現状の打破について 3
更新が遅れてしまい申し訳ありません。
区切りがいいので少し短めですが投稿させていただきます。
お昼時とはいえ、学校の端に位置する図書館は静かだった。もともと利用者があまりいないというのもあるが、図書館はもとより静かに読書や勉学に励む場である。一部目的が違う人たち(優雨親衛隊)てもその静寂が破られることはない。空調がしっかりと聞いているのだろう、暖かく除湿された図書館に着くなり我知らず一息ついた。
カウンターを回り奥へ行くと、見知った部屋に通される。図書委員がいつも活動している部屋だ。机には書きかけのポップに、まだ読書企画の提案書、誰のものかわからない詩集が乱雑に置いてある。外が寒かったせいだろうか、体感温度は空調の設定温度よりも高い。部屋に着くなり借り物のマフラーを脱いだ。
「ありがとう、これ洗って返しても大丈夫?」
「ん、今日も付けて帰るからいいよ。頂戴」
確かにマフラーは日常的に使うものなので、ないと不便だろう。首元を寛げるには、この冬は寒すぎる。
本人の言葉に甘え、マフラーをささっと畳んでかえす。受け取った本人は、まだ寒いのだろうか、マフラーを自身に巻き直した。
ちょっと待ってて、そう言われ彼が奥から運んできたのは暖かそうに湯気を立てるお茶だった。身体はもう暖かかったが、ここは好意に素直に甘えるとしよう。お茶を啜ると、またこれが美味しかった。
妖精が直々に淹れたお茶を飲むとか...親衛隊に知られたら裏庭にある薔薇の下に埋められてしまうかもしれない。
「ねえ、」
そんな取り留めのない思考をふいに中断されて、思わず返事が遅れる。なんですかと返せば、彼はふと部屋の一角を指で指した。
「.........」
視線を滑らせたその先にあったものは、本、本、本。
「...よろしく」
「......はい」
人手が足りない、というのはどうやら本当らしい。
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一方その頃、柚木を探していた佳枝は図書館に入って行く柚木と遠藤優雨をみてひとまずその所在に安堵し、また一人首をかしげた。
それもそのはず、図書館の妖精こと遠藤優雨は人前にあまり姿を現さないのはもちろんのこと、誰かと接触を取るというのも非常に稀であった。そんな彼が、どうして親友とともにいるのか。親友の首元に居座るマフラーには見覚えがあった。まさか彼が、彼女に自身のマフラーを貸し上げたというのか。
「まーた面倒なやつにひっかかって...」
思わず溜息をついた自分は悪くはないはずだ。ただえさえ高橋絡みで柊澤の親衛隊に目をつけられているというのに、今度は図書館の妖精の親衛隊に目をつけられかねない。
「......考えても仕方ない、か...」
図書館にくるりと背を向けて歩き出す。本人には後でそれとなく言っておこう。いまはきっと、その時ではない。
優しくて頭もいいのに、一等不器用な彼女は誰と連もうが自分の信頼する親友に相変わりない。それだけで十分だ。自分にできることは、彼女に助言することと、そばにいることだけ。
緩やかな足取りは、確かに力強くなって行く。問題も解決したことだ、早く残りの弁当を食べなければ午後の授業なんて受けていられない。
キーンコーンカーン、コーン
「...お弁当食べ終わってない」
やはりあの親友には一言申さねばあるまい。