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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
帝国へ行く子羊編

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229/307

アーシュ14歳3の月まだ卒業は先だった

今日も短めです。

「あー、やっとか」

「ハラハラさせるなよ」

「セロ、遅すぎ」


みんなが知ってた。


「これでアレコレを追い払うのが楽になるな」


ダンが言った。でもアレコレって。


「窓から入ってくるような女でも、そこがいいって奴もいたしな」

「どれだけ前の話!」

「ま、生徒はどうでもよいけど、貴族連中が変な気を起こさないようにな、売約済みにしておかないと」


ご心配をおかけします。ダンは続けた。


「これでアーシュが落ちついたから、これからの話ができるな」

「これからの話?」


そう、13の月から、もっと言えば9の月から、さらに言えば4の月からずっと忙しかった。それでも9の月に立て直そうとしたけれど、結局忙しかったんだ。


「去年、流されずに好きなことをみんなでやろうって言ったろ?それってできたかな」

「オレはダンジョンには行った。でも満足いくまでは戦えなかった」


とウィル。セロは苦笑して肩をすくめた。どこにもいけなかったよね。


「俺も魔物肉で働いたけど、自分自身では何もしていないんだ。マルは?」

「マルはね、魔物肉屋は立ち上げた。みんなにおいしい魔物肉を出すことはできた。でも、屋台は出さなかったな」

「私も、結局お菓子の特許を取っただけだ」


あれ、忙しかった割にまた流されていたのか。


「それは仕方ないよ、状況によるからさ。だけどな、残りをこのまま過ごすのもちょっと癪じゃないか」


癪って。うーん。


「まず、中期的にはさ」

「中期的って、ウィル、かっこいいね」

「まあな、アーシュ。今年はさ、7の月にキリクに行くだろ?夏休みにさ」

「私たちもいいんだよね」

「もちろん!そこでの力比べとキリクでのダンジョンが楽しみでさ。だからオレ、いま中途半端に習ってるキリク語と乗馬を父さんからきちんと習って、キリクでの滞在を楽しもうと思ってる。もちろん、みんなもやるんだぞ」


ウィル決定。


「俺は卒業後には帝国を拠点にするつもりはまったくなくなった。フィンダリアに行ってキリクに行って、そしてもう少し先まで考えてみるつもりだ。だからこそ、アーシュとやろうって言った新しいお菓子での子羊亭を本格的にやろうと思う。帝国は市場としては魅力的だからな」


ダン決定。


「オレはね、できればフィンダリアの先まで見てきたい。でもそれは卒業後にできるから。帝国にいる間は、グレッグさんの手伝いをしたいんだ。だから時間のある時はできるだけダンジョンに行く。第4と第5ダンジョンにも行ってみようと思うんだ。もちろん、みんなのことも手伝うけどな」


セロ決定。


「マルはね」


マルは私を見た。ん?なにかな。


「やっぱり屋台をやりたい」


そうか。


「アーシュ、並んでやろう」

「並んで?」


マルがニヤリとした。


「マルは魔物肉屋のオーナー。朝食用の屋台はすぐに借りれる。魔石コンロがあるから火力は一定。マルが串焼きをしている横で、アーシュが屋台でできるお菓子を売る。二人一緒に、やりたいことができる」


マルはいたずらっぽく言った。


「セロがダンジョンに行っている間。マルと2人で楽しもう?」

「や、待て、オレだって手伝うよ!」

「兄ちゃんを無視するなよー」

「そんなおもしろいこと俺だってやるし」


うん、マルとアーシュ、決定。屋台でやるお菓子なら、考えていたことがある。獣脂が使えるようになったので、ドーナツをやろうと思う。


「セロ、王都で食べた、小麦のあげたお菓子、覚えてる?」

「ああ、外がカリッとして中がふわっとしたやつな」


そう言ってセロは私の頭についているリボンをながめた。あの時にもらったんだったね。


「はいはいはい、それは後でなー」


ダンがすかさずさえぎった。


「それでは、10の月までに見て回った店舗で目をつけてたのがあるんで、オレは仕入れから何からいっぺんに始めて、10の月から立ち上げられるようにする」

「意外と気が長いね」

「キリクで中断されたくないからな。店舗の改装と仕入れの目安だけつけて、帰ってきてから一気にやる」

「マルは早速来週から。アーシュ、話をつけに行って試作から入ろう。お兄ちゃん、セロ、護衛」

「わかったよ」

「はいはい」

「待て待て、俺も試作を食べてからにする」


明日からは4の月になる。15歳だ。卒業したらどうなるか考える前に、残りの1年と5ヶ月を楽しもう。立ち止まっても手を引いてくれる仲間と共に。




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