表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この手の中を、守りたい  作者: カヤ
集まる子羊編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/307

アーシュ8歳13の月の賭け

今日5話目です。

さて、決意の実現のために、私は賭けに出る。


「石けんを、使うの」

「石けん?確かに評判がいいけど」

「次の日曜日、手伝って?」

「「「わかった」」」


ギルド長ギルド長。

「なんだ?」

大切なお話があるのですが。

「言ってみろ」

えっと、できれば、ダンの父さんと、領主様と、解体所の工場長と、その奥様方に、聞いてほしいんです。

「……なにを企んでる?」

人聞きの悪い!損はさせませんよ。

「……悪徳商人か、お前は」

ちがいますって。

「大切な話なんだな?」

はい。

「まあ、お前らには結構無理させてるからな」

わかってたんですね。

「まあな、っていやいや、そんなことは、ゴホゴホ、とにかく、調整してみっから」


13の月一週目、7の日に決まった。


前日は、全員でピカピカに体を磨き立てた。特に私とマルは、見本になる。石けんで髪を洗い、酢でサラサラに、最後にオリーブオイルでつやを出す。つやつや子羊ヘアだ。黄色とペールグリーンのワンピースを着て、いざ領主館へ!


領主館は、はじめてだ。本物の執事に、おそらく応接室に通された。既に、みんな待っていた。


思い切り、息をはく。


「今日は、集まってくれて、ありがとうございます」

子供らしく。


まずは領主様だ。

「やあ、はじめまして。魔石はいつも助かってるよ」

「こちらこそ、教会を使わせてくれて、ありがとうございます」


ダンの父さんだ。

「セロくん、アーシュちゃん、元気かい?」

「おかげさまで」


工場長だ。

「獣脂は順調だぞ、手伝いに来い」

「はい!」


ギルド長だ。

「……」

「よろしくお願いします」



「さて、今日は提案とお願いに来ました」


「提案とは何かね?」


「はい、まずはこれを」

「石けんか!」

とギルド長。

「石けんとは、何かね」


「汚れをとるものです」

「セロ、お願い」


たらいと、石けんで手を洗う見本を見せる。


「このように、油汚れでもきれいになります」

「ほーお」


「みなさん、やってみませんか?」

「是非に」


「まあ、アワアワでつるつるになるわ」

「手だけではなく、体中につかえますし、洗濯にも使えます」


「ずっと気になってたのだけど、あなたがたその髪……」

「はい、石けんであらって、ダンのお父様のところのオリーブオイルで仕上げてあります」

「まあ、ツヤツヤね……」


「あなた、これほしいわ!」

「私もです!」


「肉の油も取れそうだな」

「もちろんです」


「で、きみ、アーシュくんだったか」

「はい」

「それを売りに来たのかね」

「ちがいます」


「ちがうって、きみ、では何をしに」

「提案、と言いました」

「提案……」

「はい、石けんの製法を公開します」


「製法……なるほど、そこでお願いか……」

「はい」


つかみは、オッケーだ。


「では、改めて聞こうか」


「この二つの石けんを比べてください」

「こちらは、少し獣脂のにおいがするな、こちらは、オリーブオイルか」


「その通りです」


「なぜふたつを?」


「石けんの原料はお察しの通り、油です」

「なるほど」

「原価に、差が出ます」

「ふむ」

「獣脂は普段づかいに、オリーブオイルは、高級志向で売れるはずです」


「奥様、オリーブオイルの石けんの匂いはどうでしょう」

「さわやかね」

「これに香りをつけることもできますよ」

「まぁ」


「いかがでしょう」

「これは、高くても買うわ。そして、お友だちに自慢するわ」


「余った獣脂と」と工場長。

「オリーブオイル」と、ダンのお父さん。


「工場を作って雇用も生まれる……」と、領主。

「王都で、流行ると思うわ」と奥さんがた。


「で、お願いとは、何かね」


「まずは特許料です」

「通常、3割だが、完全なオリジナルだ、釣り上げる気かね?」


「逆です」

「逆?」

「1割に下げます」

「アーシュちゃん、ちゃんと考えるんだ、大事なことだよ!」


「はい、考えました。1割に下げる代わり」

「条件か、なんだ?」


「教会と牧師館の、改装をお願いしたいのです」

「それだけかね……」

「来年3の月までに、住居と宿屋として整備してほしいのです」



「アーシュちゃん、おそらく、特許料は、その何倍もいくよ?その条件では、アーシュちゃんが損をする!」

「はい、将来的には、そうでしょう。でも、私たちには、この先3年間に、教会がすぐに必要なんです」


「特許料を担保に、貸付もできるが……」

「いいんです。1割でも、大人になるまでに、十分な財産になるはずです。今の希望の実現と、そして、すこしでもメリルの役に立つのならそれで。それに、友だちの父さんだし……」

「アーシュちゃん……」


「気に入った!それで手を打つ!」

「ありがとうございます!」


賭けに、勝った。


「じゃあ、アーシュちゃんとマルちゃん、おばさまたちと、別の部屋に行きましょうか」

「え?」

「髪の秘密を知りたいわー」

「え、でも」

「おやつもあるわよー」

「いく!」

「マル……」

「あ、まだお話が、あー」


「あきらめろ」

「えーー」



「あれが、子羊たちか」

「はい」

「8歳か」

「はい」

「何者だろうな」

「さあ、いい子たちです」

「楽しみだな」

「ええ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