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茜色

作者: 霜月ここの

全県総体が終わり学校中が次の行事“角倉祭”に向かっている今、一人の転校生がやってくる。

 全県総体も終わり、学校全体が次の文化祭に向けて動き出しているある日。

 このクラスに一人の転校生、篠原優姫(しのはらゆうひ)が来た。彼女の第一声とても不思議なものだった。

「皆さん、これからもこのままの色でいて下さいね」

 僕は彼女をクラスのみんなより早くしている。


 ……昨日

 僕はなんとなく遅くまで学校に残っていた。

 図書室が閉まると言うので教室に帰るために渡り廊下のほうへ歩いていると目の前に薄っすらと金色に輝く蝶の鱗粉のように当たり一面漂っていた。

「はじめて見る匂いだ……それに形が整っている」

 より力強く輝いている教室棟の方へ歩いていくと、どうやらこの匂いの主は僕の教室にいるらしい。だから、僕は匂いの主に気付かれないように慎重に中を覗いた。

 そこには窓側の席に座る学校では見たことの無い腰まである長い黒髪女子生徒が座っていた。それもそのはずだった。そもそも、その生徒の着ている制服が違っていた。

 視線でも気付いたのかこっちを見てきた。

「覗いてないで出てきなさい」

 こっちをむく前に戸の後ろに隠れたつもりだったけど、ダメだったようだった。仕方なく僕は両手を挙げながら教室に入った。

「覗かれていて、不快だったら……ごめん」

「……初めて見る色」

「えっ?」

 彼女は目を丸くしながら僕を見ていた。それに『色』ってもしかして……彼女も同じ?

「……色」

「えっ!」

「君も、もしかして色が見えるの?」

「君もってことは……あなたも?」

 それから彼女が帰るまでの短い時間、僕らはお互いが持つ“色が見える病気”について話し続けた。


「篠原、自己紹介」

「すみません、柳田(やなぎた)先生。え―と、私は篠原優姫と言います。これから、宜しくお願いします」

「席はあの後ろのなっ」

「あの私、目、悪いので前にしてもらってもいいですか?」

 優姫がそう言うと、僕の前の席のアホが「私が変わります」、と行きよい良く立ち上がり言った。先生はアホがうるさくなりそうだったので、仕方なくそれを了承した。

 したがって、僕の前に優姫が座ることになる。…サイアクだ。

SHRが終わり、アホが荷物をまとめ移動し終わると、僕の前の席には優姫が座っていた。彼女はぼくのほうに振り向いて「やってやった」、とばかりに微笑んできた。

 本当にサイアクだ……目の前が眩し過ぎて授業にまともに参加できない。本当、次の期末テストが心配だ。


 昼休み、僕の“病気”を中学のときから知っているポニーテールの良く似合うのクラスメイトの狐崎光莉(きつねざきあかり)を呼び出して優姫の“病気”ことを話し、まとめてもらった。

「ケンとヒメちゃんはぜんぜん違う病気だね。ケンは匂いに色が付いて見えるだけど、ヒメは感情が見える?オーラが見えるって言った方がいいのかな?」

「多分、それで、あってると思う……けど、ヒメって」

「まあまあ、良いだろ、ヒメ」

「うっさい!だまれ!犬」

 僕なんて鼻が利くだけで“犬=ケン”なんだから良いだろ、ヒメくらいなんて言うことは僕には出来なかった。

 ついでと言っちゃ何だが光莉が優姫に「私は何色?」と聞くと


 時間はあっという間に流れ文化祭前日。

 今日までに分かった優姫の”病気“は元から分かっていた”怒りの赤“”悲しみの紫“”喜びの黄色“そして、光莉が見せた”興味の緑“だけだった。未だに僕を見たときに見えた”白“は分からないままになっている。

