表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺のLevel!  作者: aki
10/10

外章 〈餓狼〉伝説 二幕

外章 〈餓狼〉伝説……二幕で終わる筈が……/(-_-)\

書いてる内に楽しくなってしまいました。

――賀茂かも詔司しょうじ〈魔道士〉 視点――


「あ゛あ゛あ゛ァァッ!!」


 腕、肩、脇――

 損傷した肉体から送られてくる絶え間ない激痛に意識が飛びそうになる。

 黒犬頭ブラックドックリーダーは、俺に牙を突き立て振り回し、時に引きずり、時に〈餓狼〉の仲間と激しく戦う。

 その度に、俺の肉や衣服がヤツの牙に絡まり、不快な痛みを増大させた。


 だが、最大の問題は激痛などではなかった。

 痛みに堪えながら、魔法を行使することなどとっくの昔に慣れている。

 しかし、人間離れした〈武芸者〉であろうとも、やはりベースは〈人間〉だ。散々振り回され、三半規管を激しく揺さぶられてしまえば、到底集中など出来ない。

 痛みとそれ以上の吐き気、不規則に襲ってくるGによって俺の意識は飛ばされた。



 暗転した意識の中で「ガチッ」と何かのスイッチが入った音がした。

 

 ―〈もう一つの脳アナザー・ブレイン〉ガ起動しマしタ。

 ―のウ内マ薬セい成。

 ―痛覚麻痺 70%達セイ。

 ―賀もショう司の意識をタち上ゲまス。

 

 ――ん、あ? ああ、意識がブッ飛んでいたのか。


 ―敵、セん滅の意思二従い有コうなせん択し…


 ――相変わらず壊れたオーディオクオリティーな魔法だな。

 俺は己の魔法の出来に不満を漏らしつつ、うまく機能したことに安堵した。

 

 ―右腕の損傷ジん大。

 ―有コう活用の為、右腕ヲ媒介に「…」ばク…魔ほウを発動さセマすか?


 ――当然、Yesだ。派手にブチかませっ!


 おそらく〈もう一つの脳アナザーブレイン〉は、右腕を犠牲にした爆裂魔法を選択したのだろう。

 腕一本で、強敵黒犬頭ブラックドックリーダーを仕留めれるのなら安いものだが、爆裂に指向性を持たせたとしても、腕以外の肉体の損傷は覚悟しなければならない。

 だが、そんなモノは勝利の前では…

 強敵との充実した死線パラダイスの前では、塵芥ほどの価値もないこと。

 

 ―エい唱ヲ開始。

 ―我がミを贄としゲヘナのキ憶を呼び覚マせ…


 ――オイ、それ爆裂魔法じゃなくて、自爆魔法だろうが! 糞っ、腕のみの限定verでヤル気か!?


つとむっ! 離れろォォッ!!」


 俺の警告というより急激に高まる異常な魔力を警戒し、つとむは既に行動に移っていた。

 つとむは、腹に負った重傷でKO寸前の理究りきゅう目掛けて失踪し、襲おうとする黒犬頭フラックドックリーダーに対する牽制も忘れない。

 二丁の釘打ち銃ネイルガンの内、片方をホルスターにしまい、もう一丁で撃ちまくる。

 ――走りながら、しかも片手の癖にやたら正確な射撃だなぁっ。

 ――おかげで振り回される俺の足に直撃したじゃねぇーか!

 そんな俺の恨み節など知りもせず、つとむは速度を落とさないまま理究りきゅうを回収、即座に離脱した。

 置き土産を残して…


 つとむの後を追おうとした黒犬頭ブラックドックリーダーの足元に、魔力がよく通った短棒が放り込まれた。

 ――ゲェっ、ヤバ! それは……!?

 急激なGがかかり、黒犬頭ブラックドックリーダーに銜えられたまま、空へと連れ去られた。

 次の瞬間、足元から凄まじい爆発。

 爆発の直撃こそなかったものの、爆音と衝撃に打たれた。

 〈もう一つ脳アナザーブレイン〉の作用によって、精神と肉体を体内魔力の繋がりのみにしていなかったら、また意識を飛ばされていたところだ。

 ――糞っ、あの野郎つとむっ。俺を殺す気か!? しかも、俺がくれてやった特製の手投げ魔弾で!!

