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この手の中を、守りたい  作者: カヤ
飛び出す子羊編

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116/307

アーシュ11歳12の月その後

今日は1話です。

そうして、あばら家からほど近くの一軒家を提示された私たちは、孤児を連れてお引越しだ。


子羊館の最初のように、飼葉やさんからわらを買い、一部屋に敷きつめる。荒い布を敷きつめ、わらの掛け布団をつくって寝床の完成だ。まだ寒いが、シースの暖かい冬なら、寄り添えば乗り越えられるだろう。


「みんな、わかるね?朝起きて、訓練して、働いて、ごはんを毎日作って、きちんと食べる。余ったらお金は貯めておく」

「セロ兄ちゃん、戻ってくるんだよね」

「ああ、必ず1度戻ってくる。そうしてみんなの訓練をしたら、また出かけるんだ」

「ずっといるわけにはいかないの」

「みんな、順番に大人になって、それぞれが旅立つんだ。お前も、冒険者になって、会いたくなったらメリルに来い。いつでも子羊館に泊めてやる。そして、またシースに戻ってくればいい」

「オレも、旅に出られる……」

「お金を稼ぐことは、自由になることなんだ」

「自由……」


「おばさん、1度メリルに戻ります」

「さみしくなるよ。あんたたちが子どもたちにしてくれたこと、忘れないよ」

「はは、すぐに戻ってくるから」

「ジェシカ、また遊んでね」

「また釣りがしたい」

「アーシュ、マル!うん、またね!」


12の月の2週目、私たちは新たな決意を胸に、メリルへの道を戻るのだった。メルシェまで3日、ギルド長に経緯を説明してメリルまでまた3日、季節はいつの間にか真冬へと変わっていた。


「長い旅だったなあ、お前ら、なに、お願いがある?」


帰ってきてすぐ、夕食後にみんなに集まってもらった。


「どうしたんだ、シースはいいとこだったろ」

「はい、ギルド長、とってもいいところでした」

「セロとウィルがね、『 親がいないのよ、妹を連れて冒険者だなんて、健気よね』って言われてて」

「ぷはっ、健気って、マジか」

「うん、ニコ、私たちも『 小さいのに、えらいな』って」

「ははっ、確かにちいさいよな」

「もう!そこじゃないよ!」

「魚がおいしい。釣りもした」

「ええ、釣り?おもしろかった?やったことないの」

「うん、ソフィ、グッてきて、エイッてする」

「わかんないわ」


「それでどうした」

「うん、それで、ギルド長」

「なんだ」

「今度のギルド長会議で、シースからメリルの子羊の要請が来ます」

「っ、もうそろそろ派遣をやめようと思っていたのに。お前ら大変だろ。それにシースは……」


「シースには、10人の孤児がいた」

「セロ、それは……」

「上の子は11歳、荷物持ちをして、みんなで寄り添って暮らしてた」

「食べるものは黒パン、住むところはあばら家」

「ウィル……」

「やせて、それでも明るくて」

「手助けせずには、いられなかったんだ」


「しかし、それとシースへの派遣はどう関わる」

「ギルド長、少しの間だけど、孤児たちに、生活の仕方を教えてきた」

「お前らの、あれか」

「はい、朝起きて、訓練して、働いて、料理して、しっかりたべて、お金を貯める」

「それはいいが」

「そして、ギルドでの荷物持ちの訓練の仕組みを作ってきた」

「!」

「シースではこの後朝食とランチの仕組みを作り、孤児をやとって、完全に自立させる」

「そういうことか!」

「シースへの派遣を条件に、孤児たちには家を用意させた」

「お前ら……」


「マリア、ソフィー、勝手に決めてごめんね」

「「アーシュ……」」

「今回は、私たち4人でなんとか……」

「バカねアーシュ」

「マリア?」

「私は行くわよ」

「ソフィー!」


「みんな私の出身、知っていたのね」

「「「「「……」」」」」

「ホントにバカね。私にはもう、家族がいるのよ」

「マリア?」

「おバカさんな妹が3人、鉄砲玉な弟みたいな子が3人王都に、少し頼りない弟がメリルに3人」

「3人?」

「3人よ、ニコ」

「オレは……?」


マリアはふふっと笑った。


「私はもう15歳なの。成人よ?それに、私が行かなくて、誰が孤児の勉強を見るのかしら」

「「「「マリア!」」」」

「マリアとソフィーが行くのなら、当然オレたちだっていくさ」

「「「「ブラン!」」」」

「マリア、オレは?」

「行くわよね?」

「そう、そうじゃなくて、オレ、マリア」

「ついてきてくれる?」

「っ、うん、いつだって、必ず」


「決まったようだな。本当にいいのか」

「できれば、アーシュたちが冒険者になる前に」

「では、来年、ギルド長会議から戻ってきてすぐにでいいな」

「「「はい!」」」


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