 僕らのクラス以外にも前日になったにも関わらず今になって縁日の買出しだなの何なのをし学校中が慌しかった。

「犬、ちょっと、飲み物を買いに行かない」

「ああ、いいよ」

 行く途中の渡り廊下でアホにあった。

「よう、何か飲み物買って行こうか」

「えっ、じゃあ、バナナ」

 自分の都合のいいように過剰に解釈しているし、僕はなんで忘れていたんだ。こいつがサル以下のアホだってことを……

「バナナは買わん、じゃあな」

「よよよ~」

「……青」

 何かを優姫が言った気がしたが小さくて聞こえなかった。

 そんなこんなで購買横の自動販売機の所まで来た所で、僕は柳田先生に放送で呼ばれ生物室にお化け屋敷で使う人体模型を取りに行くことになってしまった。

「悪い先に教室に戻ってていいから…」

 そう言い残し僕は、階段を駆け上がった。


 生物室に行き人体模型を預かり戻る途中で慌てた声の放送が流れた。

『火事です。火事です。皆さん、慌てずに落ち着いて非難してください。火元は教室棟二階です』

 僕は急いでグランドまで行くとそこには教室棟に居たであろう生徒たちが大勢いた。僕は生徒たちの中から優姫を探したがそこにはいなかった。

 だから、火事の時の“おかしも”の“も”を守らないで教室棟二階に戻った。

 二階はもうすでに先生たちが消火活動に当たっていた。目を凝らすと、燃え上がる炎の中に微かに舞う金色の花びらを見つけた。

 この先に、優姫がいる……

 それを確信すると消化活動で一瞬途切れた炎の中に先生たちの注意を背中で聞きながら飛び込んだ。

 燃え上がる教室の中から一番優姫の匂いが強い所に行けば必ずそこにいる。

 お化け屋敷の準備をしていた教室の輝きが強かった。教室の中はダンボールが激しく燃えていた。その炎の中に僕は二つの影が見えた。一つは床に座っている優姫、もう一つは僕の良く知る匂いだった。

「優姫、それにアホっ子、大丈夫か!」

 肺が苦しかったが、腹から思いっきり声を出し、優姫のもとへ歩みを進めた。

「ケン、来ちゃダメ!」

 優姫のその叫びで歩みを止めた。すると、もう一つの影がこっちに歩いてきた。

「ケン、そいつはサイコパスだよ…」

「…」

 その影は左手に持っていた。銃のような物を向け何か打った。

「うぁ、ああぁぁあぁ」

 その影が僕から目線を話した隙にそいつを殴り飛ばした。

「大丈夫か、優姫」

「遅い、犬。遅い、遅い、遅い、遅いよ…」

 優姫に近寄ると両足に釘が打ち込まれ立てなくなっていた。

「柳田先生が……」

 先生は壁に腰を下ろしてぐったりしていた。僕は先生のもとに行き気絶している先生を起こした。

「先生、大丈夫ですか」

「あ、ああ……」

「「……良かった」」

 僕たちが安堵したその時だった…

「ケン、危ない!」

 先生に突き飛ばされると、僕を突き飛ばした先生の右腕に釘が刺さった。

「「先生!」」

「俺のことはいいからお前らは早く行け…」

 そう言うと先生はその影に向かっていった。その先生の姿を最後まで見ずに僕は優姫を抱えて先生たちのいる階段の方へ走った。

 階段に着くと優姫の姿を見るなり危機迫る顔で尋ねてきた。

「おい、何があった、お前ら」

「柳田先生がまだ中に……」

「分かった」

「お前らは早くグランドに行け」

 グランドに行くとそこにはもう救急車が来ていたので、僕は保険の先生に優姫を預け、僕は警察の事情聴取に行かされた。


 その事件から2週間ぐらいが経った日僕の前の席は以前と同じく眩しくなった。

 2週間も経つと事件も解決にし、文化祭も今週末に延期が決まった。火事の原因は生徒が教室でたこ焼きの練習をしたときに誤って油をこぼしたのが原因らしい。残念ながら、柳田先生は直ぐに先生たちが助けに行ったがかなり重症らしい、先生と優姫に高圧釘打機を使って釘を打った犯人、花田玉枝。通称、アホは殺人未遂で警察に連れて行かれた。

 後から、優姫に聞いた話によると、アホと事件前にすれ違ったときに“殺意の青”をしていたらしい。

 あの事件以来、僕と優姫は付き合っている。付き合ったお陰で優姫が見ていた色の意味が分かった。それはどうやら“恋の白”のようだった。そして、優姫曰く薄っすらあかね色に染まってきているようだ。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

色シリーズとして暇なときに上げていくつもりでいます。

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