 俺はつとむを罵りつつ、黒犬頭ブラックドックリーダーの回避能力に若干の感謝をし、されど、俺の体に喰い込む牙に底のない憎悪をたぎらせる。

 ――ろくでもない流れだが、又とない仕掛け時だ。


「くたばれデカ犬ッ。咲けっ〈狂い華ファナティックフラワー〉」


 黒犬頭ブラックドックリーダーに銜えられた腕が尋常ではない熱を帯び、猛火となって黒犬頭ブラックドックリーダーの体内で荒れ狂う。

 猛火の勢いは凄まじく、突き立てられた牙の隙間から外へと燃え広がり、俺の半身を焼きつけた。

 最低限の魔力障壁は貼られているようだが、〈狂い華ファナティックフラワー〉の余波を防ぎ切るには至らなかったようだ。

 だが、それでも俺は、更なる魔力を〈狂い華ファナティックフラワー〉に注ぎ込む。

 魔力を注ぎ込まれた〈狂い華ファナティックフラワー〉は、黒犬頭ブラックドックリーダーを完全に呑み込む大火球へと成長し大輪の華を咲かせた。



 〈もう一つの脳アナザーブレイン〉の効果が切れ、途切れていた激痛が押し寄せてきていた。

 だが、猛火に包まれ、悶え苦しみ、そして断末魔の叫びを上げ死んでゆく。

 そんな黒犬頭ブラックドックリーダーの最後を見届けてるという高揚が…

 死闘の末、その強敵を死に追いやった愉悦が、受けた痛みを一時的に忘却させ、俺を至福の時へと誘った。

 ――ああ… 最高だ。気持ちいい… また、こんな死地パラダイスを楽しみてぇ……


 俺は夢心地で意識の暗闇へと堕ちていった――




――豪血寺ごうけつじ堅剛けんごう〈破戒武僧〉 視点――


「憤っ!」


 族長級〈槍使い〉オークの豪槍を手刀で弾き、横から忍び寄る新種ゴブに蹴りを見舞う。

 豪槍を弾いた手首は痺れを残し、新種ゴブ〈茶褐色〉に直撃した蹴りも一撃で仕留めることは出来なかった。

 ――新種ゴブは、ゲームでいうところの土属性の〈魔法戦士〉と言ったところか。

 鎧に覆われていない腹部を蹴ったにも関わらず、硬い岩のような感触だった事。加えて仲間の〈魔道士〉が土属性の魔法を使用した時と同じような気配があった為、そう判断を下した。


 ――本当に分が悪いのォ。

 浅い傷とは言え、打ち合う度にその数が増え、少ないながらも血が流れていく。

 被ダメージ反応起動型の法力が即座に癒してくれるが、流れ出た血自体はどうにもならない。

 少しずつ削られ、終局に向かって詰んでいく感触に冷や汗が出る。


 焦りながらも集中を切らさず、背後から忍び寄る〈黒〉ゴブに振り向きざまの裏拳を叩き込む。

 その勢いのまま体を反転させつつ状況を把握し、ついでに豪快な蹴りで螺旋を描く――


「せェェんぷゥウキャ━━━━!〈注:旋風脚〉」


 練気によって高められたオーラが蹴り足に集中し、色彩様々な新種ゴブを数匹、纏めて薙ぎ倒す。

 新種ゴブは〈魔法剣〉のようなものを使い多彩な攻撃を仕掛けてくるが、そんなものは俺の筋肉の前に敗れ去るのみ。

 植物の蔦で身を守ろうとした〈深緑ふかみど〉ゴブは、蔦ごと上下に引きちぎられ。

 炎を纏った剣で足を斬りつけてきた〈赤〉ゴブは、剣ごと蹴り砕く。

 タイミングよく蹴りをやり過ごした〈白〉ゴブは、〈旋風脚〉が生み出した螺旋の渦に引き込まれ、やはり蹴り砕かれ、遥か遠くに吹き飛んでいった。

 ――カカカっ、筋肉無敵っ、筋肉最高っ!

