アーシュ8歳13の月の終わりに
大きな賭けに勝ったあと、高揚感のあとに、虚脱状態が訪れた。
私は、プレゼンだと思って提案とお願いをした。私にとってのプレゼンのコツは「私は女優」だ。ふだんの自分にはない、自信。
しかし、「演じていた自分」を思い出すと恥ずかしく「にゃー!」と叫んで転がり回りたくなってしまう。ましてや、セロたちの前でだ。
恥ずかしい気持ちのあと、怖くなってきた。大人にどう思われたっていい。けど、セロは?ウィルやマルは?気持ち悪いと思わなかった?だってこんな8歳なんて、私だっていやだ。
どうしよう。
どうしよう。
でも、そんな私に気づいてくれて、
「キライにならない」
って、言ってくれた。トントン付きだ。
イケメンめ!モテるに違いない。アレスたちとは大違いだ。
すっかり立ち直った私は、改修に目を向けた。
朝食とランチの関係で、マリアとソフィーとお手伝いの奥さんたちには宿屋をそのまま手伝ってもらう話になっている。
13の月の終わり、
「おい、お前ら」
……ギルド長でした。
呼ばれて見ると、孤児全員でした。
「さっそくだが、ザッシュたちの場所が、取り壊されることになった」
「……」
ザッシュたちはもう、知っていたらしい。うつむいている。
「かねてから、メリルの宿泊施設のすくなさは問題になっていた。それなのに、なんだか最近、メリルに来る冒険者が増えてんだよ。これから工場も立つ予定だし、住むとこの確保をな。だから取り壊して、冒険者用の宿泊所を立てる予定だ」
それはいいことだなんだけど……
「じゃあ、ザッシュたちは丘の上に引越しだね」
とセロが言う。
「!」
「そうだね、もともと宿泊者はそんなに多くない予定だし、ザッシュたちの部屋も考えてるとこだったし」
「マリア、ソフィーと一緒でマルはうれしい」
「ちょうどよかった、改装の計画一緒に立てようよ!」
「おれ、ベッドじゃなくて、お前らとおんなじように床でねたい!」
「私も!」
「お風呂は、女子用を作って!」
「解決かよ……オレ悩んでたのに」
「オレも……オレ、一番上なのに、情なくて……」
「あー、それはない。お前、自分が。なんて呼ばれてるか、知ってるか?」
「なんですか、それ」
「メリルの若鷹」
「……小っ恥ずかしいです……」
「いつも高いとこから見守ってるから、だそうだ」
「子羊を見守る鷹、ですか。オレ、できてるかな……」
「ザッシュー、勝手に決めちゃうよー」
「待て待て、オレの部屋は立派だろうな?」
「どうかなー」
笑い声が、はじける。
子どもたちは一つになる。




