いよいよ王都へ
今日3話目です。
9月の2週から売り出して、すぐ私は手を引いた。
ダンの商売だからだ。
その日の売り上げの傾向をきちんと押さえ、お茶の種類と数を予想して、売る。アドバイスはしつつ、ようすをみる。2週間もすると、さすがに疲れたようだ。
夕食後
「疲れたよー」
というダンに、
「ひとりでやろうとするからだよ」
と言うと、
「手伝いはしてもらってるよ」
と答える。
「ねえ、ダン」
「んー?」
「来年、メリルでお茶どうするの?」
「どうって……」
「考えてなかったでしょ」
「……うん」
「ダンはさ」
セロが言う。
「いずれお父さんのあとをついでさ、人を使う立場になるだろ」
「うん」
「お父さん、事業を全部、自分でやってるの?」
「ある程度大きくなったら、人に任せてる」
「じゃあさ、ダンはさ、王都で1ヶ所でしか売らないの?」
「いや、少しずつ増やしていくつもりだ、あ!」
「全部、やらなくてもいいのか...」
「むしろ、手を離して行かなきゃだよ」
「試験もあるしね」
「ダン、ちょっとこっちに来い」
おや、男同士の会話ですか。
「なんだよ」
「そろそろアーシュを返してくれよ」
「余裕がない男は嫌われるぞ」
「ダン!」
「わかったって、王都ではしばらく借りるぜ?」
「そこまでだぞ?」
なんですかね?あれ、そうだ、
「ダン、あれはやらなきゃ」
「そうだ、アメリアさん!」
アメリアさん、アメリアさん、
「なあにー、アーシュちゃん、魔力補充もっと増やしてくれるのぉ」
違います、ほら、ダン!
「あの、新しい魔道具を開発してほしいんです」
「あら。詳しい話を聞かせてもらえるかしら」
人が変わりましたよ!
「あの、水を入れると、自動で冷やされる水筒を作ってほしいんです」
「需要があるかしら」
「いま、ギルドでお茶を売ってて、」
「知ってるわぁ、甘くて冷たくて……それね!」
「今はアーシュに冷やしてもらってるけど、いずれ誰でも使えるようにしたくて」
「開発はお金がかかるわよ、売れるかわからないし」
「来年からは、事業を拡大する予定です。優先的に購入するし、何よりもアイデアを出したのはオレです、むしろ、儲けの種を提供したわけですし」
「やるわね!わかったわ。冷蔵庫の応用で出来ると思うの、少し時間をもらえるかしら」
「お願いします!」
そうこうして、王都に試験に行く日が、やってきたのだった。
馬車は、領主様と、ダンのお父さんが出してくれる。しかも、ギルドの護衛つきだ。試験を受けないニコとブランも、王都のダンジョンに潜るため一緒だ。子羊館は、規模を縮小して奥さま方に営業を頼んでいる。
「ダン、王都の西ギルド長に、手紙を書いておいた。やつなら柔軟だから、お茶の販売も許可してくれるだろ、あとアーシュ、」
何でしょう?
「ついでに子羊レーション、出張販売してこい。領主のオーブン借りられんだろ」
そんな!王都に行っても働けと!
「お茶売りに行くんだろ?レーションと抱き合わせの方が、売れるぞ?」
う、はい、わかりました。
では、お茶販売に、行ってきます!
じゃない!試験、がんばってきます!
「走り出したから、止まらない、か。気をつけて、行ってこい」




