アーシュ8歳冬の決意
今日4話目です。
ギルド長の策略かもしれないけど、朝食、ランチ、宿泊とこなしてきて、宿屋としてやっていけるのではないかと思いついた。
幸い、魔石補充などで、資金の余裕もある。教会の他の場所か、牧師館を手直しして、雑魚寝で1組程度なら、今の私たちでもやっていけるのではないか。となったら、まずはみんなに相談だ。
「セロ、ウィル、マル、ちょっといいかな?」
「「「なに?」」」
「これからのことなんだけど」
「セロとウィルは、冒険者が目標でしょ?」
「うん!」
「あの時、私まだ、やりたいことなかったんだけど、アレスたちを泊めてみて、冒険者向けの安い宿屋をやりたいと思ったの」
「……」
「牧師館をちょっと修理して、1日1組くらいなら、なんとか」
「ちょっと待って!オレは反対だ!」
「……セロ、なんで?確かに大変かもしれないけど」
「ちがう!そんなコトいってるんじゃない!」
「なら……」
「わからないのか!じゃあ、もういい!」
セロは外に出ていってしまった、
「ウィル、マル、どうしよう、セロが」
「大丈夫、ちょっと頭冷やしてるだけだよ」
「でも、怒ってた……」
「そうだな……」
「なあ、アーシュ」
ウィルが言う。
「おまえさ、いっつもしっかり生活すること考えてるよな」
「うん、だっておなかすかせたくない」
「そのさ、生活の中に、オレら入ってる?」
「え……」
「オレたちさ、冒険者になるだろ、そしたら遠くの街にも行くだろ」
「それが夢だよね」
「うん、その時さ、アーシュはどこにいるの?」
「どこに……どこに?」
「マルはね、兄ちゃんと一緒に行くよ」
「マル……」
「だから剣の訓練もしてる。2年遅れだけど、パーティに入れてもらうんだ」
「なあ、その時アーシュ、おまえはどうしてる?」
「だって、私剣は……」
「確かにうまくはない。けど、ヘタでもない。オレたちとくらべるとイマイチだけど、平均よりいいって師匠言ってたぞ」
「え……」
「それにな、おまえ、剣士か?」
「ちがう」
「魔法師だろ」
「魔法師……」
「大人より多い魔力量、絶妙なコントロール、斬新な発想」
「え……」
「エスターが、言ってた」
「魔法師として、みんなとパーティを組む……」
「そうだ。たぶん、セロはそう考えてた」
「セロ……」
「なんで怒ったか、わかるな?」
「うん、一緒の未来を、かんがえなかったから」
「じゃあ、話してこい!」
「わかった!」
「セロ!ゴメンね」
「……オレこそ、悪かった」
「ううん、ちゃんと考えてなかった、私がいけないの」
「せっかく、仲間になったんだから」
「うん」
「いつも一緒に、いたいだろ」
「うん!」
「冒険者になって、離れてもいいのか?」
「よくない」
「セロ、私ね、宿屋はやるよ」
「!おまえ!」
「冒険者になるまで、3年間、やれるだけやってみたいの」
「一年後は、荷物運びになるんだぞ?」
「朝食や、ランチと一緒だよ、ひとりでやらずに、みんなを巻き込むんだよ」
「大変だぞ?」
「大変だね」
「いやな客も来るぞ?」
「どうしようか」
「やるんだな?」
「うん」
「仕方ないな」
冬の夜空は、きんと澄んでいる。
「戻ろうか」
「うん」
人生は、先に進む。




