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6.ギル、まずい。その人は仮にも侯爵だ。

殴り回。ギルバートは自分の職業に誇りを持っているけど、

その一方社会的ステータスがないことへのコンプレックスも…。

なにより恋人が大好きなんです。

…普段静かな奴ほどキレたら何をするか分かりませんね。

歓声と口笛、拍手が沸き起こる、今日一番の拍手が。

やはり観客はこの曲が一番好きらしい。

「良かった!やっぱりこの曲はノリがいい!」

「また、こんな曲を作ってくれ!」

口々に囃す観客は興奮冷めやらぬといった感じだ。

彼の最新作は『絶望のアリア』ですよ、とギルバートは思わずツッコミたくなった。

見れば傍らの男がクスクス笑っていた。

「あの先生・・・いつか幸せになれればいいよな。新しい恋でもして。」

「ですよね・・・まだあんな若いのに恋を失って老け込んだ気がしますよ・・・。

ただでさえ元々陰気臭いのに目も当てられません・・・。」

「お前、あの先生の友達だろう?時々見かけるが俺と話したことはないな。」

「ええ・・・俺は絵描きのギルバートと呼ばれています。貴方は?」

「俺は酒飲みのフェレトルン、だ。仕事は酒飲んで暮らす!以上だ!」

「金持ちなんですねぇ・・・。」

「まぁ、親が持ってた劇場を受け継いでな。劇団に貸出してるわけだ。

金は入ってくるな。黙ってても。」

このドラ息子が・・・と溜息が思わず出てしまうギルバートだった。

「・・・羨ましい。絵は金銭的には波があって生活はカツカツですよ。」

苦笑いを零すギルバートを見てフェレトルンは豪快にガハハと笑った。

「自信作があったら持ってこいよ。買ってやるよ!

それにしても先生は放心状態だな・・・。」

フェレトルンの指摘通り友人はなにか大きなことを

成し得た後の魂が抜けたような顔をしていた。

よくやった、と後で彼の肩を叩いてやろうとギルバートは思った。

視線をずらすと観客の様子を嬉しげに眺めるルイッツァの顔が目に入る。上気し頬は子供のように真っ赤だった。

リンゴのような頬っぺだ。無垢で純情な彼女に相応しい、美しさ。

拍手を一身に受ける彼女を眩しく思った。俺のスザンナ、と彼は心でつぶやいた。

そうして彼が感極まって彼女を見つめていると後ろから無粋な声がした。

「おお、私のスザンナ殿。見事だったぞ。」

壮年に差し掛かった、彼が幾度か肖像画で見たことがある人物・・・侯爵だった。

顔はスッキリと整っておりやや酷薄そうな唇が印象的だ。鼻の下には見事な髭がたくわえられている。その様子を見た観客はあの、侯爵が・・・とか、今度はルイッツァを?

などと口々に噂し始めステージの様子を伺う。一部は野次馬のように侯爵についていく。

侯爵は彼を通り過ぎステージのスザンナに近づくとその顔を彼女の耳元に寄せる。

「・・・どうだい?今日、私のベットは空っぽなんだ。君が相手をしてくれないか?

・・・その白い繊手で私をなぞってほしいのだ。」

その言葉はステージの目の前にいるギルバートにはっきり聞こえた。

片やミカエルは侯爵を凝視してしまう。こいつがスザンナを俺から奪ったのだろうか?

こんな風に口説いて・・・という疑念に囚われてその目を離せない。

「こ、侯爵様・・・。」

ルイッツァは居心地悪げに呟くと身を捩りソロリと侯爵から離れようとする。

その様子がギルバートの怒りに更に火を注ぎ気づけばステージに怒鳴り込んでいた。

「お、おいっ!」と彼を制止しようと声を上げるフェレトルンの声を振り切って。

こんなにあからさまに口説かれているとは思いもしなかった彼はすっかり頭に血が登っていたのだ。彼女をかばうようにして立つとギロリと侯爵を睨みつける。

「彼女は俺の恋人です。卑猥な言葉をかけないでいただきたい!」

ホウ、と嘲るような声でギルバートを品定めするように見た侯爵は

「・・・おやおや、これが君の恋人なのか?君も趣味が悪いことだ。

・・・ほれ、絵の具がついておるぞ?ほら、ここだ。」

侯爵は作業着についた、落ちきらなかった絵の具の痕を指差す。

だが、貧乏な絵描きが時に汚れた服を着ていることはよくあることだ。

それを揶揄するのは自分のステータス誇示に他ならない。

「・・・こんな男止めて私のところに来ればいいのに。・・・少なくとも私の方が甲斐性はあるな。」

馬鹿にしたような声で侯爵は宣もうた。その目はなんとも冷たい。

その刹那、ギルバートの脳裏はカッと赤い光が閃いた。刺すような光で、その名

は怒りという単純なくくりに収まるのであろうかと思えるほど激しいものだった。

「・・・貴様・・・今俺を馬鹿にしたな?馬鹿にしただろう!」

友人のただならぬ怒りを感じミカエルが寄ってきた時にはもう遅かった。

ガツンッと音を立てて横様に侯爵が倒れた。

ギルバートは侯爵を力いっぱい殴ったのだ。

野次馬は各々わけのわからないうめき声を上げている。

「嘘…だろ。」

フェレトルンが呻いた。

「・・・ギル、まずい。その人は仮にも侯爵だ。」

ミカエルは信じられない!といった風に目を丸くしている。

普段温厚で人を殴ったことのないような男が人を殴ったのだから当然だ。

見ればルイッツァも顔を真っ青にして彼を見ている。

「やってしまったな。」

正気に戻ったギルバートは呻いた。



ギルバートはひとまずメインから退場…。

新しいキャラを出していけたらなと思います…。


…作者は学校のレポート書かねばならぬ。悲しい。すごく…悲しい。不定期更新です…ゴメンナサイ。

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