アーシュ11歳8の月3週目クランにて
今日2話目です。
「アンタ、こうなっても静観かよ」
「ニコ君、子どものケンカだろ」
「ジュストさん、食堂のおばさんを連れてきてください」
「は?食堂のおばさん?セロ君、なんでまた」
「連れてきてください」
「っ、わかった」
私たちはクランの訓練所に向かう。隣にマルが、後ろにセロとウィル、ニコとブランがいる。お腹すいた。眠い。なんでこんなことになってるんだろう。
「ジュスト、どうした、食堂のおばさん連れて」
「団長!今日は早いですね。ちょっとゴタゴタがあって」
「あたしゃ忙しいんですよ、夕食の準備で」
「まあまあ、ちょっとですむんでね」
「へえ、ジュストが御機嫌とりか、珍しい、私も行こう」
「は、訓練?違うな、あの黒髪の子、うちの団員じゃないだろう、まずいな」
「荷物持ちを手伝ってもらってるんですよ。臨時に」
「だとしたらなおさらまずいだろう、相手はラスカか、現役の冒険者と荷物持ちじゃ勝負にならん、っ、始まった!」
訓練用の木剣を構える。ラスカの意気込みが伝わってくる。思い切り突っ込んでくる。剣を合わせて、左右に軽くさばいて行く。マルならこんなに無駄な動きはしない。セロならもっとすきを突いてくる。ウィルの剣は重い。
「アーシュ君、剣もできたのか。魔法なら1発だろうに。僕にはラスカが一見押してるように見えるが」
「全然相手にされてないぞ。ラスカの気合が空回りして、無駄な動きが多い。あっ、押し返され始めた、まずい、黒髪がおかしい!」
これがダンジョンなら?伊達に荷物持ちをしているわけじゃない。低層階なら行けるだろう。でも、オーガが複数で出てきたら?ラスカのこの無駄な動きは、味方を殺す。それならば、いらない、こんなやつ。
ダン!ダ、ダン!ラスカに踏み込む。ラスカが下がる。私の剣をさばき切れなくなる。今だ!ダン!カーン!ラスカの剣が飛び、ラスカが倒れる。とどめを!あ……
光が舞う。ひとつ、ふたつ、3つ、4つ、5つ、ああ、ウィルの光だ、声を合わせよう、
「「6つ、7つ、8つ、9つ、10!」」
「なんだこれは……」
「ライトの魔法だ。こんなにたくさん。あの二人か……」
「アーシュ」
「セロ」
行かなきゃ。話さなきゃいけないことがあるの。あれ、左にマルが、右にウィルがいる。
「セロ、リボンなくしたの」
「大丈夫。言ったろ?なくしてもはずしてもいい。オレがまた、つけるって。ほら」
「新しいリボンだ!でも、セロ……」
「いいよ、お休み」
「うん……」
疲れたんだよ。とっても眠いんだ。
「あ!倒れる、眠ったのか?」
「……」
「ジュストさん」
「あ、ああ」
「こいつらのランチ、見てますか」
「あ、屋台の、珍しいし、食べやすいからわざわざ買ってきてるのかと」
「わかってなかったのか」
「違うのか」
「おばさん」
「わ、わたしゃその子たちの分まで頼まれちゃいないからね、ろくに働きもしないでただ飯食ってさ」
「ランチを出してなかったのか!」
「だ、だってさ」
「アンタが見てないとこでは、食事もろくに出してなかったよ。オレらはいつでも食料は持ち歩いてるし、学院に帰れば食事は出る。それでなんとかなってたんだ。無理やり連れてこられて、ギリギリまで働かされて、食事もろくに出ない」
「部屋のシーツはずっと同じ。お風呂にも入っちゃダメだって」
「な!ラスカには面倒を見るようにと」
「同室の子みたいに、夜の訓練もしない、チャラチャラして男に構ってもらってるって」
「夜はスープの開発だろう!昼間だってずっとダンジョンに潜って働いて」
「それを誰に言ってくれたんだよ」
「いや、当然知ってるだろ……」
「外から見たら、いきなり知らないやつ連れてきて、チヤホヤしてるようにしか見えないんだよ」
「僕は、ただ、若い子たちが、クランに入ってるだけで天狗になってて、メリルの子羊たちならそれをなんとかしてくれるかと……」
「自分たちでしろよ!」
「セロ君……」
「こいつまだ11歳なんだぞ!一日中引きずり回して、ご飯もろくにくれないで、夜9時過ぎまで働かせて!」
「9時は普通だろ……」
「こいつは5時に起きて訓練してんだよ!アンタんとこの若い奴らと違ってな!」




