アーシュ12歳4の月その後
「串焼きっ」
私ははっと起き上がった。
「串焼き食べなかった!先に食べちゃった?」
セロとウィルがあきれたように、ほっとしたように私を見ている。マルは、あれ?しょんぼりしている。
「ごめんね早く寝ちゃったから。串焼き食べれなかったね」
「違う」
「どうしたの?」
「アーシュ、ごめんなさい。ダンジョンで暴走して」
「あー、そうだったね、マルらしいよ」
「怒ってない?」
「怒ってないけど、危ないとは思った」
「危ない?」
「そう、昨日の私みたいに、ダンジョンで体力がきれたら」
「あ……」
「みんな体力あるけど、ダンジョンでは命がかかってるから」
「オレたちが止めなくちゃいけなかったのに」
「セロ」
「オレなんか兄ちゃんなのに、一緒になって暴走して。でも、本当に面白かったんだ。ダンジョンではいっつも慎重に行動してて、いつだって本気で全力を出すことは出来なくて」
「オレも、なんかいけると思ったんだ」
カチャ。
「反省がないようね」
「「「マリア!」」」
「マリア、おはよう、寝坊しちゃったかな」
「アーシュ、訓練には遅いかも。朝食には間に合うわよ、急いでね。セロ、ウィル、自分たちの部屋は?」
「あー、アーシュに謝ろうと思って」
「1晩いたわけ?」
「オレ、着替えてくる!」
「待て、オレも、アーシュ、串焼き今晩な!」
そうなのだ、シースから帰ってきたら、従業員宿舎が出来ており、私はマルと二人部屋、雑魚寝から卒業となったのだった。
「昨日はギルド長がアーシュを背負ってきてくれたのよ、後でお礼を言っておいてね」
「ギルド長が?」
なんかちょっとうれしい。
「それで昨日、セロたち怒られて大変だったのよ」
「主にマリアが怒った」
「マル!」
「ごめんなさい」
「冒険者なりたてで、休みたくないし、急いで支度しようか」
「うん!」
ギルドに入ると、なぜか二日酔いの人がいっぱいいた。
「よう、アーシュ」
「ギルド長、昨日はありがとうございました」
「体力つけろよ、お前は」
「はい!」
「セロ、ウィル、マル、わかってるな」
「「「はい!」」」
ギルドのみんなからも声をかけられる。
「よーう、セロ、無茶すんなよ」
「わかった」
「アーシュ、ムリするなよ」
「うん」
「ウィル、兄ちゃんだろ」
「いちおう」
「マル、突っ走るなよ」
「うー、はい」
では、本日は無理なく行ってきます!
今日はマルもちゃんと話を聞いていた。初心者らしく、3階までをていねいになぞって行く。
こんなふうにして一週間、ついにマルと2人でのアタックの許可が出た。パーティを組んでいても、まだランクが違いすぎる。私たちは甘えてしまうし、セロとウィルは、実力より低いところでの戦いになってしまう。追いつくのはまだまだ先だから、今はF級できちんと努力するのだ。
と思ったら、
「なあ、オレたちとパーティ組もうぜ」
「いや、コッチが先だろ」
とたくさん声がかかる。
「とりあえず、2人で勉強しろって言われてるから」
と言って断る。しかし、それももう一週間で許可が出た。
そして三週目からは、毎日のようにのらパーティを組んでダンジョンにもぐった。荷物持ちでも思っていたが、訓練しないまま冒険者になったものは多い。急がなくても、C級くらいにはなんとか上がれるのだ。時には味方も巻き込みそうなめちゃくちゃな攻撃でも、当たれば魔物は倒れる。
毎回違う実力のパーティを補助して戦うのは大変で、そして勉強になった。そしてマルのストレスがたまる。そんな時には、子羊でパーティをまた組んで、好きに戦う。
そして、4週目が終わると、
「さて、一ヶ月たちました。どこに行こうか?」
とセロが言った。
「はーい、オルド」
「はい、マル、まだダメ」
「何で?」
「まだ弱すぎる」
「むー」
「オレはナッシュ」
「なんでだ、ウィル」
「アーシュはさ、一ヶ月間、マルにつきあったわけだろ?」
「そうでもないよ」
「いつも人に合わせてるからな、だから魔法師が主役のダンジョンで、たまには無双しろ、つきあってやる」
「ウィル、お前が無双したいだけじゃないのか?」
「はは、まあな、行くか?」
「「「行こう!」」」
5の月は、ナッシュへ行くことになった。




