アーシュ8歳11の月
教会に引越して11の月。朝起きて、顔を洗ってギルドに行き、朝ごはんの支度をして、途中から剣と魔法の訓練をし、朝ごはんを食べ、ランチの用意をしがてら、ギルドの朝食をだし、サンドの販売をし、次の日の朝ごはんとサンドの下ごしらえをする。
間に合えばやおやのおばあちゃんの手伝いをしたり、キルトを縫ったりし、午後からは解体所で働き、セロとウィルを待って魔力補充をして、帰ってお風呂に入って夕ご飯。マルは縫い物は嫌いなので、市場の手伝いをしてる。
このリズムに、勉強が加わった。帰る前、ギルドの部屋で、ダンが小学校上級の授業をしてくれるようになったのだ。30分ほどの短い時間で少しずつ、そして、夕ご飯の後でみんなで復習する。ザッシュたちは、参加出来ないこともあるので、そんな時は夕ご飯後に教会にやって来て、みんなで教え合う。そのまま泊まっていくし、ダンもしょっちゅう泊まりに来るようになった。様子見だと言って、ギルド長まで1度泊まりに来た。
そんなある日、
「おい、お前ら」
ギルド長だ。
これは、また、面倒くさいことか?
隣に、冒険者が1人立っている。
「今日、コイツ泊めてくんねぇ?」
誰?
「あやしいもんじゃねえよ、まだ若いがB級冒険者だ。今日にかぎって宿屋が一つも空いてねえんだ」
「ギルド長のとこは?」
「公平性ってヤツ?1人だけ優遇はできねえんだよ」
「ギルドは?」
「最終手段だ、寒いんだわ」
「子どもと一緒の大部屋で雑魚寝だよ?」
ギルド長が振り向く。
「構わねえ、野宿よりマシだ」
と冒険者。
「オレはいいよ」とセロ。
「「「うん」」」
「オレはアレス、18歳、B級、剣士だ」
「セロ、ウィル、荷物運びをしてる。で、アーシュ、マル、あー、いもうと?だ」
「「いもうとー」」
いもうとって、うれしいね。そういえば私とマルは、職業はなんだろね?ともあれ、
「よろしくな」
「「「「うん、行こう」」」」
大きなお兄さんのお客さんは、なんだかかウキウキした。いつもより多くパンと食材を買い、教会まで話しながら歩く。意外と話しやすいお兄さんだった。アレスは、パーティ解散したばかりで、メリルでソロでやり直すつもりなんだとか。メリルにはダンジョンは一つしかないけど、深層まであり、初級者からベテランまで、誰でも利用しやすいのが特徴だ。
魔術師の女の子に、パーティの仲間を取られたんだって!
「オンナって、、コワイな」
ココにもオンナはいますよ?
「どこに?ちっこくて、見えねえな」
おい!
楽しく教会についた。
「いらっしゃい!」
「先にお風呂どうぞー、セロ、石けんとお風呂の使い方お願い」
「お湯はここで。これ、こうすると泡立つから、これでこすって、そう、お湯はたくさんあるから大丈夫、荷物はここで」
今日はきのこと肉団子のスープと、コッコの胸肉のハムにする。
「さっぱりしたー、お、うまそうだな!」
「そうだね、じゃあ、いただきましょう」
「うめえ……」
でしょ?だてにギルドで朝食出してないよ?
おふとん用意して、勉強して、アレスは、こうみえて王都の学院を出ていたので、復習の手伝いをしてくれた。
「明日は早めにギルドに行って訓練だから。朝ごはんとお弁当は、ギルドでだしてるからそこで。アレスはすきなようにしてね」
「アレス、他の街の話をしてよ」
セロは遠くの街の話を聞きたがる。
「そうだな、海辺のダンジョンの街はな……」
海か、とうちゃんとかあちゃんとも、海の街は行かなかったな、行ってみたいな…………
「寝ちゃったぞ?」
「アーシュは小さいから、小さい声でね」
「……魚がうまくてな……」
……




