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4.哲学者の黒歴史

キリが悪いのでここまで投稿しようと思います…。

俄かにテンションが下がってしまったギルバートである。

「・・・お前、余裕そうだったのにどうしたんだ?」

「・・・なんだか侯爵のことを思い出すとやばいんじゃないかと思い始めてな・・・。

なんだか最初は平気だと思っていたのだが・・・。ルイッツァはふられない限りは俺の傍にいる自信はあるんだけど・・・あんな評判を引っさげてる侯爵に今だに落ちる女がいるんだ。なんだかんだ言って彼は最強のテクニシャンってわけだ…女にかけて…。」

はああ、と息を吐きだしギルバートは頭を抱えた。

「俺、『ヘレネの略奪』を近日中に仕上げなきゃいけなくて、だから恋人の部屋にまでわざわざ持ち込んでいるのに。・・・余計なことしている暇今は無い!あの侯爵を阻止する時間が惜しい。」

「お前のムカツキの行方が分からない。時間を乱されていることへの不満?

恋人に手を出されれるかもしれない苛立ちへの不満か?

それに大体時間が惜しいならわざわざ恋人に会わなきゃいいじゃないか。」

「不満なら両方だ。それにルイッツァに会うのは絵に関しても悪いことじゃないさ。

彼女はお前の言うところのインスピレーションの源だ。」

「・・・ただ単に会いたいだけだと言え。兎に角お前、俺みたいにルイッツァにふられなきゃいいよな。」

「俺は、お前より愛されてるさ。」

フンとミカエルは鼻を鳴らした。

「・・・愛なんて気紛れさ。いつだってふとした瞬間に醒めて何も残らん。

気をつけろよ。じゃなきゃ俺の二の舞だ。

俺はお前が無様な泣きっ面晒すのは見たくないからな。俺に協力出来ることがあれば言え。」

「・・・ありがとよ。お前ってクールだよな。」

「・・・そうか?醒め易いが素晴らしい、それが愛だ。真実だろう?」

「・・・お前頭でっかちだよ。絶対。」

「あんた達、何話し込んでんのよ?絵の具取りやすいように何枚かおしぼりとってきてやったわ。」

ルイッツァが部屋に戻ってきた。そしてギルバートの傍にくると、

その髪やその他の箇所を拭っていく。ミカエルの射殺さんばかりの視線をギルバートは感じた。

「ほら、ミカエル。あんたも少しその煤けた感じの服でも綺麗にしたら?」

彼女はポイッとおしぼりをミカエルの方に投げる。

「・・・古いんであって、汚くはない。」

ミカエルは若干頬を赤くした。

「・・・そう。だけど、その服はいけないわ。安くとも身なりは整えなきゃ。

まぁ・・・それはこの人にも言えることだけど。」

ルイッツァは苦い顔で恋人を見た。

「二人共、貧乏オーラが漂っているわ。お金が入ったらまず服を買うべきよ、絶対。

・・・人間食事を差し置いてもプライドは持たなきゃ。」

「ハイハイ。気をつけるよ。ルイッツァ。」

「・・・以後気をつける。そういえば、もうちょっとしたら俺はピアノ弾く時間だな。

先に降りてるぞ?ルイッツァ。」

ミカエルは煤けたコートを脱ぐと腕にかけた。

「・・・じゃあ、俺はそれを聴いたら帰るよ。」

絵の具を片付け始めたギルバートを寂しそうに見やるルイッツァを見てミカエルは思う。

確かに俺よりは想われている様だな、と。そして願わくばその初々しい恋情に翳りがありませんようにと願う。

ああ、そういえば今日の曲を決めてなかったな・・・と彼は思い出す。

「今日は何の曲を弾けばいいだろうか?ルイッツァ?」

「・・・あんたが好きなのでいいわ。・・・でも『明るい星の下を歩けば』は抜かせないわ。」

ミカエルの表情が瞬時に凍りついた。

ああ・・・あの曲は・・・その、なんだ・・・と言葉をゴニョゴニョと濁し、ルイッツァに暗に撤回を求めるミカエル反応はもっともだ。

『明るい星の下を歩けば』とはスザンナとの恋に夢中な時期に書いた小っ恥ずかしい愛の讃歌である。作詞・作曲すべてを彼が手がけた。陰気臭い哲学者からあのような歌詞がほとばしるとは不思議なものだとギルバートは常々呆れていた。人間とは実に摩訶不思議な生き物だと人生でこれほど実感したことがどれほどあっただろうか?とギルバートは思う。

「・・・今、俺の最高の自信作は『絶望のアリア』だ。・・・こんな薄暗い夜に実に合う。」

彼は歯にモノが挟まったような気持ちが悪い顔をしている。

「何?『絶望のアリア』?客が逃げちゃうじゃない!・・・ああ、そういえばあんたフラレたんだっけ?何その面白い顔!」

「・・・性格悪いぞ。ルイッツァ。」

ギルバートは彼女を嗜めるが、彼女は聞かない。

「だって、あんたの作った曲って大概静かで寝てしまう位たいく・・・いえ、スローテンポで

荘厳な曲多いけど、あんたらしくもなくあの曲は躍動感があって聞いてると楽しくなるのよ。お客さんの評判もいいし、今日もどうせリクエストが来るわよ。私も好きなの。歌い易いし・・・。」

最後の「歌い易いし・・・。」というところは小さく濁すルイッツァ。

ルイッツァはプロの歌手ではないが酒場の娘として時々歌っている。

歌う曲はミカエルの作ったものであったり、世に良く知られる歌であったりする。

ただ・・・彼女はミカエルの紡ぐ旋律・・・複雑で少し暗めな感じ・・・に辟易としていた・・・覚え難い上に気分が落ち込む。

だが『明るい星の下を歩けば』は覚えやすく美しい旋律が特徴で音楽初心者には大変親しみ易いものだった。故にルイッツァは気に入っていたのだ。

それはギルバートも同感だった。

「ああ、あの曲が俺の最高傑作なのか?聴く度胸が軋みバラバラになりそうなあの曲が・・・。

・・・まったく、音楽家とは因果なものだ。よりにも寄って人が最も認める曲が、

自分にとっては地獄に響く叫び声にも聴こえるとは。いいだろう。弾こうとも。

それが、俺の最高のパフォーマンスならな。」

ああ、腕を天に突き出しながら大仰に彼は宣った。

褒められて悪い気はしないが、胸糞が悪い。彼はそんな相反する感情に決着をつけた様だ。

「お前の音楽家としてのプライドには敬服するよ。」

やれやれと首を振ったギルバートは呆れたように呟いた。


こんな黒歴史ってよくありますよね…。

恋愛に限らず、夜書いたものを読み返すと中々黒歴史だwww

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