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12.間話_恋愛脳vs低能のガキ

劇に感情移入しすぎの女性陣…。

 アントニオ扮する王子は夜の庭を眺めている。

そこにアルベルトが彼を追いかけてくる。

ここからは二人のそれぞれの想いを歌の二重奏で掛け合うのだ。

「王子様、王子様。」

王子の従者アルベルトが王子に語りかける。

「何故あのように麗しきお方にあのような言い様をなさいます・・・。」

「ああ・・・アルベルトか・・・。今はその話をするのはよしてくれ。

俺は恋人をあの娼婦に馬鹿にされ苛立っているのだ。」

王子はイライラと草を踏みにじる。

それに対してアルベルトはうっとりと手を組み夢見心地だ。

「あの人はなんて美しいのだ!あれぞまさに花の中の花!」

「あの娼婦は薄汚く、傲慢だ!」

「あの人の煌びやかで澄んだ瞳・・・晴れ渡る空の色だ!」

「俺の恋人の瞳は森の色!自然の叡智を宿したよう!」

「あの髪はどうだろう?光の色・・・黄金色だ!」

「ああ・・・あの夜の色の髪!匂いやかな風情・・・。」

「華奢なガラス細工のような肢体・・・。」

「しなやかな手足・・・。」

「春の日差しのような乙女だ!」

「ああ・・・早く結婚したい・・・。

そして・・・ウィリア・・・君のヴェールを剥いで口づけをするのさ・・・。」

王子はすぐ傍の四阿に腰掛け・・・空想にふける。

アルベルトはそんな王子を眺めて・・・客席に向かって心情を吐露する。

「(俺は彼女を手に入れるためならなんだってする!

狂ってしまいそうだ!あの乙女は王子にぞっこんで、王子は別の女に夢中!

・・・どうしたらいいのだ!)」

「君の唇は化粧もしてないのにベリーのようにみずみずしく・・・。」

「(どうしたら・・・手に入れられるだろう・・・俺はあいつのように

美しくもなく・・・身分も無い・・・。)」

「そのアラバスターの肌を扇情的に彩り・・・。」

「(・・・そうか!あの王子に彼女を騙させれば良いのだ!

人間となってしまえばあの人はただの無力な女だ!

王子は恋人と結婚し・・・彼女は俺を頼るしかない!)」

「・・・私に甘い夢を見させるのだ・・・。」

「王子様!王子様!」

「・・・その玉の貌を包むビロード如き髪は水に濡れた黒羽の如く・・・。」

「王子様!!」

「・・・なんだ?いいところなのに・・・。」

「とりあえず中に入りましょう・・・お話がございます。」

そう言ってアルベルトは王子の居城に入っていく。

それに王子も従う。そしてある一室に彼らは入る。

「ロウソクを吹き消し・・・カーテンを閉めるとは・・・何故なのだ?」

「光の妖精に聞かれたくないことがございますれば・・・。」

「それにしても真っ暗だ・・・一体何だ?」

「・・・王子様、あの女の話覚えておいでですか?

あの額飾りがあれば・・・巨万の富、神にも並ぶ栄誉、海の如き知恵、そして瞑ることのない眼を以て国を治められると・・・。」

「・・・ああ聞いたとも。だが私は断じて恋人を裏切るような真似はしないぞ!」

「・・・何もウィリア様を裏切らずともその栄光を掴むことはできましょう・・・。」

「・・・まさかお前は私にあの女から額飾りを奪えというのか。しかし一体どのようにあの娼婦を説得するのだ?」

「・・・説得・・・ですか。王子は愚直でいらっしゃることだ・・・。当然騙すのです!」

「・・・お前はなんということを言うのだ!そのようなことをすれば私は獣にも劣る!

あの女のことを言えなくなるのだ。黙るのだ!」

「お聞きください!王子様は国を継ぐお方。その座下には愛すべき領民・・・。彼らが一番の望み、それは・・・あなた様が高い功徳を以て世に光をもたらすこと!王子様、もし彼女から額飾りを奪えばあなた様はこの世で最も高貴な賢者となれる・・・。富と知恵を以て世を治めることが出来るのです・・・。」

「ならぬ!」

「額飾りは王子様にふさわしいものです!

あの燦然と輝く額飾り・・・麗しく、深い知恵をお持ちの王子様にこそ・・・。」

「私にこそ・・・?いや・・・ダメだ!」

「ウィリア様のことをお考え下さい。

不敬ですが・・・もし王子様が戦で死ねばあの方は若くしてお一人に・・・。

あの方はお美しゅうございますれば・・・他の男の妻になってしまうかもしれません・・・。」

「・・・それは、ダメだ・・・。俺だけがウィリアの夫なのだ・・・。

・・・だが本当に奪って良いものだろうか・・・。」

「王子様は小さな悪によってより大きなことを成し得られることでしょう!

あの無知な妖精はたとえ額飾りを持ってはいてもそれを用いない・・・宝の持ち腐れです。

それに比べ王子様は遍く四方にその恩恵をもたらすことが出来ましょう!

それを考えれば・・・あの妖精から奪うこと自体悪ではなく・・・むしろ善だというものです。

大体王子様のおっしゃるとおりあの女は娼婦の如き本性なのですから・・・同情してやる

ことはございません。」

「確かに・・・私ならばあの女よりはマシな使い道が出来るだろう!

先ほどは怒りに任せていらぬと申したが・・・何やら惜しくなったな・・・。」

「(・・・後一息だ!)」

「アルベルトよ・・・。本当に良いのだな?」

「それでよろしゅうございますよ。」

「だが・・・それはウィリアへの裏切りではないか?

騙すとは言ってもあの女に言い寄ることには変わりあるまい。」

「・・・言い寄らずとも結婚すると一言おっしゃればあの妖精は

額飾りを寄越しましょう。・・・その価値も慮ることなく・・・。」

「そうか・・・ウィリアにはすまぬが・・・この国の栄光のために!」

「栄光のために!」

「「この国に幸あれ!!」」

二人・・・王子とアルベルトは

高らかに歌い上げ、やがてアルベルトは王子の命を受けてその場から去る。




「・・・なんだよ・・・。結局奪うことにしたのかよ・・・。」

マルクスは呆れたように言う。

「確かにちょっと自己中だけども・・・それでもこれは・・・愛のためなのよ!」

ヴェーラがうっとりと呟く。

その表情にギョッとした顔をするマルクス。

「ヴェーラ・・・お前頭腐ってんじゃ・・・なんでも愛だの恋だので片付けんな・・・

このバカ!」

「うるさい!低脳のガキ!」

「あのなぁ・・・愛だの恋なんてもんはなぁ・・・王子にとってはついでなんだ。

アホだなぁ・・・そんなんだからロクでもない侯爵に引っ掛かんだよ!

・・・私ならばあの女よりはマシな使い道が出来るだろう!って言ってんじゃねーか。」

「まぁ・・・それはそうだわね・・・。」

ヴェーラは口を尖らせて不満そうな顔をするが反論は出来ないらしい。

「納得するのかよ・・・。」

「・・・愛のためなのよね・・・!」

「・・・ん?」

マルクスが横を見やると何やら熱い目をして両手を胸の前で組んだルイッツァがいた。

彼女は顔を真っ赤にして舞台に魅入っている。

「え、何?ルイッツァまで?」

マルクスは盛大にため息をついた。

「・・・女ときたら・・・揃いも揃って妄想野郎ばっかりだな。

・・・この恋愛脳どもが。」

マルクスは心底呆れたらしい。

「・・・ギルバート・・・お前は幸せ者だな・・・。」

乙女オーラを放っているルイッツァにミカエルも若干ひいていた。

だがマルクスと違ってミカエルにはルイッツァの考えていることが分かっていた。

恐らく・・・ウィリアと自分、王子とギルバートを重ねたんだろう・・・と彼は思った。

ウィリアの容姿の設定はなんだかルイッツァに・・・似ている、

というより・・・そのまんまだ。

恐らく偶然だろうが・・・そのせいもありウィリアに感情移入しているんだろう・・・。

その考えは見事に証明された。

「・・・王子様!ああ、ギル!」

「・・・戻ってこい・・・ルイッツァ・・・。」


こんなに愛されるなんてギルバートになりたくなってきた…。

読んでくださりありがとうございます(^J^)


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