アーシュ8歳6の月終わりに
今日2話目です。
ランチって、
「セロはわかってると思うが、メリルは7月が『 涌き』なんだ」
涌きとは、ダンジョンの魔物が急に多くなる現象で定期的にやってくる。この時、きちんと間引かないと、ダンジョンの外まで出てしまう。メリルには、ダンジョンがひとつしかないので大丈夫だが、王都にはダンジョンがいくつもあり、その涌きの対応のために、王国騎士団があるほどだ。
「メリルはあまり宿泊施設や飲食店がねえ。特に昼はいつも問題になるんだよ」
「お前らの弁当のサンドな、あれを屋台で出せ」
「やっと朝食が落ち着いてきたのに……」
「ダメか?」
「うーん、奥さまたちをもっと雇って、前日から準備すれば……」
「食器も場所もいらないしね……」
「メニューはどうしよう」
「日替わりにしないで、毎日卵と鳥ね」
「オレ、甘いやつがいい」
とセロが言う。
「そうなの?知らなかったー」
「ちょっと恥ずかしいだろ……でも疲れた時、甘いの嬉しいんだ!」
「じゃあ、ジャムと糖蜜と、」
「あー、オレ豆のペースト」
「ギルド長、豆好きだねー」
結局、卵と鳥を300ギル、豆のペーストとジャム、糖蜜を小さいパンで200ギルで売る事にした。
「売り子さんを雇おうか」
「いや、お前らやれ」
「なんで?」
「(メリルの冒険者に推されてんだよ)ちっこいほうが、いじらしいだろ」
「えー」
「各20ずつでいいかな……」
「……朝食の時の反省を生かせ……」
「30ずつで……」
奥さんたちも雇って、買出しの手配もし、包み紙も用意して、さあ、「涌き」の7の月が始まる。




