アーシュ11歳11の月シースにて
今日1話目です。
次の日、セロとウィルは、孤児の子たちを荷物持ちとして連れていった。兄に連れられた荷物持ちの妹の私たちは、ひそかに目立っていたようで、すぐに冒険者に拾ってもらえた。連れて行ってもらえたからには、もちろん活躍しますとも。結果喜んで毎日連れていくとおほめいただいた。思うところあって、お茶入れなど特別な事はしなかった。
何日かして、セロが、
「やっぱり満足に食べれてない。しかも荷物持ちの訓練も受けていないし、冒険者としてやっていくのは厳しいな」
といった。
「今日帰り、彼らのとこ寄ってくる。アーシュたちもくる?」
「「行く」」
荷物持ちの子に案内してもらうと、そこは確かにあばら家だった。
「でも馬やよりいいかも」
と思わず言ったら、
「馬やに住んでたの?」
「そう、わらの間に寝てたんだよ。結構暖かかった」
「ホントに孤児なんだね」
「うん?」
「セロがそう言ってたけど、孤児が旅なんかできないもん。嘘かと思ってた」
「そうかー」
夕ご飯は、やっぱり黒パンだった。携帯コンロで、いつもより少し薄めにスープをつくって出してあげたら、みんな大喜びだった。
「お料理は?」
「したことない」
「ご飯は?」
「パンとときどき干し肉。たまーに串焼き」
「串焼きおいしい」
「おいしいよね!」
マルと意気投合した。
「あのさ、お金って足りてる?」
「足りてるけど、たまに串焼き買うとなくなる」
「……やっぱり」
「ん?」
「ううん、何でも。毎日スープ、飲みたくない?」
「飲みたい!でもコンロないし、作り方もわからない」
「串焼き何回か我慢したら、コンロ買えるんだけどな」
「ホントに?」
「荷物持ち5回したら買えるよ」
「え!知らなかった」
「セロ」
「アーシュ」
「「見過ごせないよね」」
「なあ、俺たちな、孤児だけど、頑張って働いてお腹いっぱい食べられるようになって、冒険者になったんだ」
「自分で?」
「自分たちで。お前ら、来年冒険者になるのか?」
「なりたいけど、剣もないし、腕もない」
「ギルドで訓練してないのか」
「してくれるの?」
「頼めばしてくれるよ。剣は荷物持ち頑張れば買える」
「でもみんなを食わせないと」
「一番小さいの何歳だ?」
「7歳」
「働いてないのか」
「5人は働いてる。5人は小さいから……」
「「……」」
「みんなで働いて、ご飯たっぷり食べる気があるなら、手伝う」
「なんでそんなコトしてくれるの」
「オレたちもそうだったから」
「「「お願いします」」」
次の日から、立て直しが始まった。
「おばさん、しばらく夜ご飯と朝ごはん、なしでお願いします」
「孤児のとこ行くのかい、ご飯はどうするんだい?」
「子どもたちに材料を稼がせて、料理を教えようと思うの」
「おや、できるのかい?」
「簡単なスープなら」
「ほら、野菜の端っこを持って行きな」
「ありがとう!」
荷物持ちの子と、解体所で働く子以外、町を回ってお手伝いがないか探す。町の人も気にしてくれていたようで、港の手伝いや、やおやの手伝いがすぐ見つかった。
「なんであたしたちに相談しないのさ!」
「ジェシカ」
「一緒に遊ぶとかしかできないけど、手伝いも探してやれるよ!」
こうして遊び仲間も、時には孤児たちと一緒にアルバイトをしておこづかいを稼いだりして、活動に加わった。遊びでもいいのだ。施しではない。一緒に料理をしてご飯を食べることもある。
そして現物支給でもギルでもよいから、稼いだものを荷物持ちの子に集める。お料理をする人を決める。毎日スープを作る。ギルドに通って訓練をする。そうして2週間たった。
「さあ、どうなった?」
「毎日スープおいしい!」
「働いて疲れるけどお金もらえる!」
「串焼きないけどお腹いっぱいになる」
「訓練して、少し剣が振れるようになった!」
「じゃあ、君、残ったお金発表して?」
「1万2000ギル……」
「え!」
「そんなに?」
「なんで?」
「これでコンロと鍋が買えるよ。余ったら貯金して、剣の資金にしようか」
「はい!」
「ねえ、セロ」
「なに?」
「なんでさ、シースからランチの依頼、こなかったのかな」
「ひとつは、マリア」
「あー、うん」
「ひとつは、アーシュたちが大変だから」
「ギルド長が守ってくれてた」
「そう」
「来年は冒険者だから、忙しいよね」
「これるかどうか、わからないな」
「……」
「3の月までなら?」
「マリアの協力は期待できないぞ」
「マル?」
「マルはやる」
「オレもやる」
「ウィル!」
「オレだって!」
「やろうか」
「「「やろう!」」」
シースのギルド長と、交渉だ!




