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2.君はギリシャ神話に出てくる人物に例えるなら…そう…『メデイア』だ!

ギリシア神話大好きです…。

特に好きなのはハデスとペルセポネのカップルです。

ルイッツァはさして嬉しくもなさそうに、

「・・・なんか嬉しくない。私は世の男を虜にして振り回してみたいのよ。

あんたが私のことを好きなのはもう知ってるから。いいわ。」

とのたまった。

「・・・恋人の前で悪女宣言ですか・・・ルイッツァ様。」

傍から見れば彼女の発言はかなり高慢きちで彼女を嫌いになる人もいそうだが…

ギルバートはそんな彼女にそそられてしまう性質の人間だった。

__可愛いなぁ。

フンッとルイッツァは鼻を鳴らした。

「あんたなんて下僕なのよ、下僕。昔、私の後をくっついてきた

金魚のフンみたいなあんたにしか口説かれないなんて・・・屈辱。

そしてようやく口説く奴が現れたと思ったらドスケベの侯爵なんて・・・。」

彼女は顔を覆う。

もしかしてルイッツァ様は悔し涙流しているのかなと考え

目の前の恋人の姿に苦笑してしまうギルバート。

顔を覆う手を下ろしたルイッツァの目尻に涙が心なしか滲んでいた。

なんだか苛めて見たくなる顔だ、とギルバートは思う。

「・・・そんなにモテないことが悔しい?」

「う、うるさいっ!黙れっ!」

彼女は彼を睨みつけると突然ハッとした表情になった。

何かをジッと眉根を寄せて見ている。

彼には彼女が何を見ているかは分からなかった。

「・・・ぱつ」

そしておもむろにルイッツァが呟いたので彼は怪訝な顔をした。

「ん?ぱつ?」

「・・・そういえば金髪だわ・・・。」

ルイッツァは刺のある視線を恋人に向ける。

「・・・でしょ?」

「何?何って言ったの?」

怪訝な顔をするギルバート。

「アデリーヌに色目使ったでしょう!?」

「・・・えっええっ!?どうしてそうなるの?」

彼は絶賛製作中の自分の絵の主を見た。

・・・『ヘレネ』。

確かにその髪はさっきも言ったように・・・金髪だ。

そして彼女の嫉妬に得心がいく。

彼は今日二回目の苦笑いを浮かべた。

ゼウスとレダの娘にして絶世の美女『ヘレネ』。

眩しい位の金髪は確かにアデリーヌの髪を思い浮かべながら描いた。

顔立ちも・・・真似なかったとは言えない・・・お姫様だから顔は温室顔に描いただけだ。

だが彼女は気づいていないが・・・『ヘレネ』の出身地は武を尊び、

女性の地位が高いスパルタだ。

『ヘレネ』の本質はきっと可愛らしい人形のようなアデリーヌというよりも

女王様のように気が強いルイッツァにこそ近いと勝手に彼はそう思っていた。

だから表情や体つきは彼女がモデルなのだ。

「・・・確かにアデリーヌをモデルにした部分はある。だけど・・・」

「もういい。分かったわ。」

ルイッツァは恋人の言葉を遮った。

ルイッツァは恋人の言葉に若干・・・いやかなりダメージを受けているようだった。

どれをとってもアデリーヌの方が優れているんじゃないかと彼女は思いこむ節がある。

性格も、容姿も、かしずく男の数・・・どれをとっても。

だから好きな男がアデリーヌの名を出すと落ち着かない様だ。

「・・・やっぱりね。そうだと思った。」

ギルバートは言葉を遮られてムッとしていたが

恋人のその凹んだ声に俄かに慌てだした。

「・・・いや、君は『ヘレネ』の顔のモデルじゃないけど

表情や体つきは真似たんだよ?

・・・ってか、何回言ったら分かってくれるんだ?

君は綺麗だし、可愛いよ。アデリーヌにはない魅力がある。」

「・・・どんな?」

彼は少しうんざり顔をした。

「・・・またあれを言わせるの?

