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9.『芸術家クラブ』のよからぬたくらみ

侯爵の過去についてはまだ思索中…。

裏暗い過去にしたい。

ミカエルの問いかけにヴェーラがハッとした顔をする。

「あ・・・そういえば、侯爵は結婚してないの。女好きで通ってる割に妻はいないのよ。

そういえば・・・喰われているのも人妻やら恋人がいる人ばっか…人の女専門ってとこかな?」

ヴェーラも不思議そうに呟く。

「それは、男女。うるさいかみさんなんて迎えたら自分を牢獄に自らつなぐようなもんだ。

そして・・・人妻好きはいるだろう普通に。人の女を寝取る背徳感、アブノーマルな魅力に惹かれるのよ。」 

馬鹿にしたような目でマルクスは宣う。

「うるさい、黙れ。この不潔男!お子ちゃまの癖して生意気なのよ!」

「なんだとぉっ。」

応酬を始める二人の傍でダフネンは考え込む。

「侯爵はゲイなのかも…それをごまかす為に人妻と浮名を流しているんじゃあ?」

「ダフネン、あんた賢いわね。確かに・・・そういうのも有りか・・・。」

妙に納得してしまうヴェーラ。

「もしそうだとしたら面白いな。」

ニヤニヤするマルクス。

「いや、でも!…でももし侯爵がただの女嫌いなら、わざわざ面倒な人妻と関係を結ぶ必要はない…ね。」

ダフネンは髪の気をグシャリと握りつぶした。

「…わからないなぁ。」

「…処女と関係を結ぶってのも面倒なんだぜ。人妻のがあっけらかんとしてる。」

マルクスが偉そうにのたまった。

「…あんた、おこちゃまの癖してどうしてそんなこと知ってるのよ?あんた…もしかして、人様の奥様を喰ったの????」

目を丸くして問い返すヴェーラにマルクスは一言。

「お前には教えない。」

「…なっ。」

ベルナールはミカエルに話しかける。

「…案外侯爵ってのはただ単にサディストって気もしなくはないよな。信じて身を任せた女の裏切られる顔が見たくて仕方ない…とか。」

それを聞いたミカエルは彫像のように固まってしまった。

「…す、スザンナ…。」

その様子を見てベルナールはおいおい、と笑った。

そのままうーん、とミカエルは何やら考え込んでしまった。

「何を考えているんですか?」

怪訝な顔でダフネンはミカエルを見る。

「ねぇ、ミカエル・・・。何考えてるの?」

ルイッツァがミカエルの肩をポンポン叩いた。

「ああ・・・ルイッツァなんか俺、閃いた気がする・・・。」

その目はヒタとルイッツァに向けられていた。

「侯爵の愛人になってくれ。」

ん?と皆顔を見合わせた。

「はいいぃっ?」

ルイッツァは奇声をあげた。

まさかミカエルにそんなことを言われるとは思わなかったらしい。

「あんた、侯爵の回し者なの?」

ギロリとミカエルを睨みつけるルイッツァ。

「あの、エロじじいの恋人!?

冗談じゃないわよ!ねぇ、ミカエルあんたギルを救えないから諦めて侯爵と仲良くしようとかそういう腹積もりなの?」

ミカエルはルイッツァに迫られて体を仰け反らせた。

彼はルイッツァの勢いに気圧されたようにたじたじになって答える。

「・・・なんでそうなる?大体なんで侯爵と仲良くせにゃならん?

俺が言ってるのは・・・フリをしてくれってことだ・・・。」

「ああ゛?何のために?」

ルイッツァは何かを射殺すような視線をミカエルに向ける。

眉間には深い皺が刻まれている。

「ひ・・・ギルバートよ、君は随分怖い女を嫁にするつもりなんだなぁ。(ボソ)」

「何か言った?」

「なんでもない・・・。君にフリをして欲しいと言ったね・・・。

それは、粗探しして侯爵を脅すためだ・・・。

君は侯爵の周囲に気を配って欲しい。

そして侯爵の過去を探ったり、粗探しをするんだ。

それを我々は粋な方法で表現しよう。」

ミカエルは茶目っ気たっぷりに目を細めた。

ニヤリ口の端が持ち上がっている。

「我々に最も相応しい方法でギルを釈放させようじゃないか。

だがこれは侯爵のような陰湿さをもってではない・・・。」

「もったいぶらずに言えや。」

しびれを切らしたマルクスは催促する。

「・・・劇だ。我々『芸術家クラブ』には必要な者すべてが揃っている。」

「なるほどなぁ・・・それくらいしか今の俺らに出来ることってないよな。」

マルクスはフムフムと頷く。

「・・・俺らには人脈もある。今日は『ある変身の物語』の上演で来てないが街一番の麗しきアデリーヌ嬢もいるし、そのお相手役で名高いアントニオもいる。彼らが所属する劇団員を引き抜けるし、ジョセッペは私たちに金をくれるだろう。君たちの中ではダフネンとマルクスあたりで原稿は仕上げられるし、私は音楽家だ。舞台のセットは建築家のベルナールがやればいい・・・これで絵描きのギルがいれば最高なのだが。バレリーナのヴェーラは仲間を呼び寄せられるし・・・選り取りみどりだ。出来ない事は無い!」

ミカエルはそう言いつつ希望が湧いてきたようで顔を明るくした。

「ギルを侯爵から救い出せるかもしれないぞ!」

ダフネンは訝しげに問う。

「劇と・・・復讐・・・?つまり、侯爵の粗探しで出てきた過去のホコリを

劇にして大衆に見せるってことでいいんですか・・・?

でも、本当に侯爵に探られてそれ程困るような不名誉な過去なんてあるんですかね?

それに、第一侯爵の過去なんてバラしたらそれこそギルの首が飛ぶし

探らせるって言ったって・・・本当にルイッツァさんが手ぇ出されたらどうするんです?」

ミカエルはふふんと笑った。自分の考えにご満悦な様子である。

「うーん。ダフネン。侯爵の女嫌いは仮説であるに過ぎないし大それた過去があるのかも分からない。それらはカンでしかないのだが・・・確かに言えることは、侯爵は歪んだ人物であるということだ。そういった人物は曰くつきの過去を抱えていたり、人に知られたくない秘密があるような気がする・・・のだ。そういった過去があってこその今の彼というわけだ。それに劇をするにしても実名なんて出さないさ。彼の役は完全に匿名で、周りの人物はそれとなく似たような名前をつけることで弱みを握っているぞというアピールをするのだ。

ギルを開放しなかったら今度はその秘密を実名でばらまいてやるって言えばいい。」

「なるほど・・・やってみる価値はありそうだよなぁ・・・。」

マルクスはケケケ・・・と楽しそうに笑う。

「腕が疼く・・・最高の舞台だ!」

ベルナールも何かを想像して楽しんでいるようだ。

「まぁ・・・侯爵が清廉潔白な人物・・・ということはないだろう・・・。

何かしら薄暗い部分は人間だからある筈・・・だ。そう信じたいな・・・。」

ミカエルはそう零すとルイッツァ、と呼びかけた。

「君は多分大丈夫・・・気が強・・・いや、芯の強い人だろう?ミイラ取りがミイラになるということは・・・ない・・・よな?出来るだろう?ギルのために。残念ながら権力のない弱い我々

が出来ることはこの程度なのだが・・・。そして侯爵にそんな大それた秘密がなかったらそれすらも出来ないのだが・・・協力してくれるかい?」


…変人・奇人を意識してどんどん変な奴を追加していきたい…。

ストック切れたら暫く、更新停止します。

読んでくれてありがとうございます(#^.^#)

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