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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
巣立つ子羊編

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135/307

アーシュ12歳7の月帝国組ダンジョンへ

さて、待望の6の日になった。


一行は中央ギルドに来ていた。


「コナーさんの東ギルドか、グレアムさんの西ギルドが気楽なのに」

私が言うと、ニコはニヤリとして、


「中央でいいんだ」

という。


今日はザッシュとクリフも来ている。


「お前らが面倒見てるのに、無視するのも子どもっぽいしな」


ということだ。冒険者登録を済ませると、とりあえず、ザッシュ組にエーベル、ニコ組にアロイス、そしてセロ組にテオドールと別れた。


「初心者だからな!ていねいに行くぞ」


と、ダンジョンに入った。


「うわっ、これがダンジョンか」

「気をつけろ。1階から魔物が出るぞ。ほら、きた」

「っ、なんだこれは」

「ゴブリンだ。人型だが人ではない。行け!」

「うっ、行きます!」


ザシュ!一閃で終わりだ。ゴブリンは肉は食べないので魔石のみ取り出す。


「アーシュ、マル、うっ、それ」

「大事なこと。次からはテオドールもやる」

「わ、わかった」


そうしてゆっくりと3階まで潜った。


「そろそろ休むか。ここが安全地帯だ」


荷物持ちなら知っていることをひとつずつていねいに教えていく。ただし、ウィルはちょっとじれていた。


「なあ、少しでいいからさ」

「しかたないなあ、テオドール、後ろからしっかりついてこいよ。アーシュ、頼めるか」

とセロが言う。


「任せて」

「な、なんだ?」

「ついてきて?」

「う、うん」


ウィルが飛び出した。


「な、なんだあれ……」

「ダンジョン入ったら、戦いたいものでしょ」

「すげぇ」

「メリダ語、上手になったね」

「な、なんだよ」


低層階の魔物などウィルの敵ではない。ていねいにと言っておきながら、みんなで一気に8階まで潜って戻ってきた。ギルドでは、ザッシュやニコがあきれながら待っていた。


「なあ、セロ、ウィル、お前らこんなやつらだったか?元気だけど慎重派だった頃のことしか覚えてないんだが」

とクリフがいう。


「こんな奴らに育っちゃったんですよ。けっこうおもしろい」

とブランが答えている。


ニコがセロとウィルの頭をつかんで言い聞かせている。


「な?オレ言ったよな、初心者だから慎重にって。だいたいお前らは無茶してアーシュに迷惑をかけたのをもう忘れたのか?アーシュに迷惑がかかると、マリアが怒るだろ?」

「「ふぁい、すみませんでした」」


『カッコわる!』

テオドールが、ニヤニヤ言った。


『誰のために戦闘を見せてやったと思ってるんだ?帝国語の悪口だってお前のおかげですっかりわかるんだからな、おい』

『なんだよ、自分が行きたかっただけじゃん』

『ああ?』


ウィルとはしゃいでいる。


「さ、魔石を出してきて」


私が声をかけると、


「アロイスとエーベルは?」

「待ってた」

「じゃ、行こうか」


パーティは等分が基本だが、今回は3階までの1人で倒しさばいた分を持たせた。


「1万ギルですね」

「ありがとう」

「口座に入れますか?」

「口座?」


戸惑っているので、助けに入る。


「新人なので口座を作ってください。1万のうち、9000を入れて、1000は手元に」


「はい、どうぞ。あなた、帝国の子?」

「はい」

ちゃんとメリダ語で答えている。


「じゃあ、帝国のギルドでも使えるからね。通貨は共通だし」

「帝国でも、使える?」

「そう」

「自分のお金」

「そうよ、あなたの働いたお金よ」

「ありがとう!」


受付の人はニコリと笑った。


さ、お金の話だ。


「テオドール、このお金で、パン何個買える?」

「え?1個?」

「黒パンが10個買えるんだよ」

「10個……」


ピンときてない。


「つまりね、メリダで冒険者になるってことは、自分で生活できるってこと」

「親に頼らずに……」

「そう」


「オレたちの小さい頃は、それで五日分だったね」

「他に何も食べるものなくてな」

セロとウィルが笑いながら話している。


「何言ってるんだ?」

テオドールが戸惑う。アロイスもエーベルもだ。


「あ?オレたちは孤児だからな」

「こじ」

『孤児』

「あー、え?親はいない?」

「そう」

「みんな?」

「だいたい」


「さ、話を戻すよ?テオドールはお金に困っていない。だから稼いだお金は貯金、いい?」

「貯金」

『貯金』

「ああ、はい」

『必要以外下ろさない。ないものと思って?そして親に内緒で大きなことをしたい時に、まとめて使えばいいの。わかった?』

「わかった」

「その1000ギルは、好きなことに使っていいから。アロイスもエーベルも」


「「「「串焼き!」」」」


「あれ、4人?ああ、マルか」


そこから帝国の3人は


「1000ギル残して貯金」


が習慣になったらしい。


それからはお休みの日はダンジョンに潜った。個別に3人教えた後は、3人でパーティを組ませ、交代で後ろから見守るようにした。見守らない残りの2組は、学院で少ししか潜れない分、真剣にアタックした。


中央ギルドでは、この間の涌きで活躍していたことも知られていて、1目置かれてもいた。最初若僧と見ていても、「あの涌きの」ですぐさま態度を改めるのだった。それだけダンジョンの外の涌きは危険なのだ。帝国の坊ちゃんたちも、遊びではないと分かれば、ましてメリダ語を話せるとあっては、歓迎しないわけがなかった。1度力が認められれば、中央は案外居心地の良いところだった。


そのうち学院に、リカルドさんとディーエが訪ねてきた。

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