もう何百回も言っただろう!?」

「もっと言って!もっと!」

彼は少し嫌な顔をした。

「・・・それが君の元気起爆剤なのかい?」

「そう、そうなの。」

ウキウキと頬を染める彼女は既に元気を取り戻している。

もう元気じゃないか、とツッコミたいが、そんな彼女が可愛いから

穴にも入りたくなるような気分になりながらも言ってしまう

小っ恥ずかしい呪文のような言葉があるのだ・・・。

それは彼女に初めて愛を告げたときの言葉。

ああ、こんな小っ恥ずかしい言葉言わなきゃよかったかなと今更ながら彼は思う。

女性はどのような言葉を好むのだろうか?と日々考え、

こんなキザなセリフに行き着いてしまった過去の自分を詰ってやりたい

と彼は思った。このセリフは物凄く大成功を修めた・・・修めすぎた。

殊の外彼女はこのセリフをいたく気に入ってしまってその反動は現在に至る。

それでも彼女が好きだから、渋々彼は呪文を唱えることにした。

「・・・分かったよ。」

苦い顔をするギルバートとニコニコ顔のルイッツァは対照的だ。

彼はもぞもぞと呟く。

「君は荒野のような美しさ。

アデリーヌは人形のような美しさ。

風の中に根を張る一輪の花のように

顔を上げ毅然としている君が好き。

君の視線を捉えるものは僕でありたい。

・・・これでいいかい?」

彼は居心地の悪そうな顔をする。歯が浮きそうなのを耐えているのか。

その様子を見てルイッツァは口の端に登った小さな笑いを咬み殺す。

ギルバートは気づいていないが彼女は彼にこの自分を讃える言葉を言わせたくて

過剰に凹んだフリをする時がある。・・・本当に凹んでいるのだが、そこまで

凹むことは稀だ。・・・ないわけではないが。

「・・・声が小さいわ。もっと大きく情熱的に言ってよ。全く。

・・・私を愛してる?本当に?」

「・・・うん。アイシテルョ・・・。」

世間的に見たらルイッツァはかなり面倒臭い女かもしれない。

愛してる?愛してる?と彼は日々彼女から確認を受ける。

そして、その度にギルバートは愛してる、と答える。

だけど、その面倒臭さがギルバートは嫌いじゃない。

必要とされている気がするから。

ただ・・・時々その勢いに気圧される。

結婚したら尻に引かれるんだろうな・・・と未来に思いを馳せる。

そんなことを彼が考えていると、

彼女はなにか思いついたように手をうち、

とんでもないことを言い出した。

「・・・ねぇ、歌にしてよ。この下の酒場でピアノ弾いてるミカエルと友達でしょ?」

申し遅れたが、彼らはルイッツァの私室にいる。下は彼女の両親が経営する酒場だ。

彼は戸惑いの表情を浮かべ何かを理解したようで口を僅かに歪めた。

「・・・な、何をですか・・・?」

「今あんたが言ったプロポーズの言葉よ。」

彼は引きつった笑いを浮かべた。

「冗談だよねぇ?」

「いや、本気だけど?」

「勘弁してくださいって。ミカエルに冷笑されますって。

ただでさえバカップルとか思われてるってのに。・・・君のせいで。」

ミカエルは独身。最近恋人と別れた。

ミカエルとギルバートはお互い芸術家という経済的に波のある職業についているため・・・

言い換えると貧乏なのだ・・・そのため部屋をシェアして暮らしている。

・・・つまりボロアパートの同居人なのである。

「あ、そ。じゃあ、あんたが曲つけてよね?

・・・変な曲つけたら・・・殺す。」

ルイッツァはジロッと彼を睨む。

彼女がガキ大将の頃ギルバートは彼女に使役されていた。

その時の睨みは彼のトラウマである。

「・・・・・・はいはい。じゃあ、そのうち。」

「・・・逃げる気でしょ?まぁ良いわ。

ところであんた、私をギリシア神話に出てくる人物に例えるなら誰?」

「・・・『ヘラ』・・・違、そうじゃなくて・・・『メデイア』・・・あっ、ぴったりだ。

・・・何その顔?」

「・・・殺されたい?」

『メデイア』は激情家で夫を愛すのも憎むのも激しすぎるイアソンという人物の妻だ。

まさにピッタリではないかと彼は思うのだが彼女の表情を見て意見を引っ込めた。

「・・・うーん、じゃあ・・・アマゾン女王・・・『ペンテシレイア』?それとも『アルテミス』?」

「・・・あんたが大体私をどう思っているか分かったわよ。

『ヘラ』や『メデイア』は嫉妬深く、

『ペンテシレイア』や『アルテミス』は男伊達らに戦う勇ましく気の強い女・・・。

まぁでも『ペンテシレイア』や『アルテミス』なら許せるわね。

総合的に考えると、私のこと嫉妬深い暴力女って思ってない?お姫様要素ゼロの。」

「・・・ご明察。」

「あんた、最低。超意地悪。」

顔を真っ赤にする彼女が本当はどんな答えが欲しかったかギルバートは知っている。

正統派美女でお姫様な女に例えられたいのだ。まさにアデリーヌのような人物に。

『ヘレネ』『プシュケー』『アプロディテ』『ペルセポネ』・・・そのあたりだろうか。

『アプロディテ』は奔放な感じだから彼女とイメージが合うだろうか・・・いや、違うなと彼は思う。彼は正直者だから彼女に嘘はつけない。

彼は自分の恋人には悪いが一番良く彼女に合うイメージは『メデイア』だと思った。

しかし、彼女は『メデイア』のように恋人を激しく重く愛するのであって、

メデイア程残酷な復讐が出来る女・・・だとは彼には思えない。

・・・それとも、出来るのであろうか?

「ごめん。でも『メデイア』のイメージが一番しっくりくる。

激しく炎のような愛で恋人を包むところがね・・・。」

「・・・褒めてるの?けなしてるの?」

「・・・褒めてるよ?多分・・・。」

微妙に言葉を濁した。

「それは褒めてねぇよっ。」

ルイッツァは歯を剥きだして彼に飛びかかった。

「うわっ、何するんだっ、離せっ!」

ルイッツァは歯を彼の首筋に立てた。切れるか切れないか微妙な力加減だ。

「痛いっ、君は吸血鬼かっ!痛いって。」

これがルイッツァの過激な暴行・・・いや、愛情表現なのだ。

うわぁ、という叫びとともに椅子がひっくり返りギルバートは後頭部を壁に強く打ち付けた。痛みに彼の視界は霞み目尻に涙が滲んだ。

彼女は彼の首筋に噛み付き、歯型をつけたかと思いきや、そこに唇を寄せ、今度はキスをする。

ギルバートは先ほど受けたダメージに目を白黒させた。

傍から見れば一方的に襲われている図だ。


…次回は新しいキャラを出そうと思います。

彼らの友人ミカエルさんです。


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