表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この手の中を、守りたい  作者: カヤ
集まる子羊編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/307

アーシュ9歳8の月

今日6話目です。

涌きの7の月が終わった。


8の月は、子羊レーションを作らされつつも、やっと落ち着いた。ダンの授業も、小学校上級まで終わり、資格はないけど、学力はついたと思う。ダンは来年からは王都の学院に行く。まあ、試験があるけど、ダンの学力なら何の問題もないってノアが保証してた。さみしいけど、がんばってほしい。


月の終わりのことだ。珍しく、領主様から、子羊館の孤児全員集まるよう、連絡があった。と言っても、子羊館の食堂だ。


当日夜、領主様だけでなく、ダンもダンのお父さんもいる。ギルド長もだ。


「みんな知ってると思うが、来年から、ダンは王都の学院に行く予定だ」

「試験に受かればですが」

「謙遜する必要はない、そこでだ、みんなはどうする」


「「「え……」」」

「いや、オレたち、小学校行ってないんで」

「試験に受かりさえすればいいのだよ、知らなかったのかい?」


……知らなかった……


「それに、オレたちは来年14歳です。12歳で入学ではないですか」

とザッシュが言う。

「正確には、入学した年に、10歳から14歳になる者だ。小学校上級卒業で来るものがほとんどだがね」

「では、オレ、行く資格はあるんですか」

「あるとも。ザッシュとクリフだけではない。アーシュ、マル、君たちも資格はあるんだよ」


今9歳、来年10歳、確かに!

考えたこともなかった。


「けど、けど、オレたち親が」

「王都には地方からも学生が来る。寮に入る子も多いな。孤児だから、入学してはいけないという規定はない」


「お金がかかるって聞いた」

「そうだ。1人1年、およそ100万ギル。寮に入るなら、安い部屋で50万だったか、食費込みだな」

「それが3年間……」

「王都への行き帰りの馬車代や服もいるな」


「……」

「オレ、オレは行きたいです。アーシュたちと暮らして、冒険者をやって、ためたお金がある、休み期間に冒険者をすれば、学費はなんとかなる。オレ、もっと勉強したい!みんなが許してくれるのなら」

「ザッシュが行くなら、オレもだな」

「ザッシュくんとクリフくんは決まりか」


「私は、勉強はしたいけれど、宿の仕事を離れたくない」

「私もです」

「マリア、ソフィー」


「オレは、勉強は付き合ったけど、これ以上したいとは思わない。冒険者を始めて、面白くなってきたところで、中断したくない」

「オレもです」

「ニコ、ブラン」


「セロとウィルは?」

「……」

うつむくセロの肩を、ウィルが抱く。


「勉強はしたい、学院も行きたい、けど、冒険者になるために努力してきたことを、簡単には捨てられないんだ」


私も、マルも、ダンもセロのそばに行き、抱きしめる。


遠くに行きたいんだよね、そのためには冒険者になるのがいい、でも、ノアが来て、道がそれだけじゃないって気づいてしまったんだよね。そしてセロは、私のこともマルのことも、ぜったい見捨てられない。


「ははは!」

「領主、意地悪が過ぎますよ」


「え?」

「学院にはね、学外就学制度というものがあるんだよ」

「学外就学制度?」


「学業優秀で、王都での通学が難しい者について、各地方の領主の推薦があれば、試験により入学を許可する。ただし、8の月1ヶ月間、学院にて授業を受け、勉強の成果を見せなければならない」


「それって、普段は冒険者をしながら勉強して、8の月の1ヶ月だけ、学校に行けばよいということですか」


「その通りだ。もちろん、君たちが希望すれば、全員分領主推薦をだそう」


「ウィル、アーシュ、マル、試験を受けよう!オレ、勉強したいんだ!」

「オレはいいよ、行きたいの知ってたしな」

「マルはどっちでもいい、勉強は特に好きではないけど、みんなと一緒にいれるならそれでいい」


「アーシュは?」

「うーん、学院は考えていなかったからなあ」


「「「考えてなかったのか」」」

だって前世で、16年も行ったし。


「帝国語は興味ある」


「行こう!」

「いこうか」


「よし、では、ダンとザッシュとクリフは王都で通学」

「はい!」

「セロとウィルと、アーシュとマルは学外就学」

「マリアとソフィーは」

「学外があるのなら、受けてみたいです」


「合格すれば、領主として奨学金も考えよう。1人でもメリルに戻って貢献してほしい」

「学院を卒業すれば、ギルドの職員という就職口もある」

「試験の成績がよければ、学費の免除もありますよ」


「まずは、11の月の試験に向けて、勉強ですね」

「はい!」


学院なんて、考えてもいなかった。

手の届かなかった世界が、近付いてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