都会に降りたって一瞬で迷う。
期待と不安が入りまじる4月…。
私、如月 藍は今日から高校生になる!
しかも、制服が超絶かわいい都会の高校生!
地元の小中高一貫校から転入という形で受験したが、合格が決まっても家族や友達には入学手続きをするギリギリまで反対されていた。
通学が電車で3時間もかかってしまうことと、あまり頭がよろしくない私では入学はできても、都会の学校の勉強にはきっとついていけないから…という理由らしい。
…通学は私が早起きすればいいだけだけど、学力については何も言い返せなかったのが自分でも情けない。
結局、だだをこねる私に根負けしたみんなは今朝、初登校に快く送り出してくれた。
そして、今に至る。
「……ここ、どこだろう…」
携帯のナビと、学校から送られてきた地図を両手に持ち、私は途方に暮れていた。
駅からナビと地図を頼りに歩いてきたけど、見えてくるはずの建物が見えてこない…なぜ…。
「このままじゃ遅刻しちゃう…でもタクシーとか乗るお金なんてないし…どうしよう…」
…………。
都会でこれをするのは恥ずかしさがあるけど…
「…よし、人に聞いてみよう!」
恥ずかしいのなんのと言っている場合じゃない。
入学初日の遅刻はなんとしても避けないと!
都会人ってだけで怖いけど、なるべく親切そうな人を探してみる。
…
……
………
あ!
あの人なら声かけれそうかも!
「あ、あの!
ちょっと今、いいですか!?」
意を決して声をかけたのは24、5くらいかな?なスーツを着た長身お兄さん。
決め手はスーツがチェック柄でかわいかったから!
私がいきなり視界に入ったからかお兄さんが驚いた顔で私を見下ろす。
しかも…返答の気配がない。
め、めげない。
「あの、お聞きしたいことがあるんですけど…今お時間いいですか!!」
知らない人に声かけるとか超恥ずかしいけど…何度も言いますが遅刻を避けるためにはもうそんなのにかまってられない!
「…ええ、大丈夫ですよ。」
「!
ありがとうございます!」
見た目より落ち着いた喋り口調、声の雰囲気に少し驚いたけど、話を聞いてくれるみたいで良かった。
「青城学園という学校を探しているんですけど、道に迷ってしまって…
ここからどうやって行けるかご存知ですか?」
…失礼な言い方じゃないよね?
いきなりキレたりとかないよね?
「あー…
知ってますよ。
…良かったら案内しましょうか?」
「え!」
な、ななななんと!
神様みたいな言葉聞こえたけど!!
わざわざ案内してくれるなんて…なんていい人なんだろう!
「ぜひお願いします!」
私は藁にもすがる思いでつい、即答してしまった。