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闇を愛して  作者: 冴島月ノ助
すみれの花咲くころ
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桜舞う

 重々しい門構えの校門を見上げる。一歩足を踏み入れると、私の肩にまでその重さがのし掛かるようだった。

 理事長の昔の自宅を改築して造ったという。周りを緑に囲まれた広大な敷地に、見るからに古くからある日本家屋の趣きを残した不思議な学校だった。

 私立大和やまと学園。今日からここが、私の学校。


 桜の花びらを乗せた風が、どこか浮かれたように私の頬を撫でる。


「よく来ましたね」

「はい」


 淡い藤色の着物を着た優しい雰囲気の女性が笑いかける。


「ご無沙汰してます、紘乃さん」


 彼女は私の叔母さんにあたる、この学校の先生だ。特殊な学科コースがあり、転入が難しいとされるこの学園に入る事が出来たのも実は紘乃さんのコネクションがあっての事。

 突然転入したいと言った私の我が儘を、『近くで成長が見られるのは嬉しいわ』と何も言わずに聞いてくれた。

 隣に制服を着た女の子も立っている。私は彼女と紘乃さんを交互に見つめた。


「彼女は二年寮長の渡辺紗和わたなべさよりさん。今日学校の案内を頼んだの」

「紗和です。よろしくね」

「黒木すみれです。よろしく」


 人懐こい笑顔で笑う彼女と軽く握手を交わす。それを見届けると、紘乃さんは職員会議があるからとその場を後にした。


「すごい荷物! とりあえず寮に置いてきちゃおっか?」

「あ、うん」


 ここは全寮制。生活も共にする事になる。覚悟の上ではあったけれど、急に緊張してきた。


「でも珍しいよねー」

「え? 何が?」

「うちって二年になったら普通科に転校しちゃう人多いからさー。逆に転入してくる人なんて珍しいなって。どうしてうちに来たのー?」

「それは……」


 言葉に少し詰まる。


「……紘乃さんに日舞を習いたくて」


 私は曖昧な笑顔で、そう答えた。紗和ちゃんは特に気にした様子もなく、『ふーん』と小さく相槌を打つ。


 本当の理由は、言ったらきっと笑われちゃう。

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