アーシュ14歳4の月第1ダンジョン
帝国はメリダから西にあり、メリダ西の港町ニルムから船で2週間、帝国の東の港、シュレムに着きます。中央を囲んで北領、東領、南領があり、西側はフィンダリアという国に接しています。大使のアールは東領の侯爵、シュレム、ブルクハルトは東領にあります。
西、東がまた混じっていたので訂正しつつ、確認のため地理を書いておきます。わかりにくくてすみません。
スープはともかく、まずは宿の確保だ。ヨナスとクンツは軍の小さな支部があるのでそこへ、私たちは2つある宿屋の大きい方に泊まることにした。冒険者よりも材木などの商人の方が多い宿屋は、落ち着いた雰囲気であった。
宿を確保すると、さっそくギルドに向かった。小さい古い建物がそれだ。中年のくたびれた受付が2人と、ダンジョン帰りの冒険者が数人いるだけだった。それにしても活気がない。
「ノアさんが来た時もこうだった?」
「そう、やる気も出ないよね、これじゃ」
物品の販売も酒場もない。冒険者は魔石のみを受付に出し、お金をもらって町へと出て行く。
「このギルドの責任者はいるか」
グレッグさんが受付に行くと、
「2階へどうぞ」
と言われた。
「ヨナス、クンツは残れ」
「しかし!」
「ギルドは基本不可侵だ」
「そのような事聞いた事はありません」
「どちらがギルドの専門家か」
グレッグさんが静かに言う。
「……わかりました。ただし扉の前で待ちます」
ヨナスさんが折れた。グレッグさんのお守りは大変だなあ。こちらでは、ウィルとセロが、
「オレたちはダンジョン行ってもいいかなあ」
「夕方だからダメだ」
「ちょっとだけ」
「ダメだ」
とやっていた。私たちは注目を集めてはいたが、人数が多いので遠巻きにされているようだった。あ、比較的若くて元気そうな人がいる。
「すみません」
「な、何だ」
「お昼って、何持っていってます?」
「昼?パンくらいか、持っていかないか」
「飲み物は?」
「水筒に水を」
「お腹すいたりしない?」
「そんなに長くダンジョンにいやしねえよ」
「泊まったりしないの?」
「はあ?しねえよ」
「だれも?深い階層には?」
「そんなん行きやしねえ」
「ええ?これ、持ち運び用のクッキーなんだけど、食べる?はい」
「え、おう、今食べんのか、わかったよ、……うめえ」
「おいしい?じゃ残りあげる」
「ありがとな」
「お話ありがとね!」
私は走って戻ってきた。
「うーん、食べ物事情は悪そうだね、それから泊まりがけのアタックはしないみたい、痛っ」
「ウィルといい、アーシュといい!」
セロに頭をグリグリされた。痛い痛い。
「ここはメリダじゃないんだよ、慎重にいかないと!」
「あ、マルが勝手に外に」
「ウィル、止めろ!」
「ええ?」
「と、め、ろ」
「わかった」
ウィルがマルを連れ戻しに行く。ニコとブランはあきれ顔で、ノアさんたちはくすくす笑っている。
「セロが羊飼いだな」
「昔は夢見る少年でナイトだったのにな」
「姫じゃなくて子羊じゃしょうがないか」
すぐにギルド長が戻ってきた。
「明日からギルド内部のチェックをすることになった」
「え?そんな簡単でいいの?」
「むしろ関心を持ってもらえて嬉しいらしいぞ。何しろ職員5人しかいないって。ふう。お前らどうする?」
「俺はいつも通り町を回って見ます」
ダンが言った。私たちは?もちろん、
「「「ダンジョンに!」」」
「だよな」
次の日、ヨナスさんはグレッグさんに、クンツさんは冒険者組についてくることになった。C級冒険者の始まりだ。
アーシュ14歳、160cm、黒髪、琥珀のひとみ、赤いリボンはまだつけている。残念ながらもう大きくならないようだ。
マル14歳、170cm、金髪、みどりのひとみ。
セロ16歳、185cm、銀髪、アイスブルーのひとみ。
