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俺のLevel!  作者: aki
4/10

普通科 今日の午前は学科です

俺のLevelの世界観を少し書いてみました。



 今日の午前は学科だ。


「授業を始めますよ~♪ みなさん準備は出来ましたか?」


 耳にいい鈴の音のような可愛らしい声が教室に響く。

 実に良い……


「ハイ、ソコのやんまー君。浸ってないで教科書を開いてくださぁ~い♪」


 お、拙い。小鳥センセを煩わせてしまった。コレはイカンよ。反省。


 小鳥センセは、本名を小鳥遊小鳥〈たかなしことり〉と言い「名は体を表す」を自ら表現している愛らしい先生だ。ゆるいウェーブのかかった亜麻色の髪にぱっちりとした大きな瞳、ぷるぷるな唇は可愛さと大人のエロスを同居させている。ウチの担任と違い小柄で小ぶりなセンセだ。男の保護欲を刺激する無自覚の小悪魔ちゃんだ。…あくまで俺の趣向からくる判断だが。

 彼女はESP覚醒者でもなければ職業覚醒者でもない。SFにもファンタジーにも影響されなかった稀有な人材だ。小鳥センセのような人たちはどういう訳なのか分からないがESPや魔法類の影響を受けない体質を持っている。ただ、物理の暴力の前には無力なので無敵とかではないため、基本有事の際には守られる側になる。

 そして最も重要なことは彼女自身がマイノリティーなため、〈俺レベル〉なんてものに目覚めた俺にとっても良くしてくれるってことだ。中等部の頃からお世話になっている恩師でもある。



 今日の授業は現代社会。

 SFとファンタジーに世界が侵されてから世の中がどう変わってしまったのか。授業内容はそんなところだ。

 「じゃあ何が変わったんだ?」って話しなんだが… 笑っちゃうくらい変わってんだよな、コレが。


 例えば国名。日本から日本皇国へ変わってしまっている。

 別に立憲君主型の民主主義国家では失くなった訳ではないが、やんごとなき方々の政治的発言力は強くなった。コレは、世界が侵食され始めたとき指導層が満足に対応出来なかった為だ。国が危うい時、彼ら彼女らが求心力を持ってしまうのは、どの時代でも同じことらしい。そして今は女帝の御代である。俺らの世代にとっては違和感もなにも無いことだが、当時はひと悶着があったらしい。

 ちなみに、この国で生まれ育った民は〈国民〉ではなく〈臣民〉と呼ぶようになった。これも知識層に言わせると、政治家、財界を含めた指導層への根深い不信感の象徴だそうだ。


 ではその臣民の信頼を取り戻していないと言われている政治の世界は今どうなっているのか。

 かつての日本にいた護憲派と呼ばれていた人たちは、SFとファンタジーの侵食が進むにつれその勢力を弱め、その後に自然消滅した。そりゃそうだ。地球外生命体や魔物に「話せばわかる」は通用しないし、臣民(当時は国民)の中からそれまで存在しなかった超常的な力に目覚めた人たちが次々に現れ、対応しなければならなかったからだ。その時代、この国にあった性善説をベースにした法体系は一旦崩壊し、性悪説をベースとした法体系へと転換せざるを得ない状況だったようだ。

 

 例えば国名。日本から日本皇国へ変わってしまっている。

 別に立憲君主型の民主主義国家では失くなった訳ではないが、止事無き方々の政治的発言力は強くなった。コレは、世界が侵食され始めたとき指導層が満足に対応出来なかった為だ。国が危うい時、彼ら彼女らが求心力を持ってしまうのは、どの時代でも同じことらしい。そして今は女帝の御代である。俺らの世代にとっては違和感もなにも無いことだが、当時はひと悶着があったらしい。

 ちなみに、この国で生まれ育った民は〈国民〉ではなく〈臣民〉と呼ぶようになった。これも知識層に言わせると、政治家、財界を含めた指導層への根深い不信感の象徴だそうだ。


 ではその「臣民の信頼を取り戻していない」と言われている政治の世界はどういう経緯を辿って今に至るのか。

 かつての日本にいた護憲派と呼ばれていた人たちは、SFとファンタジーの侵食が進むにつれその勢力を弱め、その後に自然消滅した。そりゃそうだ。地球外生命体や魔物に「話せばわかる」は通用しないし、臣民(当時は国民)の中からそれまで存在しなかった超常的な力に目覚めた人たちが次々に現れ、対応しなければならなかったからだ。その時代、この国にあった性善説をベースにした法体系は一旦崩壊し、性悪説をベースとした法体系へと転換せざるを得ない状況だったようだ。大混乱時代の序章といったかんじだな。

 次に安全保障制度の目処がつくと、改憲でまとまっていた巨大保守政党が経済政策やら国体のあり方を巡って揉めに揉め、盛大に空中分解した。大混乱時代、第一章の始まりの合図とされている出来事だ。

 まず経済政策は新自由主義派と経世済民派に真っ二つに意見が割れた。原因は大きく分けて二つだ。

 一つは、合衆国自体が自国の対応に追われていた為、日本は安全保障上の問題を自力で解決せざるを得ない状況に陥ったことだ。結果、自立への道が急激に進み合衆国に対する安全保障上の依存度を大きく減らした。

