アーシュ8歳5の月1週目
今日3話目です。
さて、料理をするにもお金がいる。
今までのように、好き勝手にお金を使っていては、材料さえ買えないのだ。
そこで、マリアとソフィーに料理を教えつつ、お金の管理の授業をすることにした。今まで好きに使っていたお金をみんなに出してもらい、三食自分たちで食べることを考えてもらった。
まずはマリアとソフィーから。6人分の一日の材料と、だいたいのお金を覚えてもらう。黒パンが男子3つ×4、女子2つ×2で16個。玉ねぎ、じゃがいも、ニンジンなど、基本野菜で400ギル。肉、干し肉、卵類で1000ギル。合わせて3000ギルだ。ザッシュたちの廃屋には、魔石のコンロやなべ包丁はあるとのこと。材料のみで済んでたすかった。
しばらくは、豆やジャム、燕麦などはこちらからわける。
基本の干し肉、豆、野菜スープと、卵サンドの作り方を教えた。朝はしばらく剣の稽古をお休みして、孤児全員分の朝ごはんを作りがてら、マリアとソフィーと、ついでにマルにも料理を教えた。一緒に昼のサンドも作る。豆の煮方も教える。
孤児みんなと師匠で朝ごはんを食べ、ザッシュはリハビリに女の子組へ、クリフは野良パーティへ、ニコとブラン、セロとウィルは荷物持ちへと別れる。
5の月はベリーの季節だ。いろいろなことがあるからといって、ベリーは待ってくれない。
「オレケガ人なのに」
「利き手は大丈夫でしょ」
などといいながら、ベリーをつみ、やおやのおばあちゃんにおさめ、残りは子どもたちでたべる。
「ケガが治っても、なるべく毎日取りに来て、毎日食べてね、7の日には、まとめてジャムを作ろうよ」
「いいの?」
「なんで?誰も取りに来ないもん」
そこからマリアとソフィーは解体所へ。ザッシュは私たちと飼葉やさんへ。
「よーう、ザッシュ、ヘマしたんだって?」
「あんまり言わないでくれよー」
「おまえは店番を手伝え」
「えー」
昼にみんなで野菜を仕入れ、解体所に行き、肉を削り、集合して夜ごはん。
これを5日続けて、7の日。
ギルドの一室を借りて、お金の授業だ。
黒板のようなものがあるので、それを使わせてもらった。
数字は、みんな生きるのに必要だから読める。
目で見せるのが一番だった。
なぜかギルド長もいる。
「まず、ケガをして迷惑をかけたな。今週、ごはんをみんなで食べて、どうだった?」
とザッシュ。
「串焼きとか食べれないのはちょっと残念だけど、毎食腹いっぱいなのがよかった」
「ダンジョンでも、前より疲れないんだよ」
「自由時間少ないけど、前より楽しい」
「こんだけたくさん食べるのに、お金どのくらいかかってると思う?」
「気になってたんだよ」
「セロたちに頼りっぱなしじゃないのか?」
「じゃあ、アーシュ先生、お話をお願いします」
「チビちゃんがか?」
「大丈夫か?」
チビじゃないって。少し小さいだけ。
「はーい。アーシュです。まず、収入からでーす」
「ザッシュはお休み、クリフは1日だいたい3000ギル稼ぎます」
拍手がおきる。クリフは片手を挙げて応える。
「次にニコとブランは、ふたり合わせて2000でーす」
また拍手。
「最後に、マリアとソフィーはふたり合わせて1200でーす」
「おー、そんなにか?」
「がんばったな」
拍手だ。
「みんな合わせると1日で?」
「「「「「「6200でーす」」」」」」
「ではマリアさん、ごはんのお金を発表してください」
「はい!パンが6人で1600ギル、お野菜400ギル、お肉、卵1000ギルです!」
「合わせるとー?」
「「「「「「3000ギルでーす」」」」」」
「「「「「「あれ?」」」」」」
「たりないんじゃないの?」
「あまってるよ?」
「マリア、今週の残ったお金見せてあげて?」
「ほら」
……15000ギル……
「「「「「「……」」」」」」
「ごはんはね、手間がかかるけど、手作りした方が安いんだよ。あとね、私たちはこれから大きくなるでしょ。パンと、お肉と、お野菜やベリーをしっかりたくさん取らないと、大きくなれないんだよ」
「肉は食べてたぞ?」
「肉は体を作るけど、体を元気に動かすのはパンなの。早く動かすには、野菜が必要なの。卵や豆は、お肉とおんなじだよ。肉だけだと、疲れやすくなかった?」
「「「確かに……」」」
「あと肉は高い!」
「「「……」」」
「では、セロ、ウィル、マル、お金の使い方、せーの」
「「「口座作ってー、半分いれてー、パンを買ったらー、残りをアーシュに」」」
「なんだよそれー」
「やっぱり尻にしかれてんだろ」
ギルド長口を出さないで!
「手元にあると、使っちゃうでしょ?だからギルドの口座に最初からいれておくの。ザッシュが復帰すれば、もっと楽になるよ。やりくりは、マリアとソフィーでするといいよ」
やってみよう!
来週からは、朝ごはんと昼ごはんのしたくだけ、一緒にすることにした。もちろん、ギルドを使わせてくれるよね?
「忙しい時期はダメだぞ」
はい!