ウィル16歳、190cm、金髪、みどりのひとみ。
メリダ女子平均165cm。男子平均180cm。プラマイ5cmは平均のうち。みんな大きく育ってよかったな……。
ちなみにニコとブランはウィルくらい。セロも合わせて4人寄るとうっとおし、いや存在感がある。
「アーシュは見えにくいよな」
って平均だよ?マル、頭をなでないで?平気だから。
ギルドを見る限り、第1ダンジョンは普通に管理されているようだ。入ってみると、確かに魔物の数は多いが、涌きという程でもない。10階より下にはほとんど冒険者は行かないようだ。15階ほどを魔物を倒しつつ見て回り、一日目は帰ってきた。ついてきていたクンツさんの顔が引きつっていたような気がしたが、疲れたのだろうか。夕方、仕事が終わったギルド長たちと合流し、今日の成果の報告をした。ギルド長は言った。
「職員が5人しかいないと言うので不安に思っていたが、意外なことに業務にも問題なかったし、機能も正常だった。魔力持ちがいてマニュアル通りに動かしていた。問題といえば、魔力持ちの若い職員がおらず、引き継ぎが不安だということ。今の職員が魔力持ちなのは偶然らしい。また、ギルド職員の社会的地位が高くなく、なり手がいない」
テッドさんも言う。
「人材不足は、給料を上げるなりして対応可能だし、侯爵に頼めばなんとかなる。第2ダンジョンも確認してみないと何とも言えないが、つまり、問題は帝都のダンジョン限定ということになりそうなんだ」
「それってグレッグさんだけの力じゃどうしようもないんじゃ……」
セロが少し心配そうに言った。
「まあな、改革しに来たわけじゃねえし。東領はアールさんがいる限り大丈夫だろうし、帝都を確認したら北領のダンジョンにも行ってみたいが」
「北領は叔父の管轄ですから、私が頑張ってお話を通しましょう」
「カレンさん、よろしく頼む。ダンジョンはどうだった」
私たちは顔を見合わせた。ノアさんが代表で話す。
「冒険者の数の割に、魔物が少ない。メリダならばとっくに涌いている所だが、その気配もないんだ」
「少ない冒険者と釣り合ってるってとこか」
ギルド長が答える。
「私たちのペースで狩っていたら、ここの冒険者の狩場を荒らすことになるかもしれない。明日から4日、10階より下に潜って、魔物の発生率を確認してみたいのですが」
「俺はかまわん。ギルドにはまだ指導すべきところもあるしな。子羊も4日くらいなら慣れてんだろ」
「「「「はい」」」」
「ヨナスとクンツ、どうしますか」
「ヤツらなー」
ギルド長がため息をつく。
「正直、2人とも連れてってほしいんだが、ムリだろうな」
「じゃ、どちらかついてくるよう話して来ます。今日はだいぶショックを受けてたからな、4日耐えられるかな」
「魔物を殺すってのは、覚悟がいるからな」
その覚悟が、冒険者の誇りなのだ。
「ということで、どちらかついてくるか?」
ノアが聞くと、ヨナスとクンツは顔を見合わせた。
「私が行こう」
クンツが少し青い顔をして言った。
「野営は慣れているか」
「ダンジョンではないが」
「収納袋はあるか?」
「いや」
「じゃあ、これを貸すから全部入れて身軽に来いよ」
「わかった」
クンツはため息をついた。
「そんなに大変だったか?」
「ダンジョンなんて訓練の時にたまに入るくらいだろ。それも三階層くらい。それを、試しだからと15階までの往復、それも魔物を倒しつつだ。しかも魔物は魔石を取り出すだけでなく解体してすべて持ち帰る。メリダの冒険者は化物か」
「あのお嬢ちゃんたちもか」
「率先して解体していたよ。しかも、だれ一人本気を出していないような気がした」
「まさか」
「今回は俺が行く。第2では自分の目で見てこい」
「わかった」
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