 二つ目は、エネルギー問題だ。「これも安全保障問題じゃねーか」と言ってしまえばそれまでだが、大事なことなので語らせてもらう。日本のエネルギー問題を大幅に改善したものは、皮肉にもSFとファンタジーだった。日本各地には魔物の巣とも言える迷宮が現れていて、そして迷宮は新エネルギー〈魔素〉を含んだ資源の宝庫だった。人々は危険を冒してでも迷宮を探索し、持ち帰ったものを国を挙げて研究に勤しんだ。真っ先に行われたのは〈魔素〉の電力化だったそうで「日本らしいな」というのが俺の感想だ。また、迷宮の深層〈塔型の場合、上層〉からは、地球外知的生命体の超科学〈オーバーテクノロジー〉とも戦える超魔道の結晶、概念兵器が発見されたりもした。

 この二つが臣民〈当時は国民〉に与えた影響は凄まじく大きかったようだ。

 それまでは「合衆国なしではこの東アジアで生き残れない」と言う、多くの臣民〈当時は国民〉の共通認識が崩れ去ってしまったのだ。結果、「友好と経済のためには仕方がない」と新自由主義が猛威を振るう中、長らく貧困に苦しんでいた八割強の臣民〈当時は国民〉は大きく声を上げ始めることとなった。

 始めはメディアと政治を牛耳る富裕層が優位に物事を進めていたが、SFとファンタジーの侵食という事態ははっきり言って未曾有の有事、臣民〈当時は国民〉が「一致団結しなければ乗り切れない」との判断が富裕層にも広がり、「故郷に帰れトリクルダウン。戻ってきてねトリクルアップ」の精神で富の再分配、経世済民派が勝利を収めた。しかし「有事を乗り切るため」という要素が大きい政策転換だった為、臣民〈当時は国民〉の中では不満が色濃く残ることとなった。

 そして国体を巡る対立については――

 コレについても「経世済民と被ってんじゃねーか」と言われても仕方のない部分もあるが、例によって例のごとく大事なことなので語らせてもらう。そもそも我が国の国体とは「止事無きお方が民草を宝物のように守りその幸福を祈る。そして祈られた側の民草はその御心に感謝をし、その治世が末永く続くように祈る」と言うものだ。ざっくり言えば。

 だが敗戦後、国民主権に根ざした戦後民主主義の凋落と国民の幸福を置き去りにした経済発展はそれから大きく外れたものだった。そんな状態が長らく続き、向かう先も見失った矢先の有事〈SFとファンタジーの侵食〉が皇国〈当時はただの日本〉を襲ったとき、誰のもとに集い心の拠り所としたのか。それはやはり、ほんの数年で変わり長年格差を放置してきた宰相ではなかった。祈りを忘れた者の元に民が集うことはなかったのだ。そして臣民〈当時は国民〉の中で原点回帰が起き、その後改憲が行われ日本皇国憲法が誕生した。

 それ以降、政府やメディアでは日本人を表すとき日本国民もしくは皇国民と表すが、多くの庶民は自らを臣民と呼ぶようになった……


 まずはココらへんで一区切りっと――


 う~ん… 民草の恨みは根深いってことか。だいたいさぁ、格差放置ってマジかよ。当時、年収200万円以下がゴロゴロいて、そんな状態が40年以上続いてる。地獄だな。SFとファンタジーに侵食され続けている世界に変わってしまったとはいえ、今の時代に生んでくれた両親に感謝だぜ。今の時代、政治家がそんな事やらかしたら、止事無き方に呼び出しくらって説教だからな。有り難や~有り難や~っと。



「こらぁーっ、やんまー君。なに授業中に手を合わせているの!?」

「あっ」

「『あっ』じゃ、ありません!」


 叱られた。「祈りは心の所作」の精神でやってたつもりが、リアルで手を合わせてしまっていたらしい。視線を周囲に向けると、タクローが口を押さえ笑いを堪えてる。委員長は大きくため息だ。


「真面目に授業を聞きなさぁ~い!」


 いや小鳥センセ。まじめに聞いてはいたんですよ。


「すいません、小鳥センセ。ただ、今日の授業を聞いていると『皇国に生まれて良かったな』と思って。自然と手を合わせてしまってたみたいです。だってそうでしょう、皇国に生まれて何の祈りも受けられない臣民はいないってことですよね。それって何かいいっスよね」

「む、やんまー君。言い訳にはなりませんが、その考え方は正しいです。例え苦難に合い、家族や友達をなくし絶望したとしても、皇国に生まれた臣民である以上、誰からも祈りを捧げられない人などいません。故に全ての臣民は、尊いお方に幸せを願われている存在であるのだと自覚をもって行動をしなければならないのです。陽の当たる場所を堂々と歩いて行けるようにね。当然、感謝の心を忘れてはいけませんよ」

「はいセンセ。俺もそう思います」

「うむ、よろしい♪ ただし、もう授業中に合掌してはいけませんよ」

「はい、小鳥センセ」


 小鳥センセの言葉は素直に入ってくる。多分、彼女のことを信頼しているからだろう。いつか恩返しが出来るといいと思ってる。


 いずれ小鳥センセと出会ったときの話をする機会もあると思うが、今回はコレで……


 

 次回へつづく。






  

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