 劣勢の中での満足な結果に、俺は自信を取り戻し、気分の良いままに次なる技を繰り出してゆく。

 だが――


「ムぅ!?」


 「ゴン!」と鈍い響きが足に伝わり、俺の螺旋が急停止させられた。

 当然、俺は押し切ろうとしたが、相手はビクともしなかった。

 〈槍使い〉は豪槍の柄でもって、俺の渾身の〈旋風脚〉を完全に受けきっていたのだ。

 蹴り足を戻す暇もなく〈槍使い〉の連撃に曝され、体勢の悪いまま守りに入るハメになった。


 乱れた体勢、乱れた練気。

 何度も突き立てられる槍の穂先が、より深く俺の筋肉に突き刺さる。

 戦いの潮流を掴んだ〈槍使い〉は、手を緩めず着実に俺のダメージを積み重ねていく。


 僧衣が血に染まり、増してく痛みに反撃の初動が遅れ、俺は攻勢の糸口を見失っていった――




――剣持けんもち武士たけし〈武者〉 視点――


『――轟!!』


 〈餓狼ウチ〉の〈魔法〉職がいた辺りから、薄暗くなった山中を眩く照らすデカい火球が出現した。

 距離があるにも関わらずココまで熱風がやって来たことから、尋常ではない威力があることを想像させられる。

 ――この魔力の波動は… 詔司しょうじ! あの噛み付かれた状態でカマしやがったのか。この威力の爆炎魔法を!?

 詔司しょうじの安否が気になるが、目の前の戦いに集中する。

 俺と違いドデカい火球に気を取られた〈黄〉ゴブの喉を裂き、その懐に身を隠すように潜り込むと、その背後にいた〈白〉ゴブの胸に太刀の切っ先を突き立てた。

 ――ヨシっ、面倒な色付きを処分したぜ。コレで受け太刀出来ない敵はゼロだ。

 〈黄〉ゴブは〈雷剣サンダーブレード〉を使い、〈白〉ゴブは回復魔法と〈結界〉を上手く使った盾術を駆使する厄介な連中だった。

 ソイツら処分した今、戦闘が少しだけ楽になる。

 相変わらず〈武僧〉オークには刃は通らないが、難点はそれだけだ。ヤツに組み打ちによる打突が通じるからといって、下手にダメージを与えようとするからヘマをしてしまう。

 だったら、適度にヤツの攻撃を捌きつつ、周りの新種を狩ればいいだけだ。そして、それは成功しつつある。


 俺の懐に、無拍子で侵入し掌底を放つ〈武僧〉オークを何とかいなし、地を這うように身を屈め下から掬うよに振った太刀で、近場の〈赤〉ゴブの利き手を切り飛ばす。

 ――テメェ-の〈火剣ファイアーブレード〉には世話になった。礼として俺の太刀筋でも冥土の土産に持っていけっ!

 切り飛ばされた腕を、呆然と眺める〈赤〉ゴブの首を、腕と同じ命運を辿らせてやった。

 首と胴が泣き別れした〈赤〉ゴブの首から噴水のように血が噴き出す。

 その中を再度仕掛けてきた〈武僧〉オークと激しく立ち回る。二人の間で血風が舞い、生臭い鉄の味が口の中に広がった。

 俺は気色の悪さを精神力で押さえつけ、決め手になりうる打開策けんごうを探す。

 〈武僧〉オークの攻撃を掻い潜り周囲に視線を走らせると、ちと離れた処にいた堅剛けんごうを見つけた。


「あの堅剛バカっ。死にかけじゃねェ-か!」


 血まみれで防戦一方な堅剛を見て、俺は思わず叫んだ――

  

 

  

――豪血寺ごうけつじ堅剛けんごう〈破戒武僧〉 視点――


 ――無念…

 血の流し過ぎで意識が朦朧としてきた為、〈槍使い〉の攻撃をまともに捌けなくなった。

 それどころか、まだ生き残っている新種ゴブの攻撃にさえ、対応出来ていない。

 近づく破滅に有効な手を打てない己の未熟さに、嘆きの混じった怒りを覚えた。


 ドン――

 俺の体に人間大の「ナニカ」が激突した。

 普段なら何ともない衝撃も、血の気の失せた今の俺では体を支えきれず「ナニカ」と一緒に倒れ転がった。

 「ナニカ」が何なのか?

 咄嗟には分からなかったが、なぜか俺は「ナニカ」を抱え、〈槍使い〉の追撃を必死でかわし距離をとった。

 「ナニカ」は血まみれになった百地ももちだった。


 百地ももちの利き腕は、曲がってはいけない方向にねじ曲げられていて、呼吸の仕方もどこかおかしかった。肋骨あたりがロクでもない折れ方をしている可能性もある。

 法力をかけ治癒を促したいところだったが、〈槍使い〉に〈マサカリ〉が加わり、今は逃げるだけで手一杯だ。

 ――万事休すか…

 俺は、このまま百地ももちを庇うのか、それとも百地ももちを捨て戦うのか。選択しなければならない。

 ――これ以上の躊躇は出来ん。すまんっ。

 決断を下し、百地ももちを捨てようとした、その時――


「堅剛っ!」


 剣持けんもちが俺の名を呼ぶ。

 視線を声のしたほうに走らせると、剣持けんもちは「ナニカ」を掴んで振りかぶっていた。


百地ももちを寄越せっ! コイツとトレードだァァ-ッ!」


 剣持けんもちは、コチラに向かって「ナニカ」をブン投げた。

 ライナー軌道でブッ飛んでくる「ナニカ」。

 よく見れば〈武僧〉オークだ。

 俺は慌てて、〈武僧〉オークの軌道と被らないよう、百地ももちを高い放物線を描くよう放り投げた。

 ブン投げられた〈武僧〉オークと俺との間に、流石の〈槍使い〉と〈マサカリ〉オークも入ってくる気はないらしいが、慌てて百地ももちを高く投げたことで体勢の崩れた俺に、〈武僧〉オークボールが直撃した。

 ――糞っ、巫山戯んなっ。


「堅剛っ! フラフラなお前は、ソイツの相手でもしてろ!」


 ――好き勝手を言う…

 だが、そんな時の剣持けんもちほど頼れる存在は俺は知らない。

 例え、俺が苦戦した〈槍使い〉に加え〈マサカリ〉の二対一の戦いであろうとも剣持けんもちは勝つだろう。

 勿論、根拠はない。

 だが、確信はある。

 あの男はいつもそうして俺たち〈餓狼〉を率いてきた。

 今回もそうするつもりなんだろう。

 ――ならば任せた。


 俺は、〈武僧〉オークボールの直撃を喰らいブッ倒れた先が斜面だったため、ゴロゴロと〈武僧〉オークともつれあう様に転げ落ちていった。




――剣持けんもち武士たけし〈武者〉 視点――


 転がっていった堅剛けんごうを見送り、百地ももちをキャッチ&スローで後ろのつとむ目掛けてブン投げた。

 ――まあ、死ぬことはねェ-だろ。

 俺は結果を見届けることなく、二匹の族長級オークに向き直った。


「ヨウ、お二人さん。〈餓狼ウチ〉のモンが世話になったな。礼にブチ殺してやるから感謝しろやぁっ!」


 俺は獰猛な笑みを貼り付け、二匹の族長級オークへと疾走した。

 二匹の内〈槍使い〉が前進し、槍を構え俺を迎え撃ってくるらしい。

 ――上等だっ。

 俺は〈槍使い〉の間合いのギリギリ外で更に加速し、〈槍使いヤツ〉の目測を狂わせる。

 〈槍使いヤツ〉の初動の遅れを感じ、そのまま一気に間合いを侵し、最短の軌道で太刀を振るった。


 ガキッ――


 〈槍使い〉の虚を突き、太刀の軌道に捉えたかに思えたが、〈マサカリ〉の持つ無骨な斧刃に防がれていた。

 ――チッ、いい仕事しやがる。

 俺は一旦、二匹から距離をとり構え直す。

 すると――


「――ギシャァァァアア━━━━!」


 〈マサカリ〉が吠えた。

 ――〈咆哮ハウリング〉かっ……いや、それだけじゃない。コレは集気法っ!

 そう判断を下し〈マサカリ〉に斬りかかるが、〈槍使い〉が盾となって俺を阻み〈マサカリ〉に近づけさせない。

 為らばと、距離をとり集気の態勢に入れば〈槍使い〉の猛攻を受けた。

 ――拙いっ。魔素が根こそぎ奪われるぞ!


 俺は、初めて味わう魔物の連携に焦りを覚えた。

 当然だ。

 俺たち〈戦士〉職は、体内に取り込んだ〈魔素〉を〈オーラ〉に変えて戦う生き物だ。

 相手に一方的に〈魔素〉を奪われてしまえば、体内に残った〈オーラ〉のみで戦わなければならず、圧倒的に不利な立場に立たされてしまう。


 俺が〈槍使い〉に手間取っている間に、〈マサカリ〉は集気法によって取り込んだ〈魔素〉を、〈オーラ〉に変換。さらに、練気によって凄まじい密度のオーラを纏う。

 ――好き勝手ヤリやがって…

 相手の戦略通りの展開に毒づくが、まだ〈マサカリ〉は何かを仕掛けようとしていた。

 〈マサカリ〉は「ココからが本番だ!」とでも言いたいのか、不敵に嗤うと、己の体内で急激に魔力を高めだした。

 そして――


 〈マサカリ〉が詠唱を唱え始めた。


「馬鹿なっ。二つの〈職〉を持っているだと!?」


 山中に俺の驚愕の声が響いた――




――わたりつとむ〈探索者〉 視点――


 両手の釘打ち銃ネイルガンを撃ちまくり、時たま手投げ魔弾で爆破する。

 俺は、足元の重傷者を守るため、一人奮闘していた。


 足元の重傷者は、理究りきゅう詔司しょうじの二名だ。

 理究りきゅうの方は、まだ少し安心できる。

 コイツはそうそうに戦線離脱した為、回復に回す時間が長かった。そのお蔭で、危険域は脱しているように思える。

 ――てか、〈僧侶〉系の〈被ダメージ反応起動型の回復魔法〉ってズルいよな。しかも、理究りきゅうの場合は常時展開だし…

 問題は、コイツ。詔司しょうじだ。

 流石の武芸者でも、失血と火傷は拙い。特に火傷、半身をこんがりと焼かれている。

 あの大火球は特殊な魔法だったのか、結構値の張る回復薬をブッかけても全然良くならなかった。

 コレを治せるとしたら、やはり理究りきゅう堅剛けんごうの助けがいるのだが――


 ――何か来る!


 俺は咄嗟に釘打ち銃ネイルガンで迎撃しようとしたが、何か拙い気がして前蹴りで止めた。

 「何か」は、死にかけの百地ももちだった。


 取り敢えず回復薬をブッかけておく。

 ――俺の足元は野戦病院か?

 そんな感想を持ちつつ、手投げ魔弾を放り投げた。

 

 少し間を置いて爆裂音。


 最後のザコ集団を木っ端微塵にした。


「粗方片付けたか…」


 俺はそう呟き、仲間の懐をごそごそと漁る。

 

「あ~悪い。何か剣持けんもちがさ、ヤバ気な苦戦しているんだわ。何か借りてくぞ~っと」


 意識のない重傷者に断りを入れ、小道具になりそうな物を拝借した。


「じゃあ、行くな。何とか生きてろ」


 コレも一応断りを入れ、この場を立ち去った――




「――コレ、俺が入って戦力になるのか?」


 技巧を尽くし凌ぎを削り合う剣持けんもちと〈槍使い〉オーク。

 さらに、召喚魔法で猪戦士ボアウォーリアの幽体を降ろし、オーラの総量を三倍以上に膨れ上がらせている〈マサカリ〉オーク。

 どうやら俺は、この人外大決戦の中に分けいる必要があるらしい。


 ――俺の頭上には、死兆星でも輝いているのかね…



 そんな事を考えつつ、手投げ魔弾を取り出した――

 

 

 次回へ続く。




〈集気法〉(注:〈魔法〉職の場合、〈収束法〉とも言う

 魔素を体内に取り込む技術。

 高位武芸者同士の戦いでは、この技術の習熟度が勝敗を分けることも!

〈練気法〉

 体内のオーラを活性化する技術。

 オーラを使った技は、この技術の習熟度に影響される為、オーラを扱うレベルに応じて習熟させないと一流にはなれない。



 感想・ご指摘お待ちしております。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