学園案内【四季之組】
「ここが二年生の教室。始業式にならないとクラスは分からないんだけど、春夏秋冬の四クラスに分かれてるの」
「へぇ、四季になってるんだ……?」
教室の前には立派な書体で『春之組』と書かれた木の札がぶら下がっている。
その重苦しい雰囲気に恐る恐る中を覗いてみると、やはり古い造りではあるが見慣れた教室の眺めに少しホッとした。
「ねぇ、あれ何?」
私はクラスの名前が書かれた札の下に彫られている、花の模様を指差した。
よく見てみると、クラスで模様が違うみたい。
「あーあれはね、組紋って言って、各クラス毎に季節の花の模様が決まってるの」
「家紋みたいな?」
「そうそう! 春が桜で、夏が菖蒲。秋は楓で、冬が椿になってるんだよ」
「なんか可愛いね〜」
「でしょでしょ〜? クラス毎にね、組紋の刺繍がしてある稽古着も配られるんだよ」
「えー、じゃあ私桜がいいかも」
「私もーっ」
「同じクラスだといいね」
「ホントだね!」
やはり環境の違いに戸惑いや不安もあるけど。
(でも、何だかワクワクしてきた)
「ここは一般教養の教室で、選択科目はそれぞれの授業で分かれるんだ。選択科目のコースは四種類あるんだけど、どこから行く?」
「舞踊は?」
「行っちゃう?」
「行っちゃう!」
「舞クラはこっち」
紗和ちゃんが待ちきれないように私の手を掴んで走り出す。
「もしかしたら来週新入生歓迎会あるから、四天王が練習してるかも!」
「え、何?」
(してんのう……?)
その言葉の意味を理解する前に、息を切らした紗和ちゃんの足が止まる。
そしてその出逢いが、私の運命を変える全ての始まりだった。