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7.『芸術家クラブ』の諸君

ストック切れるまでは投稿…。

 「…そんなこんなで我々の友、ギルバートがいけ好かない侯爵を殴ってしょっぴかれたぞ・・・。まったく、しょっぴかれる時のあいつの惨めそうな顔ときたら…。

『芸術家クラブ』の諸君、どうにかならないものだろうか?・・・」

ブチ切れたミカエルの声が広めの部屋に響き渡る。

「侯爵の最低野郎め!」

ギルバートを連れて行かれた恨み、スザンナを奪われたという仮定の怒りを載せその声は高らかに響く。

「そうはいっても・・・。」

「あいつ取り敢えず領主だぜ?」

「権力、金を握って北叟笑んでる奴をどうするのさ・・・。」

彼はミカエルとルイッツァは裕福な商人ジョセッペが『芸術家クラブ』に提供している部屋にいる。

金持ちは芸術家を集めサロンを開き時には才能ある芸術人の後ろ盾になったりする。

それは個人の趣味を高めるためというなんとも優雅な理由であったり、商売の為であったり様々だが芸術家にとっても悪い話では無い。このクラブではない別のサロンでは時々芸術家同士がパトロンの寵愛を争ったりもする話を聞く。しかしこの『芸術家クラブ』の人々の仲は比較的良好だ。ジョセッペが芸術家達を引き抜いたのではなく、元々気の合う人々の集団である『芸術家クラブ』にジョセッペが後援を申し込んで来たこと、得意とする役割がダブっておらず各自領分を犯されることがないこと、そしてあまり人数も多いわけではないことが仲を良好に保つのに一役買っている。

「まさかギルバートがあんな暴力的なことするとは思わなかったよ。」

ベルナールがぼやいた。彼は建築家の卵である。

黒髪のラテン系の男で目鼻立ちが濃い。

彼はやれやれと天を仰ぐ。

涙目のルイッツァが呻いた。

「・・・私のために・・・ギルバートがあんな・・・助けてちょうだい。どうしよう?

まさか死刑なんてないわよね?」

彼女は『芸術家クラブ』のメンバーというわけではないが

ギルバート繋がりの顔見知りなのだ。

「ルイッツァ・・・泣かないで。なんとかあの侯爵の鼻を明かしてやんなきゃ!

流石に死刑は・・・どうだろう?ないとは思うけど・・・。」

そう言ったのはバレリーナのヴェーラである。

栗色の巻き毛がフワフワと柔らかそうな美しい女だ。

しかし心もち猫目のようにつり上がった緑の瞳やしっかり引き結ばれた口元はかなり気が強そうな印象を受ける。

彼女の鼻息が少しだけ荒いのは彼女が侯爵に喰われた一人だからである。

「あの口だけの色魔がルイッツァに手ぇ出すなんて・・・ああ、後金があったんだっけか?」

寝た後に金投げつけられたのにはカチンときたぜ、と生々しいことをヴェーラが言って

皆をドン引かせる。

「・・・あまりあからさまに言わないで下さいよ、ヴェーラさん。」

嗜めたのは色素が薄いプラチナブロンドの少年ダフネン・・・脚本の勉強をしている。

その見た目はアプロディテの息子エロースやアプロディテの寵童アドニスのようだ。

皆に可愛がられる弟分だ。

純情そうなその顔をほんのり赤くしている。

「だってぇ、むかつくんだもん。あいつ口は上手いから熱に浮かされて一発やるじゃん?」

「やらねぇよ。唯のオヤジじゃん。趣味悪ぃ。」

赤い髪が少し突っ立ってる乱暴そうな風貌の男が突っ込んだ。

「・・・うっさい黙れ。

マルクスに女心なんて理解してもらおうとか思ってないから。」

そう言ってヴェーラはわざとらしく鼻を鳴らした。

「なんだと?大体オメェは男だろうが!

その男が男に組み敷かれるんだぜ。あー、キモいな。想像するだけで。

ああ、でもそんなお前にもお前が好きだとかいう奇特な恋人がいたよな、そういえば。

どーせフラレたんだろ!最近話聞かないもんな!ざまあみろ!」

「・・・殺す、お前、殺す。」

「やってみろよ、男女。」

「貧困ボキャブラリーの馬鹿!」

「馬鹿って言った奴が馬鹿だ。・・・まぁ、いいさ。

じゃあ俺は馬鹿、お前は脳タリンの阿呆だ。」

因みにこの口汚い赤毛の男・・・マルクスは詩人だ。

ヴェーラに対しては何時も残念な男だと皆思っていた。

「ヴェーラに突っかかるなよ。マルクス。お前の悪い癖だ。」

ミカエルは溜息をつくとヴェーラに続きを促した。

「・・・やる・・・じゃない?って憐れむような目を向けるな、マルクス!

それまでは情熱的に口説いたりするんだけど、終わったあとは氷のように冷たくなるの。」

「それはギルも言ってたな・・・。」

ミカエルはフウムと唸る。

「・・・そりゃあ、出来るだけ戦績を残そうと頑張ってるんだから

獲物を捉えた後はどうでもいいんじゃねぇか?お前も馬鹿だなぁ。」

鬼の首でも取ったかのように、妙にドヤ顔で嬉しそうなマルクス。

「…男女の癖にそういうとこだけは無駄に乙女で。クククク・・・。

プククク…だ、騙されてやんの…アーハッハッハ!」

わざとらしい程神経を逆撫でにする笑い声だった。

「死ねぇ、マルクスッ!」

マルクスに襲いかかろうとする。ヴェーラを止めるベルナール。

「ああ、もうお二人さん。イチャイチャするなよ。

問題が解決するのが先決なんだから。」

幾分皮肉っぽく言う。

「・・・誰がお前なんかとイチャイチャなんて・・・。」

「俺だって、お前なんと・・・。」

二人共ぷいっと顔を背けてしまう。

なんだかんだ言いながらこの二人は良い喧嘩友達なのである。

ベルナールは不思議そうに顎に手をやった。

「ところで・・・その侯爵・・・どうして冷たい態度をとるんだろうな?

女を喰って楽しむ・・・その動機は?」

「楽しい、気持ちいい・・・それで十分だろ?

動機なんかねぇだろうよ。というか、いちいち考えてそんな関係になるのかよ

お前は?」

マルクスは投げやりに言う。

「・・・下品、最低。」

「ヴェーラ。同感だ。

ベルナール、単細胞なマルクスはいいから君の考えを聞かせてくれ。」

ミカエルは若干顔をしかめた。

「なんだと、ミカエル!」

「ああ、いいから、いいからマルクス・・・

ミカエル、君は一緒に寝た女に金渡したりして邪険にするかね?

君の元恋人スザンナだが・・・君は彼女を憎いと思ったことは?

例えばそうだな・・・彼女を抱いた時とかはどうだ?

不躾な質問で申し訳ないが・・・ゴホンッ。

彼女をどう感じた?憎かったか?女ってこんなもんかって

幻滅した?・・・憎しみを抱いたかい?

幻想を破られて・・・?」


読んでくれてありがとうございます。

まだメンバーはいる模様。


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