表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この手の中を、守りたい  作者: カヤ
集まる子羊編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/307

メリルの子どもたち

今日4話目です。

6、7の月は、販売で怒涛のように過ぎ去ったが、午前中買出しと下ごしらえをすませてしまえば、案外午後は楽だった。解体所でまめに働いたら、セロとウィルの帰りを待って、日が沈むまで、市場で遊ぶことが多くなった。


市場には、街の子も遊びにくる。親のいる子は、午前は学校に行き、午後は手伝いや遊びだ。孤児の子たちと接点はなかったのだが、ここではじめてぶつかることになった。


「孤児はどっかに行っちゃえ!」

などとはやす子もいたが、現実には、荷物運びとして働き、ギルドで訓練もしているセロとウィルとマルのほうが、ずっと強い。私は……うん。


別に弱いやつが騒いでてもどうもない。ということで、やりました、現代日本の遊び。これぞチート。まずはだるまさんが転んだ。だるまはなかったので、その時によって、「ギルド長」「王さま」「領主さま」などを転ばせた。そして、色鬼。


さあ、釣れましたよ、子どもたちが。結局、街の子も、孤児も関係なかった。その中で一番盛り上がったのが、ドロケイだ。ケイドロか?警察もドロボウもわかりにくいので、騎士団と盗賊ということにした。騎士団?見たことないけどね?最初騎士団が人気だったが、盗賊が出し抜くのも面白く、拮抗した。


街の人も、暖かく見てくれていた。


そんな中、ある日セロが、

「学校って、どんな?」

と言い出した。


街の子のリーダーのダニエルが、教科書を見せてくれる。

書き方、計算、歴史、地理だ。ダニエルはセロとウィルと同じ10歳なので、小学校の上級になる。


学校に行ける子は、8、9歳で初級、10、11歳で上級となり、読み書き、計算、メリダ、つまり自国や世界の歴史、地理などを習う。

12歳からは、試験に合格すれば王都の学院に行ける。そこで3年間だ。


けど、孤児や、貧しい子は学校にはいかない。


識字率は、あまり高くないのだ。


セロは、地理の教科書をみて、

「これ、読みたいな……」

と言った。そうだ、セロは冒険者になって、遠くにいきたいのだ。憧れるような目をしていた。


「オレ、教えようか」

ダニエルが言った。


「いいの?」

セロの目が輝いた。


そこから、青空教室がはじまった。

ギルドの依頼票も、読めた方がいい。

みんな、字は習いたかったのだ。


それをみたやおやのおばあさんや、町の人が、古い教科書をくれた。


ダニエルは、ダンと呼ばれていて、街一番の商人の子だ。特に不自由もなく、やりがいもなく育っていて、学校の勉強だってそんなに好きではない。どうせ父さんの跡をつぐだけだ。


忙しくても、毎日楽しそうなセロたちがうらやましかった。冒険者にもなってみたかった。わらの布団にみんなで寝るって、どんなだ。窓もないんたぜ。


そんなセロたちが、頼ってくれた。


でも、教えようとしても、初級のことですら忘れてる。セロたちの質問に、うまく答えられない。だめだ、これでは。


ダンは家に帰ってから、毎日勉強し直した。特に、歴史と地理は、セロがよく質問する。学校で習ってないことも聞かれる。家で、父さんにも聞いて勉強した。本も読んで、そのことも教えた。


気がつけば、8月には、初級の2年は教えきっていた。学校の成績は一番になっていた。



そして、お陰さまで、私も初級まで終了です。マルはどうかと思ったが、ダンの教え方はうまかった。教室に行けなかった日は、行った子が他の子に教え、孤児たち全員が初級を学ぶことができたのだった。ダンとセロとウィルの友情は、生涯続いた。


私がすべて、背負わなくてもいい。

手をつなげば、どこまでもひろがる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >私がすべて、背負わなくてもいい。 >手をつなげば、どこまでもひろがる。 凄く良い!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