アーシュ9歳7の月
今日2話目です。
「涌き」の7の月が始まった。
今年は、ランチはすべて奥さんたちに任せた。売り子は、比較的若い奥さんだ。
去年の鳥、卵、豆、廃蜜糖、ジャムに、唐揚げが加わった。しょっぱいモノを各50、甘いものは各30、豆も30だ。
「豆は50だろ」
ギルド長は、豆が好きですねー、でも30で。
「ちっ。オレのぶん、取っとけよ」
はいはい。
私たちはといえば、ギルド長の命令により、子羊レーションの販売にきている。急きょ決まったことなので、前日に作り、紙で包み、屋台につみあげ、と大忙しだ。
焼き上がりを三角に切って、2つセットで500ギル。高すぎると思うのだが、冒険者は金を使うのでそれでよいとのこと。また、新製品なので安すぎてもいけないそうだ。
なじみのないものなので、試食を用意する。いよいよ販売だ。
「ダンジョンのお供に、子羊レーションはいかがですかー。カリカリサクサクほんのり甘い、小腹が空いたときに最高です。1ヶ月持ちますよー」
「アーシュ、マリア、今年はランチじゃねえのか?」
「あ、おにいさん」
朝食に来るおにいさんだ。
「ランチは、あちらでーす。これはね、新しい携帯食なの。まず、食べてみて?」
「へえ、あー、ほんのり甘くて、お、サクサクだな。ドライフルーツたっぷりで、食いごたえあるな!」
「1ヶ月持つんだよ」
「試しに買ってみるか!子羊ものは、ハズレねえからな」
「まいどありがとうございます!」
初日は、知り合いを中心にポツポツと売れた。
「アーシュちゃん、マリアちゃん、ランチ増やしてもいいかしら
」
ランチは順調ですね、どうぞどうぞ、おまかせします。
私たちは、明日も同じ20セットでいいかな、去年より楽かもね。
なんて言っていたら、次の日から行列の出来る屋台になっていた。一度買った人は、必ずリピートした。
それから毎日毎日、午後は魔力オーブンの前ですごす。途中で飽きて、甘みを少なくして、串焼きと同じ塩味のレーションを作ったら、それも売れた。酒のあてにイイらしい。いや、ダンジョン用だからね。
結局、奥さまがたにボーナスをはずみ、人に任せるだけ任せても、ランチの利益50万、レーションの利益100万となったのだった。マリアたちと半分こだ。
「量産の仕組みができるまで、しばらく子羊館がギルドにおさめてくれ。既存のパン屋に作ってもらうか、新しく店を作るか検討中なんだ」
ええー。
「涌きは終わったから、ギルドの売店で1日とりあえず20個でいいや」
そのくらいなら、なんとか。
ちなみに、500ギルのレーションの利益は、300。20個売り上げで、6000ギルのもうけ。お土産に買う冒険者が多かったため、20個ではすまず、8の月も20万ほどもうかった。これも半分こだ。8の月の終わりに、パン屋が一手に請け負ってくれるまでつづいた。
ただし、7の月、8の月は、これだけではなかった。
本業の宿屋も大変だったのだ。




