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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
帝国へ行く子羊編

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アーシュ14歳9の月動き始める

さて、授業は長くても4時半までには終わる。大抵は3時だ。騎士科の生徒たちは授業が終わっても自主的に訓練したりするから、みんなで時間を合わせられるのは、夕食後の夜7時から9時まで。その時間は、なるべく集まる事になった。何のためかって?勉強のためだ。


私はセロの言う戦術が気になるし、騎士科には経済の授業は少なめだ。苦手な授業もあれば教えあわなくてはならない。


「私はナズからフィンダリア語を学ぼうと思うの。帝国語の初級の教科書も持ってきてるから、それに合わせて教科書も作りながら勉強するよ。幸い、ほとんど文法は同じだから。みんなはどうする?」

「「「「やる」」」」

「じゃあナズ、よろしくね」

「こちらこそ」


「ねえ、フローレンス、平日には町には買い物に行けるの?」

「午後6時の門限を守れば大丈夫よ」

「寮に料理のできる所はある?」

「小さいけど、本格的なものがあるわよ」

「借りられるかな」

「事前に許可をもらえばいいわ。お料理するの?」

「お菓子をちょっとね。フローレンス、バターって買える?」

「一般売りもしているけれど、うちからも直接分けてあげられるわよ」

「今は一般売りでいいの。明日買い物付き合ってもらえない?ナズは?」

「もちろん」

「うれしいです」


よし、これで許可をもらってと、明日買い物、明後日試食作りだ。


「できたら試食な!」


ダンとウィルがキラキラしている。ダンとハルクは


「明日は俺も付き合うよ」

「私も、行きます」


と言ってくれた。まあ、ハルクはナズの付き添いだろう。セロとウィルは、


「セロ、ウィル、明日からしばらく騎士科に付き合え。お前たちの力がみんな気になってるんだ」


とライナーに言われていた。


「オレたちも町に行きたいんだけど」

「ダメだ。自分たちばかり、しかも女子とだなんて。騎士科ならまずは剣。町にはそのうち俺たちが連れてってやる」

「「えー」」


ダンとハルクはいいんだ。


「俺も迷うな。どちらについて行こうか」


フーゴが悩んでいるが、別に誘ってないし。


「ま!セロとウィルはいつでも見られそうだしな。アーシュにしよう。イザークも行くぞ」

「なんで私が」

「めんどう見ろって言われたろ」


めんどう見ろって言われたのダンだけだよ。私たちを見てくれるのはフローレンス。だまされないで!イザーク!


「……しかたない」


だまされてる。でもおもしろいからほうっておこう。フーゴは商人なのに、貴族に気後れしないのかな。


午後はそのまま一旦解散して、夜に子羊だけで集まった。


「普通科は女子少なめでね。なんとなく冷めてて、興味とかまったく持たれなかったよ」


私が話し始めると、セロが、


「騎士科は逆にひどかったぞ。女子は4組に2人だけ。それで、男子はみんな騎士隊に入りたいからさ、騎士隊の動向はチェックしてるみたいで、1年や3年まで教室に見に来ててさ。ベルノルトとライナーがいなかったら、今日放課後連れ去られてたな」


と遠い目をしていた。ダンは、


「俺フーゴの話を聞いてて不思議に思って、後で聞いてみたんだけど、アーシュが魔法師として戦った印象はないみたいだぞ」

「そういえば癒し姫って」


ウィルがぼそっと言った。


「やめて!爆炎っていうよ!」

「ご、ごめん」


ダンが続けた。


「あれだよ、アーシュは主に風と水の魔法使ってたろ。ウィルが目立ったようだな。アーシュは最初にギルドの人を助けようとしたのと、スライムに巻かれた人を水魔法で助けたろ。そのせいだな」

「じゃあ、セロとウィルみたいに勝負しろって言われなくてすむからいいや。マルは気をつけるんだよ」

「返り討ち」

「潔すぎるよ!」


ここでウィルが話を変えた。


「ゼッフルどうだった?」

「ぜんぜんひどくなかった。メリダは辺境だが、って言ったくらい」

「イザークは?アイツ隊長代理の弟だろ。逆恨みされてなかったか」

「偉そうではあったけど、いやな感じはなかったな」

「じゃあ、まずは気にしないでいいか」


「俺はナズが気になった」


ダンが言った。私は答えた。


「ああ、かわいいよね」

「そうじゃなくて、っていうかそうなんだけど」

「どっちだ」

「髪を見たか?」

「うん、ツヤツヤしてた。でもフローレンスもだよ」


するとマルが言った。


「フローレンスは花の香り。ナズはハーブの香りと一緒に、オリーブオイルの香りがした」


なにそれ、すごい。


「さすがだな、マル。食材の匂いだもんな」

「そう。串焼きにも使われる、さわやかな香りのハーブ」


そこか。


「髪にオリーブオイルなんて、俺たちかメリダの人くらいだぞ。フィンダリアにはいいオイルがあるような気がするんだ」

「石けん?」

「そう。話も聞くつもりだけど、フィンダリアに行ってみたいな」


セロがうれしそうに言った。


「じゃあ、春休み。フィンダリアに行こうぜ。オレの遠くに行きたい気持ち、そこまで我慢するからさ」

「よし、行こうか!」

「「「「フィンダリアへ」」」」


「でもとりあえず今週末のことを考えよう」


セロが現実に戻ってきた。


「グレッグさんのことも気になるし、6の日にはダンジョンに行こう。とりあえず第3ダンジョンを拠点にするっていってたし。馬車も出てるみたいだ」

「7の日には町のようすを見て、まずは市場調査だね」


私も答えた。串焼きのことはまだだけど、みんなのやりたいことが少しずつ動き始めた。勉強もようすを見ながら、がんばろう。

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