アーシュ8歳5の月始まり
ザッシュたちは、冒険者として順調なスタートを切っていた。
もともと孤児のリーダーとして、責任感もあり、剣の腕もよかった。
しかし、しだいに顔色が悪くなり、ケガもおおくなっていった。私もマルも、ザッシュにも、マリアとソフィーの女の子組にもかわいがってもらっていたので、心配はしていたのだった。
「そこをあけろ!ケガ人だ!」
数人の男達が、運んできたのがザッシュだった。
普段ならなんともないモンスターに、フラついてやられたらしい。パーティのもうひとり、クリフが助けを呼んで、なんとか助かった。幸い、深い傷はなかった。
ギルドの医務室にいるということなので、次の朝、朝ごはんのなべをもっておみまいにいった。セロとウィルは、仕事なので帰りに寄るという。
「ザッシュ、どう?」
「アーシュ、マル」
ケガしているのに、なでてくれた。
「大丈夫だよ、なんかふらついただけ」
「顔色いまひとつだよ?ごはん食べて?」
「!いいのか!」
「多目に作ったから、クリフもマリアも食べて?」
ケガ人仕様として、今日は肉団子野菜スープにした。黒パンをうす切りにして、ジャムをつける。すごい勢いでなくなった。
「……うまい……これ、アーシュが作ったのか……」
「うん、料理はしてたから」
よく見ると、ザッシュとクリフは少しやせたようだった。
「冒険者は、荷物持ちより稼げるよね、食べれてないの?」
「確かに稼げるけど、稼いだ分は6人で分けてるから、前とおんなじくらいかな」
「ごはん増やしてる?」
「なんで?同じだよ」
「マリア、解体所で女の子も働いてるし、ニコとブランも荷物持ちしてるよね?」
「ザッシュたちが稼ぐようになって、みんなちょっといいもの食べてるから、お金すぐなくなる」
「いいもの?」
「屋台のものよ」
「料理は?」
「誰もしたことないもん」
とうちゃんたちとおんなじだ。冒険者になって、稼げるからぜいたくをする。余分なお金を持ったことないからすぐ使う。ケガをしたらすぐ貧乏になる。そして、セロたちと同じ、料理の経験がない。
ザッシュはリーダーで、世話しようと思うあまり、ほかの孤児を甘やかしてしまった。
「ザッシュ、クリフ、冒険者って、体力使うでしょ?」
「うん、今までよりずっと疲れる」
「じゃあ、その分、パンやお肉をいっぱい食べなきゃいけないんだよ」
「そうなのか」
「今までとおんなじだと、大きくならないし、やせちゃうよ」
「知らなかったよ」
「ねえ、アーシュ、私、ごはん作れるようになりたい」
「マリア!」
「なんだかよくないって思ってたの。でも、何がよくないか分からなくって……ザッシュたちどんどん顔色悪くなるし……」
「じゃあ、一緒にがんばろ?」
ザッシュたちの立て直しを請け負った。