アーシュ7歳3の月
今日2話目です。
共同墓地の前で立ちすくんでいると、ギルド長によばれた。
「これからあてはあんのか」
首を振ると、
「かわいそうだが、孤児の面倒を見ることはできねえ」
「ただ、ここメリルには自立した孤児のグループがあるんだ。これに入れば何とか暮らせるが、どうするよ」
孤児のグループがあることは知っていた。解体所で一緒だからだ。忙しくて、知り合うひまもなかったが、生きていくにはしかたない。
「お願いします」
「じゃあ、さっそくだが。ザッシュのグループと、セロのグループだ」
ザッシュは12歳になるところ。男子4人、女子2人。女子は解体所でも親切にしてくれた。
セロは10歳になるところだ。ほかに2人の兄妹がグループにいる。もとは1つのグループだったが、兄妹があまりになじめず、唯一コミュニケーションの取れたセロが、引き取ったと、噂できいた。幼い3人のグループは、やせてみすぼらしい。
「あー、葬式がおわったばかりだが、両親がなくなってあてがねえ。アーシュという。」
「よろしくお願いします」
「うちが引き取ろう」
ザッシュが言うが、私はなぜかセロのグループに引っ張られた。
「お前のグループはいまでもぎりぎりだろ。
オレにまかせろ」
私だって10歳より12歳がいい。
「い、や」
「マルが、めんど、う、みる」
ええー。マルって話ができなくて、グループ別れた原因と聞いたが。
「マルが、大丈夫なら、うちは引き取ってもいい。ザッシュの方が、安心だと思うけど。アーシュがマルを見てくれれば、オレたちももう少し働けるし」とセロがいう。
マルは私を離さない。年より小さめの私より、頭半分大きい。
「マルは、何歳なの?」
「マルは、7歳」
「私とおんなじだ」
マルは、薄汚れた顔で、ニッコリと笑った。
初めてのマルの笑顔に、周りがざわめいた。
私は、生まれた時から、日本という国で生きて死んだ記憶があった。3人の子育ても終わって、これからという時に死んだのだと思う。だからこそ、幼い両親を助けたかった。けれど小さい私の手は、大人を守るには小さすぎた。
もしかして、この小さい人たちなら。
こんな私でもそばにいてよいというなら。
少しでも記憶を生かせるかもしれない。
少しでも守れるかもしれない。
私はギルド長に、振り向き、言った。
「セロと、行きます」