セロの思い
今日6話目です。
アーシュの言う「賭け」が終わり、賭けに勝ったというのに、アーシュの元気がない。
「賭け」はすごかった。「だれ?」って思うくらいだった。特許とか、誰が得するとか、よくわからなかったけど、アーシュのやりたい宿屋の形を、思うとおりの形でもぎ取ったのはわかった。
しかも、誰も損をしていない。
さっそく、牧師館が改修されてるのに、うかない顔だ。
「ウィル、マル」
「なに?」
「アーシュ、最近、元気なくないか」
「うーん、やっぱり?」
「なんでかな」
「賭け以来だよね」
「「「聞いてみるか」」」
寝る前がいいかな。
寝る前は素直だからな。
今にも寝そうなアーシュの背中をトントンしながら、
「なあ、なんか悩んでるのか」
って聞いてみた。
「…べつに…」
「何もないことないだろ」
「……」
「ちょ、ま、アーシュ」
「なんで泣いてんだ……」
ウィルとマルが、ようすをうかがっている。
「言わないと、分かんないだろ」
「だって……」
「ん?」
「気持ち悪くない?」
「何がだ?」
「私が」
「「「?」」」
「アーシュ?なんで?」
「だって」
「だって?」
「石けんの作り方とか知ってるし」
「あれは実験してただろ?」
「大人相手に賭けなんてするし」
「勝ったからいいだろ」
「子どもみたいじゃないでしょ」
「子どもだろ」
しょうがないな
「ほら起きてみろ」
「顔ぐちゃぐちゃやだ」
「ふいてやるから、ほら」
「うー」
どこが子どもじゃないみたいだって?
「ほら」
「うー」
「手をのばしてみろ」
「うー」
「ほら、こんなに短い」
「うん」
「どんな事をしても、お前が一番、小さい。気持悪くなんか、ない」
「キライにならない?」
「ならないよ」
「「ならないよ」」
「うん!」
「さあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
ターニャとトニアの恋はけっこう有名なんだ。
この国では、14歳が成人だ。オレだって後3年したら、トニアの結婚した年になる。なあ、トニアが10歳だった時の気持ち、オレ、わかる気がするんだ。
守るもの。
アーシュとオレ、どっちが大人だと思う?
今は、まだ、知らなくていい。




