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1.君は世界で一番だっていつも言っているだろう?ルイッツァ!

書きためを排出。

でも多分すぐストックなくなりそう…www

「本当にあの侯爵は女ったらし。・・・最低。」

うんざりした様子で少女はつぶやいた。

「昨日、酒場でね。愛人にならないか、ですって!!」

濡羽色の髪を怒気に逆立て、

険悪な色を湛えた濃いグリーンの瞳を顰める。

そして彼女は何やら指折りはじめた。

「ロゼッタ、ユリアナ、フィオーレ、ヴェーラ、ブリュンヒルデ、

タチアナ、バイオレット・・・んもうっ、数え切れない。・・・数えるのもうんざりよ。

その上今度は私を愛人コレクションに入れようっていうの?」

彼女は部屋中落ち着かなげにウロウロしていた。

「本当だよなぁ・・・。まさかって感じだよな。」

のんびりした口調で応えたのは少女の傍らで絵を描いている青年だ。

彼は絵に没頭している。シェルターを張っているかのように彼は自分の世界に入り込んでいる。その柔らかそうな明るい茶色の髪にべっとりついているのは・・・青い絵の具だ。

その他、顔、手、作業着とあらゆるところに色んな色がついていたが髪が特にひどい。

しかし、かなりべっとりついているのにそれに気づかない・・・それほどまでに集中しているのだ。

天気のことを聞いているように少女の言葉を受け流したのも仕方ないことだといえよう。

だが・・・少女は激した。

「ちょっと、ギルバートっ!あんた、自分の恋人があの不潔最低野郎の毒牙にかかろうとしているのに随分余裕じゃないっ?っていうか、絵を描くのやめろっ!!」

少女は噛み付くように言い放つと、彼の手から絵筆を強奪した。

「フンッ。」

ギルバートと呼ばれた青年は少女の怒気に威圧されたように萎縮した。

「・・・うっ。・・・折角『ヘレネ』を描き終えたところなのに・・・。

いやっ、そんな目で見ないで?俺はしっかり焦ってます。

・・・いや、焦ってるよ?焦ってはいるのだけども・・・。」

青年ことギルバートは困ったように頭をかいた。

「・・・まったくもうっ。あんたって温厚なのか頼りないのか分からない!

あんたって滅多なことじゃ怒らないのは知ってるけれどその反応はあんまりよ。

私は、あんたの、幼馴染、兼、こ・い・び・と、よっ!!その私の危機に怒らないで何時怒るの?あんたはっ!!それにあの絵『ヘレネ』の絵なの?」

「うん・・・。そうだけど?『ヘレネの略奪』。」

ギルバートはそれが何か?と怪訝な顔をする。

「・・・勿論モデルは私なんでしょうね?・・・じゃなくて、どうしてこんな時に

夫から略奪される女の絵なんて描いてんのよ?不吉じゃないっ!」

彼は落ち着かなげにコツコツ床を鳴らし始めた恋人の姿を見て、

「プフゥッ。」

・・・と吹き出したのだった。

少女はジトッとした目で彼を睨んだ。

「・・・最低。もういいわ。侯爵様の愛人になってぬくぬく暮らしてやるわ。・・・絵描きの女房になるよりリッチですもの。侯爵も中々端正な顔立ちしてるし?

・・・あら?何よその女、金髪じゃない。私じゃないじゃない!」

金髪とは彼が描いた『ヘレネ』だ。

「・・・おいおい、冗談でもそんなこと言うなよ。ルイッツァ。

それに、君の絵は死ぬ程・・・スケッチ合わせたら何百枚も描いてきただろう?」

ギルバートは穏やかな調子で少女ことルイッツァを諌める。

彼女が本気ではないことを知っていたからだ。

ルイッツァはため息をついた。

「・・・恋人の絵なら何枚でも描きなさいよ。

ああ、つまんないの。あんた、私のこと好きだよねぇ?」

「ああ、好きだとも、世界で一番愛してる。」

彼女は一瞬頬を緩めた。

だがその割には相手の表情や声音が乱れないのを見て空を仰いだ。

「・・・はあぁ・・・あんた、本当につまんない男よ。そしてそんなあんたのことが好きな私も

変わっているというか・・・もう、なんっていうか・・・なんであんたなのか・・・さっぱり。」

「俺も、なんで君なのか、さっぱり。」

ギルバートは絵の具のついた鼻の頭をポリポリ掻いた。

「なんですってぇぇっ?」

ルイッツァは彼を叩くふりをする。

そして歯を剥きだした。

「あんたねぇ、こーんな美人な私を恋人に出来て感謝こそすれ、なによその態度はっ。

私、もてんのよ?私の価値を見損なってない?私が言い寄ったら落とせない男は・・・

い、いないわよ。何か?何よ、その眼?だから侯爵様だって言い寄ったんでしょうが。」

「・・・ああ、侯爵様は見る目があると思うよ。君は確かに魅力的だ。」

「でしょう?」

「・・・だけどこの街の男は胸がでっかくて、ほっそりした可愛らしい女が好きだ。

まぁ・・・いうなれば我らが友人、女優のアデリーヌ・・・のような?」

「う・・・。」

コンプレックスを突かれたのかルイッツァは押し黙った。

アデリーヌはルイッツァの幼馴染である。

彼女は現在街の舞台で女優をしていて、この街一の人気を誇っている。

仲が悪いわけではない。むしろルイッツァとアデリーヌの仲は良好だ。

・・・ただし、

アデリーヌは知らないが

ルイッツァはすこぉし・・・いや、かなり彼女を僻んでいた。

なぜならば、アデリーヌは砂糖菓子のように柔らかく可憐だからだ。

ルイッツァとは系統の違う美貌。

もし、ルイッツァが荒々しく

野生感のある美しさだと言うならば、

アデリーヌはまるで温室育ちの美しさ。

もしルイッツァがカッコいい中性的な容姿だと表現するならば、

アデリーヌは人形のような、妖精のようなと形容される美しさなのである。

昔からルイッツァは人から「可愛い」というより「カッコいい」と言われてきて

自分で言う割には自分の美に自信を持っていない。

そして彼女は、世の男はルイッツァよりもアデリーヌを好んでいる

・・・と勝手に思い込んでいる節がある。

そのことをギルバート・・・幼い頃彼女のパシリであった彼は知っていて

悪用したのだった。

「・・・まぁ、アデリーヌは綺麗よね・・・。」

ムカついたようにそっぽを向いてしまうルイッツァに彼は苦笑する。

彼は鼻っ柱の強い勝気な彼女が悄気げる瞬間を何回も見てきた。

何度、目にしただろう。彼女の妬みオーラ満載の顔を。

ふとした瞬間、アデリーヌの髪をぎらついた目で見ていたり、

アデリーヌの肩を何気なく抱き寄せたと思えば、戸惑いの表情を浮かべ、

次の瞬間肩を落としていたり・・・彼女の肩の細さに驚いていたんだろう。

はたまた彼女の顔を眺めては溜息をついていた。

確かにアデリーヌは大柄でスレンダーなルイッツァと違って華奢で

出るとこは出ていて女性らしい。

だけどもギルバートはカッコいいルイッツァの方が好きで、

彼のような男・・・下にひかれるのが好きな奴は存外いるということ

をルイッツァは知らない。

まぁ・・・勝手に勘違いさせておこう、と彼は決めている。

勘違いしている分にはルイッツァは秋波を送る男どもに気づかない。

ただ・・・今回彼女の魅力に気づき大胆にもダイレクトに言い寄る男が現れた。

女たらしで有名な侯爵さまだ。愛人がいっぱいいる・・・もう数えるのも

嫌になるほど素晴らしい戦績を残し、千人斬りを達成しようとしている。

彼は比較的のんびり話を聞いていたが、ルイッツァを数ある

侯爵の愛人コレクションに加えてやる気は更々ない。

少しばかり痛い目に合わせてやりたいよな・・・と彼はよからぬ想像をする。

空を仰いだその目を戻すと何やらルイッツァは顔を俯け、体が前に傾いていた。

その様子に焦った彼はなだめようと言葉を紡ぐ。

「・・・ルイッツァ、安心してよ。俺は君が好きなんだ。

例え街の奴らがアデリーヌにゾッコンでも・・・俺にとっては君が一番さ!」


ルイッツァは個人的には好きなキャラです…読んでくれてありがとうございます。

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