゃれしたまま、明日セロをこう、下から見上げてごらんなさい」
「何で?」
「それで何かがわかるはずよ」
何のことやら。
次の日、ピカピカの私たちは、男子組をホールで出迎えた。
男子もピカピカになっていた、ステキだ。ニコニコと出迎える私たちを見て、男子が黙り込んだ。その後、あ、とかう、とかいいながら、あちこちを眺めている。
どうしたんだろう。
「さあ、アーシュ」
えー、やるんですか?
あさっての方を向いているセロの服を握って見上げる。
「セロ?」
ボンッ。真っ赤になった。あれ、なんだろ。
ボンッ。私も真っ赤になった。あれ。
「あーあ、やってらんねー」
「さー、勉強だー」
マルが、ね?、と顔を傾けた。
うん、私、少しおバカさんだったかも知れない。




